もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち

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18.

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 アルディのクローゼットの中から平民のようなワンピースを見つけた。下はパンツを穿くようになっていて、ローブをまとえば男か女かわからなくなる。地味な装いで年配の女性のような格好だが目立たなくていいかもしれない。

「ちょっと、シシリアキングスに行ってくるね」
『ああ、気を付けるのだぞい』
「大丈夫、アルディのナイフを持っていくから」
『魔獣を解体するナイフか?』
「違う違う。あれから色々調べて人に対応できるナイフを見つけたの。使った事ないけど相手が死なない程度には抵抗できると思うわ」
 ナイフを腰に指す。

 ハウスを出て用心のため少し遠回りをしてから誰もいない事を確認して街道に出た。ピンクの髪には黒のショールを巻き見えないようにして、古い臙脂えんじ色のローブを身にまとい森を歩いていると数台の馬車が通り過ぎる。
 怪しすぎるのか御者からチラチラと見られていたが、特に誰からも声を掛けられる事はなかった。10分ほど歩いたら門にたどり着いた。乗り物用と人用の入口が別にあり、人の入口には誰もいなかった。

「こんにちは、入国したいのですが」
「ああ、「ヴァイ」を通して」
「あの「ヴァイ」は持ってなくて」
「ブリルは?」
 ブリルとはへその緒の事である。
「あ、それもないくて」
「ああ、森のもんか。ここにサインして。よくここまでこれたな?ひとり?」
 門番はアリアナの周りを確認した。
「はい」
「馬車に乗せてってもらったの?お礼言っとくんだよ?形のあるお礼もするんだぞ?」
 門番のおじさんは指と指をこすっている。お金の意味かな
「そうですね。お礼をします」アリアナはにこりとした。

「「ヴァイ」を冒険者ギルドか商人ギルドに行って必ず発行すること、いいね。それがなければ宿も使えないし商売も出来ないからな」
「わかりました。ありがとうございます」
 すんなりとシシリアキングスに入国してしまった。

 よくこんな事があるのだろう。魔の森以外の森は人が住みついているようだ。そこからたまに人が街に現れるのかもしれない。とにかく身分を明かさずに入国出来たのは助かった。

 とりあえず、商人ギルドに行こう。冒険者ギルドは門に入った真正面に立っている。大きくて立派だ。門や冒険者ギルドの大きさで街の大きさも分かるという。その真向いに商人ギルドがあった。人の出入りも多く賑わっている。

 商人ギルドに入り「ヴァイの発行はこちら」という案内が目に入る。他の受付と違いこちらは閑散としている。
「ヴァイの発行ですか?」
 声を掛けられた。
「はい、ブリルはないんですけど…」
「大丈夫よ。こちらに座って」
 感じのいい女性が対応してくれた。
「ここの部署ってすごく暇なの。1日に一人とか二人とかなのよ。最近人員も減らされちゃって、今は私一人なの。でもやっぱり暇なの」
 クスリと笑い合う。

「じゃあ、休めないですね」
「そうなの!だから半休とかで今は誤魔化しているんだけど…」
 おしゃべりしながら、「ここに名前を書いて」とか「ここに手をやって」とか言われた事をしていたらいつのまにか終わっていた。

「はい、これが「ヴァイ」よ。失くさないようにね。失くしたらすぐにこのここに来ること」
「はい、ありがとうございます」
「リアね。困った事があったら何でも言ってね。ここはいつも暇だから、私はヨモって言うの。手伝いとかなければ大体ここにいるから」

 アリアナは門のサインから名前を迷った挙句に「リア」した。頭から黒のショールを巻きその上からローブをまとっている為、ピンク色の髪の毛は目立たなかったが、アリアナという名は貴族に多い名前だ。この名前を言ってしまうと「ん?」と思われてしまうのは分かっていた。平民の名前は2文字が多いのだ。

「ありがとう、あぁちょっと早速相談ですが…お金って…」
「ああ、お金の相談は出来ないわ、私もそんなに裕福ではないから」
「あっ違うの、えっと、これモグリベルのコインだけど、これって使える?」
 兵士のおばあさんがくれた麻袋の中に入っていたコインだ。ヨモに銅貨を見せる。

「え、あ、ごめんなさい。私ったら!うふふ、ああ、モグリベルのコインね。大丈夫よ。ここの2階でシシリアのコインに交換してくれるわ。安心して」
「よかった、ありがとう。あ、それと安い宿ってこの辺にあるかしら」
 ヨモに安い宿を紹介してもらい礼を言って2階に向かう。持っているモグリベルのコインを全部交換するつもりだ。

「こんにちは、モグリベルのコインをシシリアキングスのコインに交換して貰いたいのですが」
 と、受付の女性に言うと、にこりと対応してくれた。
「金貨1枚に銀貨7枚と大小銅貨15枚で間違いないですね」
「はい」
「全部でこちらの金額になります。手数料として5000ルー頂きます。よろしいですか?」
 木箱のようなものに金額が光っている。その木箱もめずらしかったが何より手数料が高い。しかし、やっと使えるお金が手に入るのだ。
「手数料って高いのですね」
 ちょっとだけ抵抗して見る。対応した女性は慣れているのか、にっこりと笑いリアに言った。
「ええ、ここは国と街が運営している機関になります。他の交換所もあるのですがなにも知らない移住者などには酷いぼったくりがあると聞いています。そうならないためには手数料は高めですがこちらで交換して頂く方が安全ですよ」
 と言われた。なるほど…モグリベルからの移住者が多いシシリアキングスにはそういった所もあるのだろう。
「わかりました。この金額で結構です」
「納得してもらってよかったです。現金とヴァイ、どちらになさいますか?」
「どちら?」
 受付の女性はやはり慣れているのかくすりと笑う。
「現金をそのままお渡ししてもいいのですが、街の多くはヴァイで支払いをします。現金を拒否する店もあるんですよ」
 クレカのような感じかな。
「そうなんですか?」
「ヴァイにお金を預金しますと、どこのお店でもこのカードで対応出来ますから現金を持っているより安心です。ヴァイは本人しか使えませんからね」

 多くのヴァイは本人と繋がっていたブリルで作られている。よってそのカードは他人が使う事は出来ない。失くしたとかで後日作られるヴァイも血や魔力を採取して作られているので同じ役目を果たす。だがブリルで作られたものは親の証明も出来るので血や魔力より高性能なのだ。

「すごく便利ですね」
「そうでしょう?でもモグリベルはこの制度を嫌っているの。現金主義なのよね。きっとモグリベルの貴族のお屋敷にはたくさんの金貨が隠されているのでしょうね。うふふ」

 なるほど、きちんと数字化を進めると困る貴族がたくさん出てくるのだな。と納得し、すべてヴァイに預金して貰った。そしてヨモに紹介して貰った宿に向かう。
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