もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち

文字の大きさ
24 / 139

18.

しおりを挟む
 アルディのクローゼットの中から平民のようなワンピースを見つけた。下はパンツを穿くようになっていて、ローブをまとえば男か女かわからなくなる。地味な装いで年配の女性のような格好だが目立たなくていいかもしれない。

「ちょっと、シシリアキングスに行ってくるね」
『ああ、気を付けるのだぞい』
「大丈夫、アルディのナイフを持っていくから」
『魔獣を解体するナイフか?』
「違う違う。あれから色々調べて人に対応できるナイフを見つけたの。使った事ないけど相手が死なない程度には抵抗できると思うわ」
 ナイフを腰に指す。

 ハウスを出て用心のため少し遠回りをしてから誰もいない事を確認して街道に出た。ピンクの髪には黒のショールを巻き見えないようにして、古い臙脂えんじ色のローブを身にまとい森を歩いていると数台の馬車が通り過ぎる。
 怪しすぎるのか御者からチラチラと見られていたが、特に誰からも声を掛けられる事はなかった。10分ほど歩いたら門にたどり着いた。乗り物用と人用の入口が別にあり、人の入口には誰もいなかった。

「こんにちは、入国したいのですが」
「ああ、「ヴァイ」を通して」
「あの「ヴァイ」は持ってなくて」
「ブリルは?」
 ブリルとはへその緒の事である。
「あ、それもないくて」
「ああ、森のもんか。ここにサインして。よくここまでこれたな?ひとり?」
 門番はアリアナの周りを確認した。
「はい」
「馬車に乗せてってもらったの?お礼言っとくんだよ?形のあるお礼もするんだぞ?」
 門番のおじさんは指と指をこすっている。お金の意味かな
「そうですね。お礼をします」アリアナはにこりとした。

「「ヴァイ」を冒険者ギルドか商人ギルドに行って必ず発行すること、いいね。それがなければ宿も使えないし商売も出来ないからな」
「わかりました。ありがとうございます」
 すんなりとシシリアキングスに入国してしまった。

 よくこんな事があるのだろう。魔の森以外の森は人が住みついているようだ。そこからたまに人が街に現れるのかもしれない。とにかく身分を明かさずに入国出来たのは助かった。

 とりあえず、商人ギルドに行こう。冒険者ギルドは門に入った真正面に立っている。大きくて立派だ。門や冒険者ギルドの大きさで街の大きさも分かるという。その真向いに商人ギルドがあった。人の出入りも多く賑わっている。

 商人ギルドに入り「ヴァイの発行はこちら」という案内が目に入る。他の受付と違いこちらは閑散としている。
「ヴァイの発行ですか?」
 声を掛けられた。
「はい、ブリルはないんですけど…」
「大丈夫よ。こちらに座って」
 感じのいい女性が対応してくれた。
「ここの部署ってすごく暇なの。1日に一人とか二人とかなのよ。最近人員も減らされちゃって、今は私一人なの。でもやっぱり暇なの」
 クスリと笑い合う。

「じゃあ、休めないですね」
「そうなの!だから半休とかで今は誤魔化しているんだけど…」
 おしゃべりしながら、「ここに名前を書いて」とか「ここに手をやって」とか言われた事をしていたらいつのまにか終わっていた。

「はい、これが「ヴァイ」よ。失くさないようにね。失くしたらすぐにこのここに来ること」
「はい、ありがとうございます」
「リアね。困った事があったら何でも言ってね。ここはいつも暇だから、私はヨモって言うの。手伝いとかなければ大体ここにいるから」

 アリアナは門のサインから名前を迷った挙句に「リア」した。頭から黒のショールを巻きその上からローブをまとっている為、ピンク色の髪の毛は目立たなかったが、アリアナという名は貴族に多い名前だ。この名前を言ってしまうと「ん?」と思われてしまうのは分かっていた。平民の名前は2文字が多いのだ。

「ありがとう、あぁちょっと早速相談ですが…お金って…」
「ああ、お金の相談は出来ないわ、私もそんなに裕福ではないから」
「あっ違うの、えっと、これモグリベルのコインだけど、これって使える?」
 兵士のおばあさんがくれた麻袋の中に入っていたコインだ。ヨモに銅貨を見せる。

「え、あ、ごめんなさい。私ったら!うふふ、ああ、モグリベルのコインね。大丈夫よ。ここの2階でシシリアのコインに交換してくれるわ。安心して」
「よかった、ありがとう。あ、それと安い宿ってこの辺にあるかしら」
 ヨモに安い宿を紹介してもらい礼を言って2階に向かう。持っているモグリベルのコインを全部交換するつもりだ。

「こんにちは、モグリベルのコインをシシリアキングスのコインに交換して貰いたいのですが」
 と、受付の女性に言うと、にこりと対応してくれた。
「金貨1枚に銀貨7枚と大小銅貨15枚で間違いないですね」
「はい」
「全部でこちらの金額になります。手数料として5000ルー頂きます。よろしいですか?」
 木箱のようなものに金額が光っている。その木箱もめずらしかったが何より手数料が高い。しかし、やっと使えるお金が手に入るのだ。
「手数料って高いのですね」
 ちょっとだけ抵抗して見る。対応した女性は慣れているのか、にっこりと笑いリアに言った。
「ええ、ここは国と街が運営している機関になります。他の交換所もあるのですがなにも知らない移住者などには酷いぼったくりがあると聞いています。そうならないためには手数料は高めですがこちらで交換して頂く方が安全ですよ」
 と言われた。なるほど…モグリベルからの移住者が多いシシリアキングスにはそういった所もあるのだろう。
「わかりました。この金額で結構です」
「納得してもらってよかったです。現金とヴァイ、どちらになさいますか?」
「どちら?」
 受付の女性はやはり慣れているのかくすりと笑う。
「現金をそのままお渡ししてもいいのですが、街の多くはヴァイで支払いをします。現金を拒否する店もあるんですよ」
 クレカのような感じかな。
「そうなんですか?」
「ヴァイにお金を預金しますと、どこのお店でもこのカードで対応出来ますから現金を持っているより安心です。ヴァイは本人しか使えませんからね」

 多くのヴァイは本人と繋がっていたブリルで作られている。よってそのカードは他人が使う事は出来ない。失くしたとかで後日作られるヴァイも血や魔力を採取して作られているので同じ役目を果たす。だがブリルで作られたものは親の証明も出来るので血や魔力より高性能なのだ。

「すごく便利ですね」
「そうでしょう?でもモグリベルはこの制度を嫌っているの。現金主義なのよね。きっとモグリベルの貴族のお屋敷にはたくさんの金貨が隠されているのでしょうね。うふふ」

 なるほど、きちんと数字化を進めると困る貴族がたくさん出てくるのだな。と納得し、すべてヴァイに預金して貰った。そしてヨモに紹介して貰った宿に向かう。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

【完結】遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!

天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。  魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。  でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。  一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。  トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。  互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。 。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.  他サイトにも連載中 2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。  よろしくお願いいたします。m(_ _)m

水精姫の選択

六道イオリ/剣崎月
ファンタジー
見た目が美しくも奇異な小国の王女パルヴィは、財政難から大国に身売りすることになったのだが、道中で買うと言った王が死亡したと聞かされる。 買われ故国を救いたいと願う王女は引き返さずに大国へと赴き 

平民に転落した元令嬢、拾ってくれた騎士がまさかの王族でした

タマ マコト
ファンタジー
没落した公爵令嬢アメリアは、婚約者の裏切りによって家も名も失い、雨の夜に倒れたところを一人の騎士カイルに救われる。 身分を隠し「ミリア」と名乗る彼女は、静かな村で小さな幸せを見つけ、少しずつ心を取り戻していく。 だが、優しくも謎めいたカイルには、王族にしか持ちえない気品と秘密があり―― それが、二人の運命を大きく動かす始まりとなるのであった。

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

【完結】令嬢は売られ、捨てられ、治療師として頑張ります。

まるねこ
ファンタジー
魔法が使えなかったせいで落ちこぼれ街道を突っ走り、伯爵家から売られたソフィ。 泣きっ面に蜂とはこの事、売られた先で魔物と出くわし、置いて逃げられる。 それでも挫けず平民として仕事を頑張るわ! 【手直しての再掲載です】 いつも通り、ふんわり設定です。 いつも悩んでおりますが、カテ変更しました。ファンタジーカップには参加しておりません。のんびりです。(*´꒳`*) Copyright©︎2022-まるねこ

【完】瓶底メガネの聖女様

らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。 傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。 実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。 そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。 “あんたはモブで可哀相”。 お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?

処理中です...