もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち

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第56話

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 翌日、正装したふたりの男と大きな黒塗りの馬車が宿の入口で待っていた。

「リア、部屋にドレスを届けたはずだったが、なぜ黒のショールに汚れた臙脂のローブを着ているんだ?」
 ガロはリアを大人の言う事を聞かない駄々っ子を見ているような目で見る。

「なにも知らないのね。あんな貴族が着るようなドレスを朝に届けて貰っても時間がないし一人では着られないのよ。非常識だわ」
 リアはそれを軽蔑のまなざしで見返した。

「では、出発は明日にしよう」
「結構よ。服は着ているしなんの問題はないわ。なんで私があんなドレスを着ないといけないの?それにあなた達からドレスを贈って貰う立場でもないわ。今日行かないのであればもう一緒には行かないわ」
「しかし、そんな恰好では叔父に失礼だろう」
「私は親族よ。あんな羽や大きなリボンをつけたドレスを着ていった方が失礼だと思うわ」
「私にセンスがないと?」
「あれは嫌がらせだと思ったわ」
「まあまあ、ガロもリアも熱くならないで行こう」
「しかし…」
「ガロはマナーを重んじて正装という意味でドレスを用意したんだと思うんだよ、リア。許してやってくれ。センスがないのもね」
 ムッとしてガロは黒塗り馬車に乗り込むながらリアに言った。
「コバック男爵が汚らしい娘を家に招くのを拒否されなければいいな」
 
 リアはマオにエスコートをされながら馬車に乗り込む。
「そんな人でなしでは、なかったと思うわ」
「俺を人でなしと言っているのか」
「エスコートも出来ない男ですものね」
「口の減らない」
「口はひとつよ。減ったら気持ち悪いでしょう」

「あははは、ガロがそんな言い合いをするなんで珍しいな」
「こんなに口が回る女は初めてだ」
「今までの女性はあなたに気を使って黙っていただけよ。王子に仕える貴族なんでしょ?そりゃ口出し出来ないわよ」
「俺はそんなに高圧的ではない」
「本人がそれを言ってもね」

「まあまあ」
 マオからなだめられたガロは口を閉じた。いつもならグイグイと行くマオに対して牽制をしていたのがガロであったのに、リアと話をすると調子が狂う。自分に歯向かってくる女など今までいなかった。ガロはリアがメンバーになるのを拒否した事を感謝する。こんな女と関わる事などマオが望んでも御免だと思った。


 黒塗りの馬車は貴族街に入り中心部に進んで行く。
「それでリアはその助けて貰った兵士にはまだ会ってないの?これも質問されたら困るのかな」
 マオが遠慮気味に話しかけて来た。
「困る事はないけど、話す事もないわ」
「マオが聞いているんだぞ」
「はあ、質問はしない約束でしょう?貴族街に入ったからってもうその約束はなし?」
「ごめん、気になったから。もう質問はしないよ」

「シンはどうなったの?」
 兵士に渡ってからのシンの情報はリアには分からなかった。
「今度はそっちからの質問か」
 マオはガロを無視してリアの質問に答えた。
「シンは俺がケガをさせちゃったから治療費を出したよ。火傷の後も残らずキレイに治ったらしいよ。夜にシンが目を覚ましたと聞いたから、今日はシンから事情を聞いている所じゃないかな」
「正直に襲った事情を話すかしら」
「言わないだろうな」
「無意味に襲われたって言って、ギルドがどちらを信じるのかな」
「俺はもうすぐAクラスの男だぜ。貢献度がちがう。ぽっと出の新人の言う事なんか信じないだろう。しかも俺が金を出して治してやったんだから」
「じゃあ、私の事を悪く言うわね」
「それも俺が説明した。薬草を摘んでいた女にシンが背後から切りかかったってね」
「マオはあんたがまだ放心状態だったから変わりに事情を説明してくれたんだ」
「それはありがとうございます。でもそれはガロの話ではないし、マオは詳しく話せともドレスを強要しようなんてしない素晴らしい紳士よ。ガロは虎の威を借りる狐だわ」
「はあ!」
「ガロ、もうやめろ」
「むっ」

 そんな話をしていると叔父の邸に付いた。叔父はリアの事を受け入れてくれるのだろうか、少し緊張しているリアにマオは心配そうに話しかける。
「大丈夫かい」
「久しぶりなので受け入れられるかな」

「ドレスを着ないからだ」
「ガロ」
 いつもと立場が逆転しているマオとガロであった。
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