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第47話 ハーメルンのミネルヴァ
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突然、夜の蝶がひらりと訪問してきた。
「オコメちゃん居る?」
インターフォンのカメラに向かって、ひょいっと甥っ子の小柚子くんを持ち上げて見せた。
ミネルヴァさんは入って来て早々、林さんに視線を移した。
「逸材めっけ!夜のお仕事に興味無い?」
「そうですね。店内の演出機材には少々。」
「兎に角、名刺に私の番号書いとくわ。」
気になったら連絡してね。と、チュッと名刺に口紅をつけた。
「ミネルヴァさん、高校生をスカウトしないで下さい!」
「あらアキヨシ、元気にしてた?」
アキヨシは、ミネルヴァさんの流暢な話し方に違和感を感じた。しかし、お酒の力で記憶が消えていたので気のせいという事にした。
ミネルヴァさんは、両手を広げながら美しいウォーキングでオコメさんを抱擁しにいった。
「大丈夫?アキヨシに何もされてない?」
「ミネルヴァさんに小柚子ちゃん、こんな遅くにどうされたのです?」
押し黙ってしまった小柚子くんの代わりにミネルヴァさんが伝える。
「オコメちゃん最近、お家に帰らない日が多くなったじゃない?コユズが寂しがってる。家事代行の仕事を進めたのは私だから、責任とって連れて来ちゃった。」
「寂しくないし……心配なだけだし。豚ねぇをこき使って良いのはわしだけなんじゃ……」
と、小柚子くんはオコメさんに抱きついた。
(小柚子ちゃんに心配かけちゃいました……)
「という訳で、アキヨシ私達も泊まらせて?今から帰るのダルいのよ。」
それも困った事だけど……と、アキヨシは疑問に思っていた事をぶつける。
「で、その子たちは?」
「ああ、色んな所に居た子をついでに集めて連れてきたの。小柚子と同じ学校の子みたいだったし。」
小柚子くんを玄関先で待ち伏せしていたメグちゃんに、博物館周りをうろちょろしていた弟のイハルくん。
そんなホラー感のある子たちに、小柚子くんは怯えていていた。思わずオコメさんにすがりついてしまう程に。
彼らは容赦なく、小柚子くんの片腕づつに引っ付いて、アキヨシの方をジッと見た。
(あ、片方は覚えてる……夏休みのハルくんだ。)
突然の訪問者に、猫化したミトさんがフーッと威嚇した─
「ノブ子……なんで、お返事くれなかったの?」
「ハルくん。お手紙たくさん貰った。ありがとう。」
「ノブ子はイハルって呼んで!それに、僕だけの絵のモデルしてくれるって言ってたのに!」
「私、モデルするって言ったの初耳。」
「……そっか、ごめんね。まだまだ僕の愛情表現が足りなかったから伝わらなかったんだ……」
彼は、爪を噛みながら、ぶつぶつと自己完結の独り言を呟き続けた。
「お姉さま、ルームウェアが可愛くありませんわ。」
「ひっ、メグちゃん……その節は、その……」
「お茶会のオコメお姉様は、本当のお人形の様に硬直されて、とても可愛いらしかったです……」
彼女は、恍惚とした表情で爪を噛んだ。その時の光景を思い出し、自分の世界へと入っていった。
同じ癖を持つ2人は姉弟だった。どちらもゴシックな服装に身を包んでいた。
(同じテイストの服を着るのは、仲良しな証拠。)ノブ子は、覚えたての事を思った。
ミネルヴァさんは、失礼しまーす。と冷蔵庫の中から缶ビールを取り出した。椅子に腰掛け、プシュッとプルタブを引いた。
「そうそう。イハルくんが送ってくれた手紙に入ってたパーツを組み合わせて、しおり作ってみたんだ。ふっふっふ。」
と、ノブ子はラミネート加工した栞を見せた。
やっぱり僕の運命の人だったと、イハルくんはノブ子に抱きついた。
しかし、そのしおりを見て息を飲んだ人が少なからず居た。
黒トンボの羽根、蜘蛛の脚、ナナフシの胴体、人の髪の毛を組み合わせて作られていた。
「キメラを作り上げるなんて流石妖精さん!」
と、林さんは感動していた。
「ふーん。イハルのミューズは中々の感性を持っているのね。」
ノブ子はイハルくんの姉公認の存在に昇格した。
「僕の髪の毛をずっと持ってくれてた……嬉しい。」
そして、イハルくんの好意も増長させた事だろう。
「ちょっと待って!うちの娘が悪質なストーカーに合ってる事に誰か言及して!」
と、アキヨシは頭を抱えた。
シャーッとミトさんは、壁側に待機している屈強そうな人たちを威嚇していた。
ついには飛びかかって、首の後ろを摘ままれて大人しくされてしまった。
「子どもの頃を思い出すにゃん……」
(ミトちゃんにも効くんだ……その方法……)
「って、この人たちは誰!?」
アキヨシは、当たり前かの様に控えていた彼らの存在に今更気がついた。
「私たちのSPよ。」
メグちゃんとイハルくんは資産家のご令嬢とご子息だ。
オコメさんがロリータ服を買った時に出会ったのは、メグちゃんが自分のお店を視察しに来ていたからだった。
「豪華なお家でしたものね。2人きりのお茶会だとは思いませんでしたが……シュールな絵に取り囲まれて……夢に出てきそうでした……」
オコメさんは、オブラートに包んだ感想を言った。
夢に出てくるくらいだなんて、嬉しい!と、ますますオコメさんは懐かれて、困り顔になった。
「それにあの絵はイハルの描いた絵なの。海外での個展では結構有名ですのよ?」
「そうだった。僕は夏休みに描いたノブ子の絵を約束通り見せに来たの。」
「見たい!私どんなになった?」
見せて貰ったノブ子は固まった。
「花瓶になった私、抜け殻みたい……死んじゃった?」
「ううん、ノブ子は寄生植物が咲き誇る為に宿主として養分を与えてるから共存しあって生きてるよ。」
因みに学校の絵の課題のテーマは、『リサイクル』だったらしい。
「えっこの怖い絵、特別賞!?」
オコメさんは、遂に本音が漏れ出した。
「学校の宿題とはいえ、金賞にならなかったのは悔しい……やっぱりノブ子の身体のラインが掴めてないから……」
と、ノブ子の服の下にイハルくんは手を入れた……その瞬間─
「おい、ボウズ……ノブ子に何してんだよ!」
と、ミトさんがイハルくんを片手で抱えてひっぺがした。
ミトさんの錯乱期間が終わった瞬間だった─
「アキヨシもこっちに来て、一緒に飲みましょーよ?」
「この妖精さんの絵を買い取りたいのですが……」
「そうねえ。イハル、これ50万位かしら?」
「それは、ノブ子にあげるからプライスレス!」
「小柚子ちゃん、大丈夫ですか!?気を確かに!」
「この壁に居る奴ら敵か!?」
「タクシー呼ぶんで、皆さん帰って下さい……」
結局、マイペースな人達は朝まで居続けた。
「オコメちゃん居る?」
インターフォンのカメラに向かって、ひょいっと甥っ子の小柚子くんを持ち上げて見せた。
ミネルヴァさんは入って来て早々、林さんに視線を移した。
「逸材めっけ!夜のお仕事に興味無い?」
「そうですね。店内の演出機材には少々。」
「兎に角、名刺に私の番号書いとくわ。」
気になったら連絡してね。と、チュッと名刺に口紅をつけた。
「ミネルヴァさん、高校生をスカウトしないで下さい!」
「あらアキヨシ、元気にしてた?」
アキヨシは、ミネルヴァさんの流暢な話し方に違和感を感じた。しかし、お酒の力で記憶が消えていたので気のせいという事にした。
ミネルヴァさんは、両手を広げながら美しいウォーキングでオコメさんを抱擁しにいった。
「大丈夫?アキヨシに何もされてない?」
「ミネルヴァさんに小柚子ちゃん、こんな遅くにどうされたのです?」
押し黙ってしまった小柚子くんの代わりにミネルヴァさんが伝える。
「オコメちゃん最近、お家に帰らない日が多くなったじゃない?コユズが寂しがってる。家事代行の仕事を進めたのは私だから、責任とって連れて来ちゃった。」
「寂しくないし……心配なだけだし。豚ねぇをこき使って良いのはわしだけなんじゃ……」
と、小柚子くんはオコメさんに抱きついた。
(小柚子ちゃんに心配かけちゃいました……)
「という訳で、アキヨシ私達も泊まらせて?今から帰るのダルいのよ。」
それも困った事だけど……と、アキヨシは疑問に思っていた事をぶつける。
「で、その子たちは?」
「ああ、色んな所に居た子をついでに集めて連れてきたの。小柚子と同じ学校の子みたいだったし。」
小柚子くんを玄関先で待ち伏せしていたメグちゃんに、博物館周りをうろちょろしていた弟のイハルくん。
そんなホラー感のある子たちに、小柚子くんは怯えていていた。思わずオコメさんにすがりついてしまう程に。
彼らは容赦なく、小柚子くんの片腕づつに引っ付いて、アキヨシの方をジッと見た。
(あ、片方は覚えてる……夏休みのハルくんだ。)
突然の訪問者に、猫化したミトさんがフーッと威嚇した─
「ノブ子……なんで、お返事くれなかったの?」
「ハルくん。お手紙たくさん貰った。ありがとう。」
「ノブ子はイハルって呼んで!それに、僕だけの絵のモデルしてくれるって言ってたのに!」
「私、モデルするって言ったの初耳。」
「……そっか、ごめんね。まだまだ僕の愛情表現が足りなかったから伝わらなかったんだ……」
彼は、爪を噛みながら、ぶつぶつと自己完結の独り言を呟き続けた。
「お姉さま、ルームウェアが可愛くありませんわ。」
「ひっ、メグちゃん……その節は、その……」
「お茶会のオコメお姉様は、本当のお人形の様に硬直されて、とても可愛いらしかったです……」
彼女は、恍惚とした表情で爪を噛んだ。その時の光景を思い出し、自分の世界へと入っていった。
同じ癖を持つ2人は姉弟だった。どちらもゴシックな服装に身を包んでいた。
(同じテイストの服を着るのは、仲良しな証拠。)ノブ子は、覚えたての事を思った。
ミネルヴァさんは、失礼しまーす。と冷蔵庫の中から缶ビールを取り出した。椅子に腰掛け、プシュッとプルタブを引いた。
「そうそう。イハルくんが送ってくれた手紙に入ってたパーツを組み合わせて、しおり作ってみたんだ。ふっふっふ。」
と、ノブ子はラミネート加工した栞を見せた。
やっぱり僕の運命の人だったと、イハルくんはノブ子に抱きついた。
しかし、そのしおりを見て息を飲んだ人が少なからず居た。
黒トンボの羽根、蜘蛛の脚、ナナフシの胴体、人の髪の毛を組み合わせて作られていた。
「キメラを作り上げるなんて流石妖精さん!」
と、林さんは感動していた。
「ふーん。イハルのミューズは中々の感性を持っているのね。」
ノブ子はイハルくんの姉公認の存在に昇格した。
「僕の髪の毛をずっと持ってくれてた……嬉しい。」
そして、イハルくんの好意も増長させた事だろう。
「ちょっと待って!うちの娘が悪質なストーカーに合ってる事に誰か言及して!」
と、アキヨシは頭を抱えた。
シャーッとミトさんは、壁側に待機している屈強そうな人たちを威嚇していた。
ついには飛びかかって、首の後ろを摘ままれて大人しくされてしまった。
「子どもの頃を思い出すにゃん……」
(ミトちゃんにも効くんだ……その方法……)
「って、この人たちは誰!?」
アキヨシは、当たり前かの様に控えていた彼らの存在に今更気がついた。
「私たちのSPよ。」
メグちゃんとイハルくんは資産家のご令嬢とご子息だ。
オコメさんがロリータ服を買った時に出会ったのは、メグちゃんが自分のお店を視察しに来ていたからだった。
「豪華なお家でしたものね。2人きりのお茶会だとは思いませんでしたが……シュールな絵に取り囲まれて……夢に出てきそうでした……」
オコメさんは、オブラートに包んだ感想を言った。
夢に出てくるくらいだなんて、嬉しい!と、ますますオコメさんは懐かれて、困り顔になった。
「それにあの絵はイハルの描いた絵なの。海外での個展では結構有名ですのよ?」
「そうだった。僕は夏休みに描いたノブ子の絵を約束通り見せに来たの。」
「見たい!私どんなになった?」
見せて貰ったノブ子は固まった。
「花瓶になった私、抜け殻みたい……死んじゃった?」
「ううん、ノブ子は寄生植物が咲き誇る為に宿主として養分を与えてるから共存しあって生きてるよ。」
因みに学校の絵の課題のテーマは、『リサイクル』だったらしい。
「えっこの怖い絵、特別賞!?」
オコメさんは、遂に本音が漏れ出した。
「学校の宿題とはいえ、金賞にならなかったのは悔しい……やっぱりノブ子の身体のラインが掴めてないから……」
と、ノブ子の服の下にイハルくんは手を入れた……その瞬間─
「おい、ボウズ……ノブ子に何してんだよ!」
と、ミトさんがイハルくんを片手で抱えてひっぺがした。
ミトさんの錯乱期間が終わった瞬間だった─
「アキヨシもこっちに来て、一緒に飲みましょーよ?」
「この妖精さんの絵を買い取りたいのですが……」
「そうねえ。イハル、これ50万位かしら?」
「それは、ノブ子にあげるからプライスレス!」
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