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第53話 天職
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「きゃー格好いいー、素敵ー。こっち見てー。」
ノブ子は、映像の中の人物にキラキラとした顔を向けて夢中になっていた。手に持った応援グッズは、会場に居る人たちの真似をしていた。うちわには、"連絡して♡"という文字がデコレーションされていた。
「妖精さん、コンサートじゃないんだからペンライトは必要ないんじゃ……後うちわも向こう側からは見えないですよ。」
しかし、こんな形で彼女を目の当たりにする事になるとは……
斎藤 ミトの闘う姿が、地上波に映し出されていた。
「ミトさんに早く会えないかな。ファンサービスして欲しいな。そして、こっち見てくれたって周り同士で勘違いしてキャーキャー言いたい。」
そんな時、ミトが司会席からマイクを奪ってカメラをジャックした。
「ノブ子、待ってろよ!必ず会い……いや、周りの奴からお前を奪いにいくからな!覚悟してろ!」
「うちわの文字、伝わった!?」
(それなら私は、その挑戦状を受け取って、貴女を完膚までに敗北させる最高の舞台を用意しましょう。)
「国民的ミトさんとファンの私とのスキャンダラスな恋……素敵……」
(妖精さん、そう言ってられるのも今のうちですからね……!)
だけど、ミトが居なくて寂しくしていた事を知っていたので、少し複雑な気持ちになった。
(これはミトに妖精さんを諦めてもらう為の計画。言わば私とミトとの最終決戦!だけど……本当にあいつノッてくるのでしょうか……)
結局、ミトが自分探しの旅から帰って来てから、実際一度もノブ子に会いに来ることはなかった。連絡さえも、《ちょっと、待ってろ》の一言だけだった。
彼女の近況を知ったのは、夜間学級のある高校へ編入する事になったと、養母のサツキさんからアキヨシさんへ連絡が来たからだ。今は所属事務所の寮で独り暮らしをして居るらしい。
林さんは、隕石が堕ちた処に調査員が来ていた光景を思いだしていた。そして今は、校舎の外を見ると、クレーターになった場所を埋め立てている重機が見えた。
それは、文化祭を開催させる為に奮闘した時間の流れを感じさせた。
走り回ったかいがあり、文化祭が執り行われる事になったのだった。
「妖精さんには、またミトの奴を引き寄せるダシになって頂きます!つまり文化祭では、ヒロイン役をして頂きます。」
「私、ダシになるの得意!ヒロインしたら、ミトさんにファンサービスして貰える?サイン?握手?ハグ……?」
ノブ子は、ミトと会わない時間が長くて気分が落ち込んでいたが、また会えると知って嬉しそうだった。
「一先ずファンサービスの事は置いておきましょう……簡単にいうと、ミトと私がヒロインを奪い合い合う演出です。妖精さん、自分を巡って争いが起きる展開なんてどうです?」
「ベタな展開、最高。楽しみー!」
擬人化のミトは公式の大会には出られない。動物だった時の能力を発揮する事が、規定違反になるかどうか未だ審議中だからだ。
けれど、総合格闘技イベントのキャストとして活躍する事になった。キックボクシングのコーチから推薦され、事務所に所属する事になった。
そして思いの外、ファンが出る程の人気が出てしまい、ミトはアイドルの様な感じになってしまった。
「聡見や、こんにちの文化祭開催決定、おめでとうなのじゃ。」
「華会長が、色々と手回ししてくれたのも大きいです。体育祭の時、先に注目を集めてくれたのも、ご協力ありがとうございました。」
「うむ。走ったのは久々じゃった。ゆえに、筋肉痛になった。」
(元象でも筋肉痛になるんだ……)
陸上競技場の地面は、ゴムチップ舗装されて、衝撃吸収してくれそうだった。それでも華会長の重量感のある四足走行と、運動着にじゃらじゃらと身に付けた装飾品のせいで、かなりの注目を集めたのだった。
「華会長……その団扇……」
生徒会長室にいつの間にか設置されていたモニターで、ちょうどミトが卑怯な手を使って攻撃している映像が流れていた。
「ミトの格好よさに拍車がかかっておる。あやつ、何か吹っ切れた様な良い顔をしておるな。それに、アイドルに憧れるのは浮気ではない故に良い文化なのじゃ。」
「やはり、貴女もご執心でしたか……」
学園の人気者だったミトは、すっかり国民の人気者のダークヒーローになっていた。
「ヒーローみたいな正統派じゃなくて、私を……悪役で売り出して下さい!」
ミトはそういう条件で契約したのだった。そして、虎の擬人化ということも公表して、自己プロデュースに成功した。
(しかし、意外ですね。ミトは決められた事をするのは嫌いだと思ってました……)
イベントは、競技と違って台本があり、其々の見せ場を作り、ヒール役は派手に暴れて必ず倒されるのが定番だった。
ミトは、練習場で賞を取った選手と時々手合わせして貰って、それで満足していたのだった。
(華会長のいう通り、何か吹っ切れたのでしょうか……)
イベントの仕事を終えたミトが、気まぐれにやって来た。
「オコメさん、ミネルヴァさんいない?」
「ミトさん!皆さんに会わなくていいんですか!?」
「ちょっと恥ずかしいお願いだから、皆には言わんでくれる?」
オコメさんの家に訪問していた。
「今、別宅の方で英会話教室の講師をしているので、ちょっと待ってて下さい!呼んで来ますね!」
「あら、国民的虎のファイターさんじゃない!私に何か御用?」
林は、望月さんの考えた寸劇の台本をミトのスマホに転送した─
「わ、私にメイクとか綺麗な所作……教えてくれないか、な……」
「何それ面白そう!其れじゃあ、後でこの場所に来てちょーだい。」
ヒラヒラと手を振って、英会話教室の仕事へと戻って行った。
ミネルヴァさんの夜の仕事場。女優ミラーのある控え室に通された。
「前に着た衣装より、なんだか露出が多いんだが……」
「似合うわよとても。そのくらいセクシャルな方が良いわよ。……ねえ、メグちゃん。」
「ええ、私のデザインした花魁風ドレス!」
「私一応、姫役なんだけど……」
ノブ子は、映像の中の人物にキラキラとした顔を向けて夢中になっていた。手に持った応援グッズは、会場に居る人たちの真似をしていた。うちわには、"連絡して♡"という文字がデコレーションされていた。
「妖精さん、コンサートじゃないんだからペンライトは必要ないんじゃ……後うちわも向こう側からは見えないですよ。」
しかし、こんな形で彼女を目の当たりにする事になるとは……
斎藤 ミトの闘う姿が、地上波に映し出されていた。
「ミトさんに早く会えないかな。ファンサービスして欲しいな。そして、こっち見てくれたって周り同士で勘違いしてキャーキャー言いたい。」
そんな時、ミトが司会席からマイクを奪ってカメラをジャックした。
「ノブ子、待ってろよ!必ず会い……いや、周りの奴からお前を奪いにいくからな!覚悟してろ!」
「うちわの文字、伝わった!?」
(それなら私は、その挑戦状を受け取って、貴女を完膚までに敗北させる最高の舞台を用意しましょう。)
「国民的ミトさんとファンの私とのスキャンダラスな恋……素敵……」
(妖精さん、そう言ってられるのも今のうちですからね……!)
だけど、ミトが居なくて寂しくしていた事を知っていたので、少し複雑な気持ちになった。
(これはミトに妖精さんを諦めてもらう為の計画。言わば私とミトとの最終決戦!だけど……本当にあいつノッてくるのでしょうか……)
結局、ミトが自分探しの旅から帰って来てから、実際一度もノブ子に会いに来ることはなかった。連絡さえも、《ちょっと、待ってろ》の一言だけだった。
彼女の近況を知ったのは、夜間学級のある高校へ編入する事になったと、養母のサツキさんからアキヨシさんへ連絡が来たからだ。今は所属事務所の寮で独り暮らしをして居るらしい。
林さんは、隕石が堕ちた処に調査員が来ていた光景を思いだしていた。そして今は、校舎の外を見ると、クレーターになった場所を埋め立てている重機が見えた。
それは、文化祭を開催させる為に奮闘した時間の流れを感じさせた。
走り回ったかいがあり、文化祭が執り行われる事になったのだった。
「妖精さんには、またミトの奴を引き寄せるダシになって頂きます!つまり文化祭では、ヒロイン役をして頂きます。」
「私、ダシになるの得意!ヒロインしたら、ミトさんにファンサービスして貰える?サイン?握手?ハグ……?」
ノブ子は、ミトと会わない時間が長くて気分が落ち込んでいたが、また会えると知って嬉しそうだった。
「一先ずファンサービスの事は置いておきましょう……簡単にいうと、ミトと私がヒロインを奪い合い合う演出です。妖精さん、自分を巡って争いが起きる展開なんてどうです?」
「ベタな展開、最高。楽しみー!」
擬人化のミトは公式の大会には出られない。動物だった時の能力を発揮する事が、規定違反になるかどうか未だ審議中だからだ。
けれど、総合格闘技イベントのキャストとして活躍する事になった。キックボクシングのコーチから推薦され、事務所に所属する事になった。
そして思いの外、ファンが出る程の人気が出てしまい、ミトはアイドルの様な感じになってしまった。
「聡見や、こんにちの文化祭開催決定、おめでとうなのじゃ。」
「華会長が、色々と手回ししてくれたのも大きいです。体育祭の時、先に注目を集めてくれたのも、ご協力ありがとうございました。」
「うむ。走ったのは久々じゃった。ゆえに、筋肉痛になった。」
(元象でも筋肉痛になるんだ……)
陸上競技場の地面は、ゴムチップ舗装されて、衝撃吸収してくれそうだった。それでも華会長の重量感のある四足走行と、運動着にじゃらじゃらと身に付けた装飾品のせいで、かなりの注目を集めたのだった。
「華会長……その団扇……」
生徒会長室にいつの間にか設置されていたモニターで、ちょうどミトが卑怯な手を使って攻撃している映像が流れていた。
「ミトの格好よさに拍車がかかっておる。あやつ、何か吹っ切れた様な良い顔をしておるな。それに、アイドルに憧れるのは浮気ではない故に良い文化なのじゃ。」
「やはり、貴女もご執心でしたか……」
学園の人気者だったミトは、すっかり国民の人気者のダークヒーローになっていた。
「ヒーローみたいな正統派じゃなくて、私を……悪役で売り出して下さい!」
ミトはそういう条件で契約したのだった。そして、虎の擬人化ということも公表して、自己プロデュースに成功した。
(しかし、意外ですね。ミトは決められた事をするのは嫌いだと思ってました……)
イベントは、競技と違って台本があり、其々の見せ場を作り、ヒール役は派手に暴れて必ず倒されるのが定番だった。
ミトは、練習場で賞を取った選手と時々手合わせして貰って、それで満足していたのだった。
(華会長のいう通り、何か吹っ切れたのでしょうか……)
イベントの仕事を終えたミトが、気まぐれにやって来た。
「オコメさん、ミネルヴァさんいない?」
「ミトさん!皆さんに会わなくていいんですか!?」
「ちょっと恥ずかしいお願いだから、皆には言わんでくれる?」
オコメさんの家に訪問していた。
「今、別宅の方で英会話教室の講師をしているので、ちょっと待ってて下さい!呼んで来ますね!」
「あら、国民的虎のファイターさんじゃない!私に何か御用?」
林は、望月さんの考えた寸劇の台本をミトのスマホに転送した─
「わ、私にメイクとか綺麗な所作……教えてくれないか、な……」
「何それ面白そう!其れじゃあ、後でこの場所に来てちょーだい。」
ヒラヒラと手を振って、英会話教室の仕事へと戻って行った。
ミネルヴァさんの夜の仕事場。女優ミラーのある控え室に通された。
「前に着た衣装より、なんだか露出が多いんだが……」
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