最強推し活!!推しの為に転生して(生まれて)きました!!

藤雪たすく

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12話目 意外な試験

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パチパチと音を立てながら燃える焚き火に追加の薪を投げ込んだ。

一年前、必ずリオル様のお側へ辿り着いてみせると誓いを立てて後にした因縁の地、ジュクラナイガの森で野営をしている。なぜここに戻ってきたのか俺にもよく理解できないが……ここで6日間過ごす事が試験らしい。

ーーーーーー

王都へ来るのは20年ぶりくらいだな。
前に来たのはマサカズ達が魔王を討伐した凱旋にくっついて一緒に参加した時だったか。

過去の思い出よりも華やかに発展した王都を観光しがてら『銀月の迷い猫』の拠点をこっそりと覗き見したいと思い、街の人々に聞き込みをしながら拠点のある賑やかな大通りから脇道に外れて坂道を登って商業区から住宅街に入ってしばらく……口から心臓が飛び出しそうなのを押さえながら、通行人を装いながら前を通ってみたが、普通……だった。

あれだけの活躍をするギルドだ。拠点もさぞかし立派なのだろうと想像していたのだが、木製の猫の絵が描かれた小さな看板がなければ通り過ぎていたところだ。良くも悪くも周りに溶け込んでいる。

でもでも……この建物内にリオル様がいるかもしれない……ついに手を伸ばせば届くかもしれない場所に立つことができたんだ。昔の俺は白に誓い金髪だったが今の俺はミルクの溶け込んだ紅茶のようなくすんだ茶色、つり目だった目も垂れているし、綺麗だと褒めてくれていた瞳の色だって紫ではなくナッツの様な地味な色。
バレないと思っていても、もし今の俺の中にルーウェンを見た時にリオル様がどんな反応をするのか怖かった。

たまたま建物からリオル様が出てこないかななんて期待しながらも、怖くもあった。
幸か不幸か誰も出てくる気配はないまま拠点前を通り過ぎた。

坂道を登り切った高台は王都を一望できた……少し遠くに見える王城とは逆方向の郊外に見える大きめだが、貴族達の豪邸に比べると控えめな変わった形状の屋敷。マサカズの故郷の建物に似せたという前の屋敷によく似ている。おそらくそこがイシイ邸。残念ながら?マサカズとリナはリオル様が冒険者として独り立ちされてからは諸国漫遊と世界を飛び回っていて……ほぼ屋敷を空けているらしい。

まあ、あの二人の事は心配しなくてもあいつらが病気になったり怪我したりなんて考えられない。
いかにマサカズであっても俺が俺とは気づかないだろう……もう昔みたいに『親友』なんて笑い合える存在ではない元親友達。昔のように甘えられて頼られて……あんな笑顔を向けてもらえる存在ではない推し。

……いいさ、それでもいい……。
ただ見上げるだけの存在でもお日様が俺の上で輝き続けてくれるその幸運だけで十分。

眼下に見える『銀月の迷い猫』の拠点。
上から見ると奥行きは結構あって中庭もあって大きめな樹が一本植えられているようだ……樹の違いなんて詳しくないけど、元屋敷に植えられていた木に似ている。ぼっちゃんと……リオル様と一緒によく休んでいた思い出の木。
……まさかな、そんなことはないだろう。

リオル様……あなたがもっともっと輝けるように……どうか俺にもお手伝いさせてください。

祈るように両手を握った……試験まではあと10日。

ーーーーーー

試験当日、王都の冒険者協会へ向かうと職員から模擬戦場へ向かう様に指示をされた。
かなり広い模擬戦場だったが、そこを埋め尽くすような大勢の冒険者達が集まっている。年齢も性別も種族も様々、頑丈そうな鎧に身を包んだ者、大きな荷物を背負った者、街に買い物に行くような軽装の者など……ただ一様に緊張した面持ちである。その緊張が伝わってきて俺の緊張も増幅して端っこで固まっていると……中央に集中していた冒険者達が騒がしくなった。

「みなさーん!!本日は『銀月の迷い猫』の加入試験にお集まりいただきありがとうございまーす!!」

指令台に姿を現したのは『銀月の迷い猫』のメンバー兎獣人のユマとハンター職のナディルだった。

「うおぉぉぉぉっ!!ユマちゃぁぁぁぁぁん!!」
「ナディルくぅぅぅんっ!!可愛いっ!!」

ユマに向けられる野太い声と、少年だったナディルも成長してもう成人を超えているのだが「可愛い」「可愛い」と黄色い声が浴びせられている。気持ちは分かる。画面越しに応援してきたメンバーが目の前に現れたのだ、興奮するのは仕方ない……黙っているが俺も卒倒しそうなほど興奮している。

「さっそく試験内容を発表したいところだけど……先に皆さんには契約魔法をかけさせていただきますね。契約内容は『この試験に関する内容の一切の口外を禁ずる』対策されて来られちゃうと困るし、関係ない人たちに押しかけられても困るんだよね!!んでんで……この契約を結んでもらうと試験内容を口にしようとすると声出せなくなっちゃう強い魔法だからね?嫌な人はここで退出してもらいたいなぁ」

なるほど……情報が全く出て来ないのはそこまで徹底してきたからか。
ずっと魔法で縛られ続けるというのを嫌がる人もいるかと思ったが、退出する者は誰もいない、どころかむしろ……。

「ん~……辞退者はいないみたいですね。それではシシル先生よろしくお願いしまぁす!!」

ユマの声で指令台に登ってきた魔法使いのシシルが短めの杖を振り上げるとまた冒険者達から大きな声が上がる。

「シシル様の魔法をかけて!!」
「シシル様に縛られたい!!」

彼女達はシシルを推しと崇めるファン達なのだろう。推しに魔法をかけてもらえるなんてファン冥利に尽きるよな。それがずっと継続の魔法だなんて……俺も推しの魔法にかけられたい。

俺は一番端にいたので、冒険者達の歓声に消されて小さく詠唱するシシルの声は聞こえなかったが、シシルが小さく杖で円を描いた瞬間に試験場全体に魔力が広がった。

この人数全員に一度で魔法をかけるとは、さすがリオル様のギルドメンバーだ。
抗わずに契約魔法を受け入れる……俺は魔法耐性があるので効きづらいが自ら受け入れればうまく作動するはず。効いていないとバレると厄介な事になりそうだ。

「さてさて、顔を見慣れた人たちもたくさんいるみたいだけど……試験内容の発表に行くよ!!君たちがやることはただ一つ!!『ジュクラナイガの森で10日間生き延びる事』!!」

……へ?
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