パソニフィ・コンフュージョン

沼蛙 ぽッチ & デブニ

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第25話 注目の的

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「私を……観察……?」
「何か、ピッタリって思ったの!パズルのピースみたいにこの場所に一番はまってるって!そんな人ここにはお姉さんしかいないから、レアお姉さんって思ったの。」
(ああ、この子……やっかいだな……)
アキヨシは、この2人を見失わない様に気を配ることにした。

先程、アキヨシと私が館内前での受付で、保護者たちへの対応をしていた時のこと─

「ねぇハル、何してんの?」
「蟻の行列崩し……」
「………。」
「ねぇ、邪魔しないでいてあげよ?」

「それに、ハルってちょっと変わってるし……」
「あの、虫解体事件な。女子が悲鳴あげてたやつ。」

クラスメートにひそひそと言われているその子を見ながら、アキヨシは思った。
(何だかこの子のこと苦手なのは、自分の子ども時代を思い出すからか……)

「君は、博物館に残ってなさい。今日は人が多いから。」
「アキヨシ大丈夫だって!コイツのこと私が見といちゃるから心配すんな!」
「ミトさん居たら安心……。」
やっと人に慣れてきて、友だちとの別行動に悲しそうな顔をするこの子に、それ以上は何も言えなかった。


アキヨシは、そのハルって子と昔の自分を重ね合わせた─

僕のせいで学校に呼び出された祖父と手を繋いで帰っていた夕焼けの日。
「ねぇ、おじぃ……ゲジゲジの足ピンセットで全部抜いてたらクラスがパニックになっちゃったの。何本あるか数えたかっただけなのに。………僕間違った?」
「アキヨシは、ゲジゲジ好きなんだね。」
「うん!この博物館に居る生き物たくさん好き!いつか、リスとかも中身がどうなってるか知りたいんだ!」
「じぃじも覚えがあるよ。僕はラジオだったかな。中身がどうなってるのか知りたくてバラバラにしたらね、お父さんとお母さんに怒られちゃった。」
「おじぃも怒られたことある?」
「興味を持つのは悪い事じゃないよ。だけどねアキヨシ、僕その後戻せなかったんだ…そのお気に入りだったラジオ─」
「戻せなかった…………」

アキヨシは、まさか自分じゃあるまいしと、嫌な予感を打ち消した。

「ハル、何一人で喋ってるんだい?」
「お父さん…目の前に居るお姉さんとだよ?」
「………?それよりあっちに鳥の巣箱があるから見に行こう。野鳥好きだろ?」

「ついてきて…」
と手を繋がれて、私は言われるがままついていった。
「巣箱と一緒に写真撮ってあげよう。」
「お姉さんも隣に居て…」
ハルくんは相変わらず小声で話かけてくる。
「わたし…写真変にしちゃう…」
「そうなの?変になるんだ…楽しみ。」

「何だこれ…カメラ壊れたか?」
カメラに写った画像を確認すると、息子と風景が黒いモヤに邪魔されていた。
「ううん、お父さんありがとう。この写真面白いから残しておいて。あの木のところに行って来てもいい?」
「ああ、あんまり離れない様にな!」

「お姉さんは、この木の窪みに座って、この大きな葉っぱ傘にして持って…ちょっと動かないでね。」
ハルくんは、リュックの中からスケッチブックを取り出して絵を描き始めた。
「お姉さん…妖精さんみたい……」
(………林さんと同じこと言ってる………)


「ウィリーついて来ないで!」
「そんなに逃げないでよー!」
「そんなに走ると危ないですよ!」
オコメさんは数名の子を止めたが、まだ先に行ってしまった子がいた。

ハルくんに引っ張られて次の場所へと向かう途中。
ワーっと連なり走って来る子どもたちにぶつかって、私は尻もちをついてしまった。

「やっぱり!僕だけ見える、お姉さんだったんだね!」
と、ハルくんにぎゅっと抱きしめられた。
「どういう…意味?」
「お姉さんは僕の特別ってこと……」


ある木の下で子どもたちの声が騒がしくなった。
ボルダリングが趣味のユキちゃんは、木に登って下を見るとクッションがない事に気づいて、硬直してしまった。
「皆が下に居るから、降りれないだけだもん……。」

「そうだな……皆ちょっと、離れとけ。」
ミトさんが木に足をかけた。
「泥棒にゃんこは関係ないじゃない!ほっといてよ…」
「そーもいかないんだよなあ……」
と、一瞬のうちに登り終えた。そして、ユキちゃんが嫌がる間もなくだき抱えて、ストンッと一気に着地した。
舞い上がる木の葉は、ミトさんのカッコ良さを演出していた。

「ネコお姉様………」
ワー!スゲー!と子どもたちが盛り上がった。結局、皆宿題そっちのけになっていた。

「木登りは子猫にはまだ早いから、私の真似はしちゃいけないニャン!」
(私の事子猫ちゃんって言った!?……ネコ騎士様…好きぃ…)
ユキちゃんは、すっかり乙女モードに入った。

その頃、私はハルくんに無茶振りされていた。
「お姉さんの口の中には、どれだけ詰められるのかなぁ……あーん。ってして?」
「あーん……??」
ひとつひとつと、ハルくんが移動する度に集めていた野草を、口の中に飾られていった。
モガッ。すっかり生け花の器にされていた。
「お姉さん…神秘的…」
うっとりとハルくんは危険な遊びに興じていた。
「題して『寄生植物に侵食されし妖精さん』。フフッ」

「おい、ボウズ!コイツに何してんだよ?………お前も何されるがままになってんの!?」

「えっ……ネコさんにもお姉さんが見えてるの?」
「何言ってんだ?」
「ハル、さっきから何をしているんだ?」
お父さんも息子の行動に訝しんでいた。

「この子は、私の娘でして!」
アキヨシがはぁはぁと急いで走ってきた。

「館長さんの………?す、すみません!こらハル!お姉さんになんて事を!」
「お父さんも見える様になったの!?」

アキヨシはハルくんに耳打ちした。
「あのねハルくん。このお姉さんは始めから見えてたんだよ?」
「………そんな。」
(皆この子にピントを合わせてないだけでね……)
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