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第38話 嫌われたくて求愛する
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「君が俺にすぐ使える様に、枕元に置いといてあげるね。」
と、ハズキはスタンガンが機能するかを確かめた後、私に用意された居場所にそれを置いた。
物々しい電気の光を見たお陰で目が覚めた。そして、昨日の事を段々と思い出してきた。
(これ、二日酔いってやつ?頭が少しズキズキする……)
ミトさん達と遊んだその後、ハズキの居るフクロウカフェへと向かった。
「……いらっしゃい。ノブ子ちゃん。」
(今日は来ない方が良かったのに……)
ハズキは、本当の気持ちを悟られない様にいつもの様に振る舞った。
「ハズキ……身長かなり高くなってる!何か良いことでもあった?」
「……ノブ子ちゃんも少し伸びてるよ。今日良いことあったんだね。」
擬人化した身体は感情によって伸び縮みをする。
「うん、ミトさんとオコメさんとで遊んだの。写真も撮ったのハズキに見て欲しい。」
そっか。と、いつもの様に飲み物を持って来てくれた。
そして、ハズキも椅子に座ってノブ子の話に耳を傾ける。
「新しい服似合ってるよ。ミトと似た服着てるの?じゃあ、やっぱり似合ってない。」とか、
写真を見て、「これが家政婦のオコメさん?アキヨシさん好きそー。相変わらずノブ子はモテるなあ。」とか、ハズキは楽しそうにコメントをくれた。
「最近、お腹の痛みはどう?」
「何故か、家に帰って落ち着いた時に少し痛むの。こうして、ハズキや皆と話してる時は痛くならない。」
「じゃあ、俺が居なくても皆が居たら大丈夫そうだね……」
「……どういう意味?ハズキも必要だよ?」
「今日で、ノブ子ちゃんとの恋愛ごっこは終わりにしようと思う。」
何の前触れもなく静かに切り出された別れ話に、私の思考は停止して暫く沈黙してしまった。
「……私の事、嫌になった?」
「うん、嫌い。いつもお店に押し掛けてくるしスゲーめーわく。」
私はハズキの顔をじっと観察して言った。
「私は……好き。」
「……じゃあ、君に俺の事、嫌いになって貰うしかないね。」
そして、ハズキは私に提案した。私があげた"私をレンタル出来る券"を机の上にバンッと音を立てて置いた。
「これ、三回いっぺんに使える?」
「うん、いいよ。」
「それじゃあ、ノブ子ちゃんが明日楽しみにしてる修学旅行に行かせない。」
「困る……ミトさんと林さんと約束してるから……」
「うん、嫌がらせだからね。だけど断ってもいいよ。俺と会える日はもうないけどね。」
(こんな試す様な言い方。ズルいよな……)
ハズキは2週間後には大学受験があり、お店の手伝いをするのは今日までだった事。気がはやいけれど大学近くに一人暮らしするために借りた部屋があり、そこで受験勉強をしている事を知った。
「だけど、卒業までは学校来るよね?」
ハズキは少し黙った後、あんまり行けそうにないと言った。
「こういう時に限って、錯乱期が来たんだ。この通り頭の中ごちゃごちゃしてる。問題を起こしそうだから、落ち着くまでは行けない。」
「錯乱期……ハズキどうなっちゃうの?」
「酷い事するよ?多分、君にもね。」
「……ハズキはしないと思う。私ハズキにレンタルされて、何すれば役にたつ?」
ハズキは痛い程に私を抱きしめた。そして、耳元でトーンを下げた声で、脅す様な話し方をした。
「フクロウの求愛の時期にはちょっと早いけど、君に居心地の良い巣を用意する。其所で3日間俺と一緒に過ごす。その間は君を外にも出させない。」
「私の事……嫌いなのに?」
「君はずっと俺に癒しを求めに来てたでしょ?一方的に搾取されるのは酷いと思わない?受験までの俺のストレスを少なくするのが、君にして欲しい事だよ。」
そして、私を解放した。
「わかった……いいよ。」
「2人きりだよ。危険だって分かってる?」
と、嘲る様にハズキは言った。
私は、入れてくれたハーブティーを一気に飲み干した。
ハズキはびっくりして目を見開いていた。
そして私は、気合いを入れてか細い声を精一杯彼に届かせた。
「このお手伝い券は、私の大事な人にしかあげてない!ハズキは私の癒し!お腹も痛くなくなるくらい!だから……だから私も修学旅行を諦めてハズキを助け……」
言い終える前に意識が遠のいていった。
そういえば、ハーブティーを飲むと私は何故だか眠気が強く出るのだった。
「バカだな……学習しないんだから……」
(本当は君に断る選択肢なんて、用意してなかったんだけどね。)
薄れゆく意識の中で、倒れる身体を受け止めてくれる手は心地がよかった。
そして恋愛ごっこは終わりを告げ、私とハズキの3日間限定の"同棲ごっこ"が始まった。
「ハズキ……暑い……」
「もう少しだけ我慢して。」
「喉……渇く……」
「やめて欲しかったら、もっと抵抗しろよ。」
「あふっ……動けない……」
「本当に駄目な奴だな……」
「ハズキのせい。責任とって……」
「うるさいなあ……」
ハズキは、口に含んだ水をノブ子に口移した─
フクロウカフェにノブ子を迎えに行ったアキヨシは、お店の照明が暗くなってる事に違和感を感じた。
ドアに近づくと、何か紙が挟まっている事に気がついてそれを手に取った。
(やられたなあ……君はそういう使い方をするのか。成る程……)
"私をレンタル出来る券"の裏側には、3日間ノブ子さんをお借りします。通報してくれても構いません。と書かれていた。
「成る程じゃないや!店主のエリさんに連絡しなきゃ!」
それにしてもハズキくん自暴自棄になってて心配だなあ。それに─
(あの子に何かされてなければ良いけど……)
自分の義娘にトラウマを植え付けられていたアキヨシは、ついハズキくんの方を心配をしたのだった─
と、ハズキはスタンガンが機能するかを確かめた後、私に用意された居場所にそれを置いた。
物々しい電気の光を見たお陰で目が覚めた。そして、昨日の事を段々と思い出してきた。
(これ、二日酔いってやつ?頭が少しズキズキする……)
ミトさん達と遊んだその後、ハズキの居るフクロウカフェへと向かった。
「……いらっしゃい。ノブ子ちゃん。」
(今日は来ない方が良かったのに……)
ハズキは、本当の気持ちを悟られない様にいつもの様に振る舞った。
「ハズキ……身長かなり高くなってる!何か良いことでもあった?」
「……ノブ子ちゃんも少し伸びてるよ。今日良いことあったんだね。」
擬人化した身体は感情によって伸び縮みをする。
「うん、ミトさんとオコメさんとで遊んだの。写真も撮ったのハズキに見て欲しい。」
そっか。と、いつもの様に飲み物を持って来てくれた。
そして、ハズキも椅子に座ってノブ子の話に耳を傾ける。
「新しい服似合ってるよ。ミトと似た服着てるの?じゃあ、やっぱり似合ってない。」とか、
写真を見て、「これが家政婦のオコメさん?アキヨシさん好きそー。相変わらずノブ子はモテるなあ。」とか、ハズキは楽しそうにコメントをくれた。
「最近、お腹の痛みはどう?」
「何故か、家に帰って落ち着いた時に少し痛むの。こうして、ハズキや皆と話してる時は痛くならない。」
「じゃあ、俺が居なくても皆が居たら大丈夫そうだね……」
「……どういう意味?ハズキも必要だよ?」
「今日で、ノブ子ちゃんとの恋愛ごっこは終わりにしようと思う。」
何の前触れもなく静かに切り出された別れ話に、私の思考は停止して暫く沈黙してしまった。
「……私の事、嫌になった?」
「うん、嫌い。いつもお店に押し掛けてくるしスゲーめーわく。」
私はハズキの顔をじっと観察して言った。
「私は……好き。」
「……じゃあ、君に俺の事、嫌いになって貰うしかないね。」
そして、ハズキは私に提案した。私があげた"私をレンタル出来る券"を机の上にバンッと音を立てて置いた。
「これ、三回いっぺんに使える?」
「うん、いいよ。」
「それじゃあ、ノブ子ちゃんが明日楽しみにしてる修学旅行に行かせない。」
「困る……ミトさんと林さんと約束してるから……」
「うん、嫌がらせだからね。だけど断ってもいいよ。俺と会える日はもうないけどね。」
(こんな試す様な言い方。ズルいよな……)
ハズキは2週間後には大学受験があり、お店の手伝いをするのは今日までだった事。気がはやいけれど大学近くに一人暮らしするために借りた部屋があり、そこで受験勉強をしている事を知った。
「だけど、卒業までは学校来るよね?」
ハズキは少し黙った後、あんまり行けそうにないと言った。
「こういう時に限って、錯乱期が来たんだ。この通り頭の中ごちゃごちゃしてる。問題を起こしそうだから、落ち着くまでは行けない。」
「錯乱期……ハズキどうなっちゃうの?」
「酷い事するよ?多分、君にもね。」
「……ハズキはしないと思う。私ハズキにレンタルされて、何すれば役にたつ?」
ハズキは痛い程に私を抱きしめた。そして、耳元でトーンを下げた声で、脅す様な話し方をした。
「フクロウの求愛の時期にはちょっと早いけど、君に居心地の良い巣を用意する。其所で3日間俺と一緒に過ごす。その間は君を外にも出させない。」
「私の事……嫌いなのに?」
「君はずっと俺に癒しを求めに来てたでしょ?一方的に搾取されるのは酷いと思わない?受験までの俺のストレスを少なくするのが、君にして欲しい事だよ。」
そして、私を解放した。
「わかった……いいよ。」
「2人きりだよ。危険だって分かってる?」
と、嘲る様にハズキは言った。
私は、入れてくれたハーブティーを一気に飲み干した。
ハズキはびっくりして目を見開いていた。
そして私は、気合いを入れてか細い声を精一杯彼に届かせた。
「このお手伝い券は、私の大事な人にしかあげてない!ハズキは私の癒し!お腹も痛くなくなるくらい!だから……だから私も修学旅行を諦めてハズキを助け……」
言い終える前に意識が遠のいていった。
そういえば、ハーブティーを飲むと私は何故だか眠気が強く出るのだった。
「バカだな……学習しないんだから……」
(本当は君に断る選択肢なんて、用意してなかったんだけどね。)
薄れゆく意識の中で、倒れる身体を受け止めてくれる手は心地がよかった。
そして恋愛ごっこは終わりを告げ、私とハズキの3日間限定の"同棲ごっこ"が始まった。
「ハズキ……暑い……」
「もう少しだけ我慢して。」
「喉……渇く……」
「やめて欲しかったら、もっと抵抗しろよ。」
「あふっ……動けない……」
「本当に駄目な奴だな……」
「ハズキのせい。責任とって……」
「うるさいなあ……」
ハズキは、口に含んだ水をノブ子に口移した─
フクロウカフェにノブ子を迎えに行ったアキヨシは、お店の照明が暗くなってる事に違和感を感じた。
ドアに近づくと、何か紙が挟まっている事に気がついてそれを手に取った。
(やられたなあ……君はそういう使い方をするのか。成る程……)
"私をレンタル出来る券"の裏側には、3日間ノブ子さんをお借りします。通報してくれても構いません。と書かれていた。
「成る程じゃないや!店主のエリさんに連絡しなきゃ!」
それにしてもハズキくん自暴自棄になってて心配だなあ。それに─
(あの子に何かされてなければ良いけど……)
自分の義娘にトラウマを植え付けられていたアキヨシは、ついハズキくんの方を心配をしたのだった─
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