最強推し活!!推しの為に転生して(生まれて)きました!!

藤雪たすく

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13話目 そこは庭です

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どんな過酷な試練を言い渡されるのかと緊張していたが為に、想像もしていなかった場所の名前に思わず間抜けな声が出てしまった。
ジュクラナイガの森ってジュクラナイガの森だよな?そこで10日間過ごすだけ?何かの魔物を討伐しろとかではなく?
拍子抜けしている俺とは対照的に周りの冒険者の反応は違った。

「あの森で10日も?」
「これが難関と言われる理由か」
「シシル様素敵……もう死んでもいい」

試験内容に反応してない組はおそらくユマの言葉から試験常連組なのだろう。

「はいはーい!!静かに!!試験中に怪我をしても命を落としてもそれは全て自己責任です!!それでも試験に参加する意志のあるって人だけ残ってね~お帰りはあちらで~す!!」

「一人で魔の巣窟と呼ばれる森に行くなんて死にに行くようなもんだろ……」

呟きながら俺の横を通り過ぎていく冒険者達……魔の巣窟?ジュクラナイガの森が?
テラデバウラーが現れた影響で生態系が狂ったのか?でも一年前に行った時は特に変わったところはなかったよな?

「ユマちゃんまた来年ね!!」
「生ナディルくんかわいかったぁ」

この辺りは……試験を何か勘違いしてないか?推しに会いにきた、そんなお祭り感覚。
名残惜しそうにしながら冒険者協会の職員に引きずられていく者など……本気で加入を目指す者にとっては恐ろしい試験だが、ファンは試験前のこの説明を軽いイベントとして受け取っているのだろうか。
恐ろしいな……ファンの行動力。

「今ここに残っている皆さんは参加って事でいいのかな?」

残っている人……あれだけいた人々はほとんどが出て行ってしまい、残っているのは俺も含めてわずか4人。
ユマが最後の確認と言わんばかりに模擬戦場を見回した。

「俺は……配信冒険者として有名にならなきゃいけないんだ。配信で稼げるように……」

「今年こそ生き残ってやる……」

「リオフィラを生で見る為ならば……怖くない、魔の巣窟なんて怖くない」

皆それぞれ胸に秘めた熱い想いがあるのか自分の世界に入り込んでブツブツ呟いている。

「常連さん1人にご新規さん3人ね……ふむふむ?覚悟はもうできてるよね?じゃあついてきてね……」

指令台から飛び降りたユマの後に続く3人の後ろについて歩き出すとその俺の後ろにナディルがついてきた。近い……確かにこうして推しと近距離で出会える機会があるのなら、僅かな時間だろうと参加したくなる気持ちもわからなくもないな。

「えっと、ルディさんでしたっけ?名前が似てるし歳も近いですし、なんか親近感ありますね」

予想外にナディルから話しかけられてブワッと冷や汗が吹き出した。決して人見知りということはないが、この会話も採用試験の一部で、受け答えの印象がリオル様の耳に届いたりするのではないかと考えると……声が出なくて、なんとか笑顔だけを顔に貼り付けた。

「ルディさんはなぜこの試験に参加されたんですか?」

にこやかな笑顔だが、これはやはり採用試験の面接だ!!前を見ると他の3人にも他のメンバーがついて会話を交わしている。俺もしっかりと熱意をアピールしておかなければ。

「ギルドマスターのリオル様を崇拝しているからです。そしてリオル様の大切な銀月の迷い猫のメンバーの皆様の事も応援していて……私もお役に立ちたいと強く願っているからです」

「ありがとうございます。ルディさんはリオルさんのファンなんですね。でも役に立つって?ルディさんの登録情報はジョブの欄が抜けていたと思うんですけど……」

「なんでもします。戦えと言われたら戦いますし、魔法を使えと言われたら使います。でもそれよりも、皆様が安心して戦えるように装備や魔導具の点検や修理、体力をつけてもらう為に食事の用意や、気持ちよく過ごしてもらうための掃除など……なんでもやりたいと思っています」

魔導具を作るのは得意だし、料理は修行してきた。掃除も洗濯も光魔法の洗浄を使えば簡単だ。リナの域には到達しなかったが回復魔法も上達した。

「え?雑用志望?」

「はい!!雑用係として皆様を支えていきたいと思っています!!」

伝われ俺の熱意!!と、思ったのだがナディルは吹き出し笑い始めた。

「あの……そんなにおかしな事ですか?」

推しの支えとなりたいという想いは誰しもが持っていること、おかしくはないはずだ。

「いや、ごめんごめん。欲がないなぁと思ってさ……君さ、強いよね?隠してるつもりなのかもしれないけどさ……それなのに雑用ってさ……君、一体何を狙ってるの?」

探るような目で見下ろされている。やはりこの何気ない会話は面接だ。

「何を狙っているか……ですか?」

「雑用として身の周りの世話をしたいならわざわざこんな過酷な試験を受ける必要はない……使用人としての募集だってある……時もあるかもしれない」

雑用係は間に合っているということか?
給料なんていらないしむしろ金を払うから加入させて欲しいと思っているのだが、答えを間違えたら、試験を乗り越えたとしても落とされてしまうかもしれない。いや隠す必要などない。自分の心の中にある願いをちゃんと伝えておきたい。試験に落とされようとお側に居られずとも願いは一つ……。

「リオル様の笑顔……」

「笑顔?リオルさんの?」

「私が狙うのはリオル様が笑顔でいられる世界です」

真剣な眼差しだった瞳からフッと力が抜けた。

「笑顔ね……ふーん……それは確かにこの試験よりも難題かもしれないな」

クククッと低く笑う笑顔は先ほどまでの疑いの感情や演技がかったものではない。
配信では見たことないが、素の笑い方はこっちなのかな?

地下へ続く階段を降りた先にあった木製の重そうな扉の前で前を歩いていたベテラン風の冒険者の後ろに並ぶ。1人づつ扉の向こうに案内されるが……もしかしてリオル様との面談とか!?な、わけないよなぁ。気配は全く感じないし、むしろ扉の向こうで入室した志望者の気配が消える。それにこの魔法の感じは……転移陣か。

さすが銀月の迷い猫だな。冒険者協会が転移陣の使用を許可するなんてよっぽどだ。緊急時以外は外部に使わせないと思ったけど……銀月の迷い猫というよりもさすがリオル様か。あの転移陣を作ったのはリナだもんな。しばしば王都へ招集命令をかけてくる王様にキレながらリナが作った物。

そうか試験者を移動させるのが楽だからジュクラナイガの森を試験会場にしてるのか。でも試験がジュクラナイガの森でのサバイバルなんて簡単すぎないか?そのフルイは大丈夫か?

元屋敷に近い事もあって、ジュクラナイガの森は俺とぼっちゃんの庭みたいな場所だった。

順番がやってきてナディルと共に部屋に入ると、やはり転移陣だった。俺は使った事ないけど一瞬でジュクラナイガの森の側にあった元屋敷へ飛べるはずだ。元屋敷は売りに出されて今は別の人が住んでいると聞いていたんだが……。

「転移陣を見ても無反応か……君は何者なんだろうねぇ。詳しくは現地のやつに聞いてね。ジュクラナイガの森の試験を聞いてなお揺るがないその願い……叶えられる日楽しみにしてるよ」

背中を押されて……俺の体は転移陣の真ん中へ押し込まれた。
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