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第39話 一緒にお風呂に入りたい!
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修学旅行で目的地へと向かう飛行機が乱高下した。
寝静まっていたクラスメートは、次々と起き出し、ざわつき始めた。
すぐ機体は安定したので、集団パニックは免れたのだった。
そして、機長のアナウンスが流れてきた。
「特殊な通信による一時的な障害が起こりました。モバイルの使用をお控えください─」
「このくらい耐えて下さいよ!」
「おい!お前が犯人かよ!?お願いだから、変な電波で飛行機落とさんでくれ……」
林さんはぷりぷりと怒りながら、スマホの電源を落とし証拠隠滅をした。
ミトさんはそれを見て、いつかコイツ本気で逮捕されろ!と思った。
「ごめんねえ。ただの体質によるドクターストップだから、ミトちゃん安心してね。楽しみにしてたのに行けなくなったからさあ、この子不貞腐れちゃって、今も慰めてる途中……」
後ろの方で、う~ん……。と、ご機嫌斜めなノブ子の小さな唸り声が聞こえてきた。
ノブ子の保護者のアキヨシに連絡したのは、今日泊まるホテルに荷物を置いてからだった。
林は、ミトと二人で話せる場所へと移動した。
「さっきの電話の事なんですが……」
「何だよ?別に普通だったじゃん。」
「アキヨシさん、焦ってるのバレバレです!音源が雑過ぎます!」
「……どういうことだよ?」
「妖精さんの声は、録音したものです。」
その頃ノブ子の携帯電話は、ハズキによって水が張られたコップの中に入れられていた。
シンクの中に置かれたそのコップに、ポチャンッと蛇口から一滴落ちた音が不気味に響いた─
「防水機能で意味ないかもだけど、気休め……林さんなら電源切っても音とかカメラとかハッキングしてきそうだしね……」
まさに林さんがノブ子の携帯に不正アクセスして、飛行機が乱高下したのだった……
◇
「ハズキがそんな事を!?あなたどうしましょう……」
「……通報するしかないだろ。娘さんを誘拐したのといっしょだ!」
「いやいや、何かの間違いだと思います。はい。……ハズキくんの受験に影響でますし。はい。どこのマンションなのか教えて頂ければ。そーですね。はい、ハズキくんを訪ねてみます。」
それに……と、アキヨシが気まずそうに言った。
「折角の夫婦水入らずのご旅行、楽しんで来て下さい……」
「えっ、どうして分かっ─」
電話の向こう側で、ハズキくんのご両親はどうやら一緒にお風呂に入っている感じだった。
壁に声の響く感じや水滴の音。立ち上がった時にザバーという水の音がして……何もしなくてもバレバレなのだった。
(一緒にお風呂に入る人居るの羨ましい!!)
アキヨシは心の中で叫んだ─
「ちょっと、頭冷やしてくるわ……」
と、勉強机に向かっていたハズキは、ノブ子の居る真上のロフトの部屋に向かって言った。
(今のこの状態が3日も続くはずないけど……)
バスルームに入り、ボタンを押してシャワーを出した。勉強して熱を帯た額や沸き上がってくる色々な感情で混乱した頭を冷やしたくて、冷水を頭からかぶった。
「ハズキ……変だよ。」
と、背中にノブ子が引っ付いてきた。
(びっくりした!気配が全然しなかった……)
「とっくに変だから、君を閉じ込めてるんでしょ。」
「そうじゃなくて、ハズキ背が高くなったまんまだし。喉の形も何だか大人の人みたい……」
言われて始めて、何だか自分の身体が変化している事に気がついた。
「確かに……最近妙に身体が軋んで痛いと思ってたけど……」
「後冷たい!ぬるま湯希望!」
「もう!そんなの俺の勝手だろ!」
と、振り返って改めて見たノブ子の姿にびっくりして、シャワーヘッドに頭をぶつけた。
「は、裸!?」
「当たり前でしょ?お風呂なんだから。事実婚も夫婦と一緒なんでしょ?夫婦は一緒にお風呂入るはず。」
「事実婚って……覚えたての言葉、使わないでよ。」
「ハズキ洗いッこ!」
と、当たり前かの様に手を広げる彼女に少し恐怖を感じなくもなかったが……
「仕方ないなあ、君は俺が居ないと何にも出来ないんだから!」
混乱した頭と、いつものフクロウ達のお世話している感覚で、ノブ子についお世話を焼いてしまうのだった。
「それにしても……人間の女の子の身体ってそんな感じなんだ。」
「ううん、ミトさんと林さんはもっとボンキュボンしてる。」
「それなら、ノブ子ちゃんの身体が一番好き。」
「やっぱり私の事、好きなんじゃん!」
「違うし!……体目的って意味だし……」
人間の異性の身体を見るのが珍しい二人は、お互いの身体を確かめ合うかの様に洗いッこした。
時折笑い合う声がバスルームに響いた─
「「ミミズク、コロス!!」」
林とミトの声が重なりあった。
イヤフォンを片耳づつシェアをして、自動転送機能で保存された盗聴機の音声を聞いていた。
ノブ子の持ち物の中には、林が渡した盗聴機が見つからずにそのままになっていた。
それは、ノブ子がミトとオコメさんとで遊んだ時に元から着ていた服を、洋服屋の店長さんがショッピングバックに入れてくれた所に入っていたのだった。
それは、林が改良したミドリムシ3号という名の防犯ブザーの形をしたGPS兼盗聴機だ。
林がノブ子に「お守りなので肌身離さず持っていて下さい!」という言葉を真に受けていることに期待しての犯行……
ズボラで警戒心の薄いノブ子は、林から貰った大切なものとして、幸か不幸か持ち歩いていた。
「当たりですね……」
そう言って、フッと不敵に笑う林にミトは、やっぱり全身の毛が逆立つ様な感覚になったのだった─
寝静まっていたクラスメートは、次々と起き出し、ざわつき始めた。
すぐ機体は安定したので、集団パニックは免れたのだった。
そして、機長のアナウンスが流れてきた。
「特殊な通信による一時的な障害が起こりました。モバイルの使用をお控えください─」
「このくらい耐えて下さいよ!」
「おい!お前が犯人かよ!?お願いだから、変な電波で飛行機落とさんでくれ……」
林さんはぷりぷりと怒りながら、スマホの電源を落とし証拠隠滅をした。
ミトさんはそれを見て、いつかコイツ本気で逮捕されろ!と思った。
「ごめんねえ。ただの体質によるドクターストップだから、ミトちゃん安心してね。楽しみにしてたのに行けなくなったからさあ、この子不貞腐れちゃって、今も慰めてる途中……」
後ろの方で、う~ん……。と、ご機嫌斜めなノブ子の小さな唸り声が聞こえてきた。
ノブ子の保護者のアキヨシに連絡したのは、今日泊まるホテルに荷物を置いてからだった。
林は、ミトと二人で話せる場所へと移動した。
「さっきの電話の事なんですが……」
「何だよ?別に普通だったじゃん。」
「アキヨシさん、焦ってるのバレバレです!音源が雑過ぎます!」
「……どういうことだよ?」
「妖精さんの声は、録音したものです。」
その頃ノブ子の携帯電話は、ハズキによって水が張られたコップの中に入れられていた。
シンクの中に置かれたそのコップに、ポチャンッと蛇口から一滴落ちた音が不気味に響いた─
「防水機能で意味ないかもだけど、気休め……林さんなら電源切っても音とかカメラとかハッキングしてきそうだしね……」
まさに林さんがノブ子の携帯に不正アクセスして、飛行機が乱高下したのだった……
◇
「ハズキがそんな事を!?あなたどうしましょう……」
「……通報するしかないだろ。娘さんを誘拐したのといっしょだ!」
「いやいや、何かの間違いだと思います。はい。……ハズキくんの受験に影響でますし。はい。どこのマンションなのか教えて頂ければ。そーですね。はい、ハズキくんを訪ねてみます。」
それに……と、アキヨシが気まずそうに言った。
「折角の夫婦水入らずのご旅行、楽しんで来て下さい……」
「えっ、どうして分かっ─」
電話の向こう側で、ハズキくんのご両親はどうやら一緒にお風呂に入っている感じだった。
壁に声の響く感じや水滴の音。立ち上がった時にザバーという水の音がして……何もしなくてもバレバレなのだった。
(一緒にお風呂に入る人居るの羨ましい!!)
アキヨシは心の中で叫んだ─
「ちょっと、頭冷やしてくるわ……」
と、勉強机に向かっていたハズキは、ノブ子の居る真上のロフトの部屋に向かって言った。
(今のこの状態が3日も続くはずないけど……)
バスルームに入り、ボタンを押してシャワーを出した。勉強して熱を帯た額や沸き上がってくる色々な感情で混乱した頭を冷やしたくて、冷水を頭からかぶった。
「ハズキ……変だよ。」
と、背中にノブ子が引っ付いてきた。
(びっくりした!気配が全然しなかった……)
「とっくに変だから、君を閉じ込めてるんでしょ。」
「そうじゃなくて、ハズキ背が高くなったまんまだし。喉の形も何だか大人の人みたい……」
言われて始めて、何だか自分の身体が変化している事に気がついた。
「確かに……最近妙に身体が軋んで痛いと思ってたけど……」
「後冷たい!ぬるま湯希望!」
「もう!そんなの俺の勝手だろ!」
と、振り返って改めて見たノブ子の姿にびっくりして、シャワーヘッドに頭をぶつけた。
「は、裸!?」
「当たり前でしょ?お風呂なんだから。事実婚も夫婦と一緒なんでしょ?夫婦は一緒にお風呂入るはず。」
「事実婚って……覚えたての言葉、使わないでよ。」
「ハズキ洗いッこ!」
と、当たり前かの様に手を広げる彼女に少し恐怖を感じなくもなかったが……
「仕方ないなあ、君は俺が居ないと何にも出来ないんだから!」
混乱した頭と、いつものフクロウ達のお世話している感覚で、ノブ子についお世話を焼いてしまうのだった。
「それにしても……人間の女の子の身体ってそんな感じなんだ。」
「ううん、ミトさんと林さんはもっとボンキュボンしてる。」
「それなら、ノブ子ちゃんの身体が一番好き。」
「やっぱり私の事、好きなんじゃん!」
「違うし!……体目的って意味だし……」
人間の異性の身体を見るのが珍しい二人は、お互いの身体を確かめ合うかの様に洗いッこした。
時折笑い合う声がバスルームに響いた─
「「ミミズク、コロス!!」」
林とミトの声が重なりあった。
イヤフォンを片耳づつシェアをして、自動転送機能で保存された盗聴機の音声を聞いていた。
ノブ子の持ち物の中には、林が渡した盗聴機が見つからずにそのままになっていた。
それは、ノブ子がミトとオコメさんとで遊んだ時に元から着ていた服を、洋服屋の店長さんがショッピングバックに入れてくれた所に入っていたのだった。
それは、林が改良したミドリムシ3号という名の防犯ブザーの形をしたGPS兼盗聴機だ。
林がノブ子に「お守りなので肌身離さず持っていて下さい!」という言葉を真に受けていることに期待しての犯行……
ズボラで警戒心の薄いノブ子は、林から貰った大切なものとして、幸か不幸か持ち歩いていた。
「当たりですね……」
そう言って、フッと不敵に笑う林にミトは、やっぱり全身の毛が逆立つ様な感覚になったのだった─
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