もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち

文字の大きさ
15 / 139

王都にて 陛下とシンフォニー

しおりを挟む
「シンフォニー、急に呼び出して悪かったね」
「いえ、とんでもございません」
 陛下の突然の呼び出しでも淑女は冷静で洗練された態度を忘れない。

「…君には私の息子が大変申し訳ない事をしたと思っていた」
「勿体ないお言葉ですわ。陛下には何度も謝罪をして頂きました」
「しかし、今回のことは寛容するわけにはいかない」
「…」
「分かるだろう、シンフォニー。君は賢い女性だ。もう花嫁衣裳も装飾品もすべてアリアナ用に仮縫いまで進んでいる。各国の要人を招待し結婚披露パーティーの日程も決まっている。花嫁の変更などありえない」

「…ですが、私は長い間この国の王妃になるための教育を受け、品格を落とさぬよう常に注意を払い、私は完璧な王子の婚約者であり続けました。そうした中で婚約破棄を言い渡されたのです!たった一夜で私の今までの苦労は水の泡と消えました。婚約破棄をされた私は深い森の中にいるようでした。しかし陛下からの心温まるお言葉を頂き、周りから何を言われても平常心を保てておりました。そんな恩ある陛下にあのアリアナ・カビラの裏の顔を知っている私が黙って見過ごせる事が出来るでしょうか?答えはノーです。陛下に恩をお返しする為にアリアナの悪を暴き、この国の未来を守ったのだと私は自負しております。しかもアリアナは妃教育からも逃げ、要人の名も覚えられないと泣き言を言って侍女達を困らせていたそうです。それを聞いて私はやはりアリアナにこの国の王妃を任せてはおけないとユリウスに話を聞いて貰ったのです。私は間違った事など…」
 シンフォニーは自分の正当性を語った。

「隣国の第二王子は気持ちのいい男であった。シンフォニーの絵姿も気に入ってな。すぐにでも会いたいと言っておったよ。わしの馬鹿息子の事など忘れて、君を裏切ったこの国の事もわすれて隣国で幸せになればよかったのに…」
「…陛下?」
「シンフォニー、なぜ先に私に相談しなかったのだ。そなたの話なら一にも二にも先に話を聞いたであろう」
「陛下…」
「残念だ…君は賢い女だと思っていた」
「しかし…」
「隣国の祝い事にこの国を数日間留守にしている間に、わしが認めた正式な王子の婚約者を落とし入れ、尚且つ王子の婚約者に返り咲こうとはなんとも浅ましい女である。わしは祝い事の席で隣国の第二王子と面会させてもらった。シンフォニー、君にはつらい思いをさせた事への償いにどんな男なのかを見定めようとしたのだ。この男にならシンフォニーを任せても安心だと思った。…しかし、もちろんこの話はなくなる。隣国への謝罪もせねばならぬ。すべてはわしの馬鹿息子のしでかした事だが…」
 国王はため息混じりで話を進めた。

「陛下、私は…」
「途中からそなたが手引きをしていた事は分かっておる」
「!」
「そなたは知っていたのだろう?わしの迂闊な部下がアリアナこそが次期王妃に相応しいとわしが思っているという事に。どこで聞いたかは言わんでいい。知っていたのだろう?」
「いいえ、私はそのようなことは…」
「すでに生まれる前から王子との婚約は決まっていた。わしが次期王妃はどこぞの娘がいいと言った所で他の貴族から反対されるのは分かっていた。色々な派閥があるからのう。そこまではわしはワンマンではない。一人のしがない占い師によって導かれた結果じゃったが、まあわしの古い友人だとでも思ってくれたらいい。しかし、よく当たる占い師ではあった。わしは気になりアリアナをこっそりと探ってはいたが婚約者にさせようとは思ってはいなかった。しかし高等部に入り王子からアリアナと結婚したいと言ってくるではないか、これは運命ではないか、そう思ってユリウスの婚約破棄という馬鹿な行動を今回のみ許したのだ」
「陛下…」
「わしはアリアナと無理やり結婚させたいと思った事はない。王子の希望だった。しかし、そなたは勝手に動いた。なぜか一度婚約破棄をさせ、そしてアリアナを悪者に仕立て上げ、すんなりと元サヤに収まる計画をしていたようだが…」
「陛下、私は…」
「まさか、こんな事をしでかすとは…」
「陛下、聞いてください…私は」
「自作自演で悲劇のヒロインにでも仕立て上げたかったのか?シンフォニーよ。そなたが相手にしたのは次期国王の婚約者だ!この王が認めた息子の婚約者を亡き者にしようと企てたという事なのだぞ!元サヤに収まると本気で思うたか?なんと愚かな…黙って隣国に嫁いでいれば幸せはすぐ目の前だったというのに…」
 国王の顔は温厚とはほど遠いものだった。シンフォニーはその時初めて自分は失敗したのだと悟った。

「覚悟をする事だな、シンフォニー。アリアナが見つからなければそなたは処刑だ。王に盾を突いたのだ。家族は資産を没収され平民に落ちることになるだろう」
「陛下、待って、待って、待ってください。陛下――」
「牢にぶち込め」
「陛下、お許しをー-、いやー-!触らないでー-、陛下――」

 シンフォニーは兵士に取り押さえられ連れていかれた。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

【完結】遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!

天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。  魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。  でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。  一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。  トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。  互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。 。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.  他サイトにも連載中 2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。  よろしくお願いいたします。m(_ _)m

水精姫の選択

六道イオリ/剣崎月
ファンタジー
見た目が美しくも奇異な小国の王女パルヴィは、財政難から大国に身売りすることになったのだが、道中で買うと言った王が死亡したと聞かされる。 買われ故国を救いたいと願う王女は引き返さずに大国へと赴き 

平民に転落した元令嬢、拾ってくれた騎士がまさかの王族でした

タマ マコト
ファンタジー
没落した公爵令嬢アメリアは、婚約者の裏切りによって家も名も失い、雨の夜に倒れたところを一人の騎士カイルに救われる。 身分を隠し「ミリア」と名乗る彼女は、静かな村で小さな幸せを見つけ、少しずつ心を取り戻していく。 だが、優しくも謎めいたカイルには、王族にしか持ちえない気品と秘密があり―― それが、二人の運命を大きく動かす始まりとなるのであった。

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

【完結】令嬢は売られ、捨てられ、治療師として頑張ります。

まるねこ
ファンタジー
魔法が使えなかったせいで落ちこぼれ街道を突っ走り、伯爵家から売られたソフィ。 泣きっ面に蜂とはこの事、売られた先で魔物と出くわし、置いて逃げられる。 それでも挫けず平民として仕事を頑張るわ! 【手直しての再掲載です】 いつも通り、ふんわり設定です。 いつも悩んでおりますが、カテ変更しました。ファンタジーカップには参加しておりません。のんびりです。(*´꒳`*) Copyright©︎2022-まるねこ

【完】瓶底メガネの聖女様

らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。 傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。 実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。 そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。 “あんたはモブで可哀相”。 お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?

処理中です...