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第55話
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やはり宿にいた方がよかったかもしれない。真相が話せるようになるまでヨモの所には行かないようにしようとリアは決めた。
リアは部屋に戻り、気を紛らわせるために魔法円を作っていた。夢中になって作業をしていると窓からは夕日が差し込んだ。リアの部屋に誰か訪ねて来た。ガロだ。
「部屋に居たようだな」
「あなたの言う通り部屋にいた方がよかったわ」
「やけに素直だな」
「もともと素直な性格よ」
「まあいい、上で夕食に来ないか?」
「遠慮します。宿の食堂で食べるから」
「遠慮はいらない。リアはオレンジサンダーのメンバーなんだから」
「あれは本気だったの?その場の方便ではなくて?」
「俺はずっとあんたの後を引っ付いて回るのは御免だ。メンバーになってくれたら同じ部屋になるし、わざわざこうやって迎えに来なくて済む」
「ちょっちょっと、どういう事?なんで引っ付いて回るの?同じ部屋?なにそれ、迷惑ですけど」
「マオが気にしている。なにかあっては困るのだ」
「シンの次は私なの?ずいぶんと心変わりが早いのね」
「マオの事は俺にだって分からない。あんな風に見えていても心の底は計り知れない。あんまり舐めない事だ」
「…王子様を舐めたりしませんよ」
リアは仕方なくオレンジサンダーのメンバーと食事をする事にする。明日までの辛抱だ。
夕食時に部屋に訪れたリアはマオに招き入れられる。
「やあ、リア。黒のショールを巻いているのかい。可愛いピンクの髪を見られないのは哀しいけど安全のためにはその方がいいかもしれないね」
相変わらず軽い、どこが底が知れないのか…
「お招きありがとうございます。今日ガロさんに助けられてしまって、またご迷惑をかける事になるかもしれないので黒のショールは取らないでおこうと思いました」
「ガロでいい」
「そうだな、かたっ苦しいのは苦手だよ。俺たちもリアと呼ぶから」
キトが言った。
「俺たちといるなら黒のショールは必要ないだろう」
ドクが言う。
「…あの私ははっきり言って冒険者としてやっていくには腕がありません。ガロ…にも言いましたがメンバーに入るのは足手まといです。申し出は有難いのですが、明日叔父の所に行ってから、今後どうするのか叔父と相談して決めるつもりですので…」
「俺が剣を教えてやろう」マオが意気揚々と言う。
「嫌です」
「何でさ」
「剣なんて触った事もありません。ムリです」
「シンはどんどん腕を上げていたぜ」
「私はシンではありません」
「やれば出来る!」
「出来ない人もいます」
リアは思いっきり分かりやすく大きなため息を吐いた。
「はぁ、私はもともと商人ギルドに登録をしてます。王都で暮らすのであれば叔父と会ってからどうするのか決めたかったのでそれまでは冒険者をしていただけなのです」
「なんですぐに叔父に連絡しないんだ」
「えっ…」
「すぐに連絡していたらシンとの事だってなかったかもしれない」
ガロは腕を組みリアに詰め寄る。
「少し王都を見学したくて…」
「それだけ?」
「他に何があるの?」
「何か隠しているだろう?」
「隠していたらなに?あなた達にすべて打ち明けないといけないの?」
「助けてやったろ?」
「その恩だけですべて晒せと?」
「俺たちが信用できないと?」
「そういう問題じゃないわ。これ以上なにかにつけて質問攻めにするなら、明日は叔父の所にはいかないわ。自分で連絡をして叔父に迎えに来てもらう」
「もう君の叔父の所には連絡済みだ」
「ふたりで行けば?」
「ふたりで言ってどうするのだ?」
「知らないわよ。話があったんでしょう?私はついでだったはずよ?」
「なぜ、素直に言う事を聞かないんだ」
「命の恩人にはなんでも言う事を聞かないといけないの?女を守るのが男の使命とか言ってたくせに恩を売りつけるのね」
ガロとリアが言い争いになってしまい、マオが止めた。
「わかった。これ以上なにも聞かない。食事にしよう」
リアは口に食事を詰め込むと「ごちそうさま」と部屋を出た。
リアは腹が立って寝付けなかった。命を助けられたからと延々と干渉されるなんて願い下げだ。やはり王族などに力を借りるとこんな事になるのか…と実感する。そもそも叔父の件は勝手に付いていきたいと言われただけだ。関わるのは明日を最後にして貰いたい。
リアは部屋に戻り、気を紛らわせるために魔法円を作っていた。夢中になって作業をしていると窓からは夕日が差し込んだ。リアの部屋に誰か訪ねて来た。ガロだ。
「部屋に居たようだな」
「あなたの言う通り部屋にいた方がよかったわ」
「やけに素直だな」
「もともと素直な性格よ」
「まあいい、上で夕食に来ないか?」
「遠慮します。宿の食堂で食べるから」
「遠慮はいらない。リアはオレンジサンダーのメンバーなんだから」
「あれは本気だったの?その場の方便ではなくて?」
「俺はずっとあんたの後を引っ付いて回るのは御免だ。メンバーになってくれたら同じ部屋になるし、わざわざこうやって迎えに来なくて済む」
「ちょっちょっと、どういう事?なんで引っ付いて回るの?同じ部屋?なにそれ、迷惑ですけど」
「マオが気にしている。なにかあっては困るのだ」
「シンの次は私なの?ずいぶんと心変わりが早いのね」
「マオの事は俺にだって分からない。あんな風に見えていても心の底は計り知れない。あんまり舐めない事だ」
「…王子様を舐めたりしませんよ」
リアは仕方なくオレンジサンダーのメンバーと食事をする事にする。明日までの辛抱だ。
夕食時に部屋に訪れたリアはマオに招き入れられる。
「やあ、リア。黒のショールを巻いているのかい。可愛いピンクの髪を見られないのは哀しいけど安全のためにはその方がいいかもしれないね」
相変わらず軽い、どこが底が知れないのか…
「お招きありがとうございます。今日ガロさんに助けられてしまって、またご迷惑をかける事になるかもしれないので黒のショールは取らないでおこうと思いました」
「ガロでいい」
「そうだな、かたっ苦しいのは苦手だよ。俺たちもリアと呼ぶから」
キトが言った。
「俺たちといるなら黒のショールは必要ないだろう」
ドクが言う。
「…あの私ははっきり言って冒険者としてやっていくには腕がありません。ガロ…にも言いましたがメンバーに入るのは足手まといです。申し出は有難いのですが、明日叔父の所に行ってから、今後どうするのか叔父と相談して決めるつもりですので…」
「俺が剣を教えてやろう」マオが意気揚々と言う。
「嫌です」
「何でさ」
「剣なんて触った事もありません。ムリです」
「シンはどんどん腕を上げていたぜ」
「私はシンではありません」
「やれば出来る!」
「出来ない人もいます」
リアは思いっきり分かりやすく大きなため息を吐いた。
「はぁ、私はもともと商人ギルドに登録をしてます。王都で暮らすのであれば叔父と会ってからどうするのか決めたかったのでそれまでは冒険者をしていただけなのです」
「なんですぐに叔父に連絡しないんだ」
「えっ…」
「すぐに連絡していたらシンとの事だってなかったかもしれない」
ガロは腕を組みリアに詰め寄る。
「少し王都を見学したくて…」
「それだけ?」
「他に何があるの?」
「何か隠しているだろう?」
「隠していたらなに?あなた達にすべて打ち明けないといけないの?」
「助けてやったろ?」
「その恩だけですべて晒せと?」
「俺たちが信用できないと?」
「そういう問題じゃないわ。これ以上なにかにつけて質問攻めにするなら、明日は叔父の所にはいかないわ。自分で連絡をして叔父に迎えに来てもらう」
「もう君の叔父の所には連絡済みだ」
「ふたりで行けば?」
「ふたりで言ってどうするのだ?」
「知らないわよ。話があったんでしょう?私はついでだったはずよ?」
「なぜ、素直に言う事を聞かないんだ」
「命の恩人にはなんでも言う事を聞かないといけないの?女を守るのが男の使命とか言ってたくせに恩を売りつけるのね」
ガロとリアが言い争いになってしまい、マオが止めた。
「わかった。これ以上なにも聞かない。食事にしよう」
リアは口に食事を詰め込むと「ごちそうさま」と部屋を出た。
リアは腹が立って寝付けなかった。命を助けられたからと延々と干渉されるなんて願い下げだ。やはり王族などに力を借りるとこんな事になるのか…と実感する。そもそも叔父の件は勝手に付いていきたいと言われただけだ。関わるのは明日を最後にして貰いたい。
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