パソニフィ・コンフュージョン

沼蛙 ぽッチ & デブニ

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第40話 異国の擬人化占い師

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修学旅行二日目。
今日は姉妹高校との交流イベント。昨日は私服だったが、皆制服を着て正装をした。

その学校には、現地の言葉を話す子、スカーフで髪を覆っている子、中華系の言語を話す子たちが在籍していた。
我々が列になって校内へ入ってくると、好奇な目で見られつつも、“アロハ”とハンドサインを送って挨拶をくれた。

これから親睦を深める為、共通言語である英語で代表者がスピーチを行う。
よく踏み固められた土の校庭に作られた壇上、ゆっくりと階段を上りマイクが置かれたところで立ち止まった。
《今日は、我々を歓迎して下さりありがとうございます……我が国には、“一期一会”という言葉があります。こちらの国でいうところの……皆さんとの交流を楽しみしておりました……そう、一期一会。一刻一刻と、こうしてる間にも私は、大切な人との一期一会が脅かされています。私は今すぐ帰国したいです。大切なその人を助ける為に……そして、その─で─な奴を─して─する!やつの─をもぐ!いや─をちぎってやる!ほんと─!ファッ─!Thank You for listening.》

林さんのめちゃくちゃなスピーチは、汚い英語を使って幕を閉じた。
留学経験のある担任の先生によって、壇上から引きずり下ろされた。

会場はざわついていた。
《あの子すごく綺麗!》だと。
林さんが話しながら眼鏡を拭くたびに見えた素顔は、この国でも美しかったらしい……
その後、何事もなかったかの様に次のスピーチへとバトンが移されたのだった。

その頃ミトさんは、姉妹校の子達に取り囲まれていた。半分に罵倒を浴びせられ、もう半分には神だと崇められていた。
「どっちもウゼー……」
どうやら、擬人化した者はこの国では差別の対象であったり、神聖なものとして扱われたりしているらしかった。

ちょうど林さんを引っ張ってきたところで、その光景を目撃した担任の先生はミトさんを救出して言った。
「あなたたち、ホテルで大人しくしてなさい!」
先生は、2人をホテルまで引率して行った。

「さて、上手くいきました。」
「さてじゃねーわ。マジで今から帰るのかよ?」
だって。と、林さんが泣きそうな顔をして渡してきたイヤフォンから、「ハズキ……もっとして……」「あ……ハズキそんなことしちゃ……あ……」と、意味深なノブ子の声が聞こえてきた。

「そだな。今すぐ帰ろう。」
ミトさんは、すぐ決意を固めた。

ホテルから担任の先生を撒いて、外に抜け出し走りだした。
「林、こっちであってんのかよ?私は道、分からんからな!置いていくとかマジやめろよ?」
「大丈夫です、私は方向音痴ではありません。置いてなんていきませんよ。あなたは防犯用なので。」
「お前のボディーガード係かよ!」

その道中、敷物の上に座っていた、タンクトップにデニムのパンツという、何処にでも馴染みそうな風貌の女性に声を掛けられた。
《あなたたちの受難の運命が見受けられました……》

「だから、あいつ占いしていけって言ってたわ。」
「無視です無視。急いでますし。大抵、あんなのはインチキです。そういう、心理学のテクニックだってあります。」
「そうだな、急ごう。だけど、あいつイルカの擬人化だって。珍しいよな─」

「あの……相性占いとか出来ます?」
林さんは、外国の擬人化の方に興味を持った。
いつの間にか、吸い込まれてしまったかの様にその占い師の前に座っていた。
「何でお前に振り回されないかんのよ……」
「私この国の言葉は分からないので、通訳が必用です。」
「今度はお前の通訳係かよ!」
ミトさんの目が空を仰いだ。

占い師は、イルカの絵が書かれたカードをシャッフルし始めた。そして、決まった順番へと並べていった。ひとつひとつと、最後のカードまで表に返しきった後、話し始めた。
《先入観を捨てなさい……安心なさい。近い未来、貴女の心配事は解消されるでしょう。しかし、結末は思っていた事と違う事になるでしょう。》
「どういう意味です?もっと具体的に!」
《紆余曲折を経て、思い人と貴女は結ばれることになるでしょう。相性は悪くはない。》

「は?こいつと結ばれる訳ないじゃん!私は?」
と、ミトさんがその占い師に言った。
《思い人と貴女は、強い絆で結ばれているので、例え貴女が離れたいと思っても離れられないでしょう。》
「どういう意味だよ!具体的に!」
《近い未来、幾つもの困難が待ち受けいます。しかし、それを乗り越える事でより強い絆になるでしょう。たとえ一度離れても、必ず最後は貴方と共に居るでしょう。》

言い終わると、髪から除く雫型の赤いピヤスが印象的に光った─

「へーあんた、イルカショーに居たのかあ。」
「もっと、貴方の事が聞きたいです!」
すっかり、2人は意気投合していた。
《残念ですが、お時間です。さあ、お行きなさい。あれタクシーですよ?》
と、道路の方を指さした。

「何て親切なイルカの占い師さん!」
と、2人分の料金プラスαを払った林さんだった。

《さて、偶然に出たカードの意味と適当に話した事が、何処まで必然になるのかしら……うふふ。》
イルカの占い師は、タクシーに乗り込む2人を見ながら呟いた─

そして2人は空港へと到着した。
降車するとき、ミトさんは運転手と少し揉めていた様子だったけれど。
「運転手さんと何、話していたんです?」
「いや、値段がおかしかったから、─して─するぞって値段交渉してただけ。」
「成る程、ぼったくられそうだったんですね。」
ミトさんが汚い言葉を発して脅していた事に関して、突っ込む良い子はこの場には居なかった。

そして無事、帰国する空の便で飛び立ったのだった。
「それにしても、貴女が修学旅行先の言葉を知ってるなんて思いもしませんでした。」
「ああ、動物だった頃のお見合い相手が話してた言葉と一緒だったからな。」
「そーいえば、そんなこと前に言ってましたね……」
そして林さんは、前の座席を見つめたまま、ミトさんの服を少し摘まんだ。
「……助かりました。」
「お前と居ると、退屈だけはせんわ……」
ここまで来れた達成感のおかげで、2人の距離は縮まったのだった。
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