パソニフィ・コンフュージョン

沼蛙 ぽッチ & デブニ

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第48話 青天の霹靂

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文化祭まで後3日。準備は仕上げに向かっていた。

飲食の仕入れの確認をしているグループ。椅子や机など空間に関わるものを担当する係。茶道部と邦楽部から引き抜いた部員の人数とスケジュールの調整など……
只今、教室の中は充実感のある忙しさに満ちていた。

そして、ミトさんは望月さん率いる衣装とお客さんへのサービスを担当する子達と打ち合わせをしていた。

「私が、男物の着物を着るってこと?」
「違う違う。男前なミトちゃんはこっちのお姫様役の着物で、林さんが男装するの。」
「成る程、望月さん……これは、萌えという文化だね。」
と、衣装管理担当の子が言った。

「えっ、どういう事?」
「試しに着てみたら分かるって!」
パーテーションの中に押し込まれた。衣装係の子たちが、マニュアルを確認しながらミトさんに衣装を着付けていった。

「こんなに裾長いの……似合ってないんじゃ、私ショートカットだし、ウイッグいるよね……」
と、恥ずかしそうに出てきたミトさんを見たクラスメート達は……一瞬時が止まったかの様に静まりかえった。
「ほらやっぱり!これは違かったんだよおー!!」
と、再びパーテーションに引っ込み青ざめた。

クラスメートの皆さんは、何事も無かったかの様に其々の仕事を再開し、近くに居た子達とひそひそ話をした。

「見た?皆、見た?」
「落ち着けって。」
「キュンキュンし過ぎて死ぬかと思った。」
「恥ずかしがってて可愛い……」
「これは……絶対ショートカットのままが良いって!」
「女装じゃないけど、イケメンな子に女装させるという背徳感……」
「客、羨まし過ぎで憎い……」
「そもそも猫って可愛いいしな……」

小声で感想を言うクラスメートを見て、望月さんが満足そうに言った。

「成功だね!」
「どこがだよ!ひそひそ言われてんじゃん!」
(この屈辱を林にも味会わせたい!)

「林は、衣装合わせ終わったのかよ?」
「林さんは、絶対似合うから必要ないよ。もうサイズは測らせて貰ってるしね。今は別の仕事をしに行ってるよ?」
「不公平だ!!」
涙目になったミトちゃんに対して、望月さんはご機嫌に言った。
「ギャップの差だね!」
「意味わからん……」

ノブ子は、プールに張られた強化ガラスの上にうつ伏せになって、楽しそうに脚を上下にパタパタとさせていた。
(林さんの愛情を感じる……)

林さんは、校長先生、教頭先生、教育指導の先生、担任の先生にお披露目をしてプール場の使用許可を得た。

「当初、落下防止ネットを張ろうかと思いましたが、やはり広範囲ですし調整が難しかったです。なので、思いきって耐久性抜群の強化ガラスを一面に張ってみました!材料も、初期費用とクラスの飲食店での収入の見込みを計算して赤字にはなりませんでしたし─」

一夜にして全面に張られた圧巻の強化ガラスに、びっくりし過ぎて校長先生の眼鏡がズレた。
「しかしだね、プールは防火水槽としての機能が……」
「大丈夫です。ここの窪みを、手又はこちらのバールの様なもので、引っ掛けて解体できます!消防局への連絡も一応しておきました。」

「バールの様なものって……バールはバールですよ……林さん。」
校長先生が眼鏡をくいっと直した。

こうして、林さんの才能と情熱と、少しの狂気によってプレゼンを乗り切った。

「アメンボの事、憐れだと思ってたけど……プール中を見ながら歩けるなんて最高の気分。ちょっとだけ見直してあげなくもない……」
ノブ子はこの気持ちを共有したくて、ミトさんの居る校舎へと向かった。

そろそろ生徒達は、文化祭の準備を切り上げて帰る頃になっていた。
ミトさんは、飾り付け道具が入った段ボールを教室に持って行きながら、望月さんたちとの打ち合わせを続けていた。
「ミトちゃんとポラロイド写真を撮るの、一回500円とか安いよね!」
「いや、妥当だろ。」
「整理券作っとかなきゃ!後、抽選券も!」
「其処まで、繁盛するのか……?」
「ミトちゃんと林さんがサービスしてくれるんだよ?行列になっちゃうよ!」
「それなら当日、絶対買い出し班いるよね!」
ミトさんは、皮算用している仲間の話を飽きれつつも、楽しく聞いていた。

「生徒会長、文化祭関連です。こちらにサインを頂いても?」
「良かろう。聡見のクラスの出し物が楽しみじゃ。我が体重を支えられる専用の椅子を用意していくのでの。」
「生徒会長が来た時のミトの顔が楽しみです。」
(嫌そうな顔を見せてくれる事でしょう。)

生徒会長が、印鑑を押そうとした時─

外から、強烈な閃光と爆発音が起こった。その衝撃は、ガタガタと窓を揺らし地鳴りを引き起こした。

「─っつ……」
「何事じゃ!?……聡見よ、大丈夫かえ!!」
「ええ、ちょっと今ので目が眩んでしまって……」
心拍の音が、しゃがみ込んだ身体を揺らした。
「安心するのじゃ、ここの部屋は防弾ガラスじゃからの。」
「何故ここだけ……」
「我は第7婦人になる者故、特別使用なのじゃ。」
なんだそれ、と思って緊張が解けた。しかし、ここが防弾ガラスという事は……!

「妖精さんが心配です!」
冷静になった林さんは、生徒会長室を飛び出した。
「聡見!!」

爆風と共にガラス窓が割れて飛んで来た。
ガラスの破片は、ノブ子の幻体を透過して、壁に当たって砕け散った。

「私、かなり飛ばされちゃった……」
暫く放心状態でへたり込んでいたが、目的を思い出し歩き出した。
「ミトさんの所へ行かなきゃ……」

「ミト……ちゃん?」
ミトちゃんは咄嗟に、一緒に居た子達に覆い被さる様に庇った。
(─っつ……いってええぇぇーー!!)
背中に窓ガラスの破片が刺さったみたいだった。
大丈夫だったか?と、聞こうとしても声が出ない。
(くそっ、痛みのせいなのか!?)

「トラ……」
と、目の前の恐怖に囚われているクラスメートで察しがついた。その瞳に映っていたのは、自分だった……
(そうだったな。猫の擬人化と偽っても、いつかバレるんだよな……)

擬人化の者が死にゆく時、元の動物の姿に戻るから─
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