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第57話
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扉が開き邸の中から叔父であるショーン・コバックが現れた。
「お待ちしていました。マオリエッタ王子、ガロエモ様、…そちらの女性は?」
「ああ、その話は中で話をするよ。一緒にいいだろうか?」
「もちろんです。どうぞ」
応接室に通され、キレイなカップに温かい紅茶が注がれた。
「コバック男爵、急な訪問の受け入れを感謝する」
「いえ、お急ぎのようでしたし、先日の王妃様のお茶会ではわたくしどもの茶葉を気に入ってくださったと伺いましたので何か大きな催し物があるのではないかと思われたのですが…」
にこやかにショーン・コバックはマオを見た。
「残念だが私の見合いの話は流れてしまったのだよ」
「おや、そうでしたか。王妃様は大変喜んでいらっしゃいましたので近く婚約パーティーでもあるのかと思いました」
「コバック男爵とはいずれ、これから茶葉での経済戦略の話でもしたかったのだけどね。今日はその話ではないんだ」
「ほう…」
「君の姪の話だ」
「なぜ、マオリエッタ王子が私の姪の事を御存じで?」
コバック男爵は少し驚いた顔を見せた。
「ちょっと小耳に挟んだのだ」
「そうですか。姪の件でこちらに籍を置くことは叶わなくなりました。その件ですかな?」
「どういう事だ?」
「え?その件ではない?…実はモグリベルとは籍の事で長年膠着《こうちゃく》状態であったのです。こちらに籍を置くことが出来れば無駄な税を支払わなくてよくなり資金面でも助かるのですが今回の件でモグリベルから正式に籍を移す事が困難になりました。売国奴だそうです。参りました」
「…なるほど、モグリベルはその姪を探しているんだろう?姪を見つけモグリベルに差し出す事を条件に籍を移したらいいのでは?」
「ハハ、良い考えですな。ですが姪は死んでいる事でしょう。可哀そうですが魔の森ですよ?とても生きているとは思えませんよ」
「探したのか?コバック男爵がこちらに籍を置いてくれれば王家としても心強い。協力は惜しまないよ」
「あ、ありがとうございます。しかし…難しいかと…」
「なぜだ?」
「そ、それよりも王妃様が茶葉を気に入って頂いている事に感謝しています。王妃様も飲まれる紅茶として他の貴族の方々にも知って頂けて売れ行きも良くなりました。これからもご贔屓にして頂ければ嬉しく思います。そしていずれはモグリベルに王家から口沿いをお願いしたいなどと思っております。いえ、いずれの話ですが」
「そうか…もういいんじゃないのかな」
マオは横で大人しく話を聞いていたリアに向かって言った。
「はい」
「え?」
リアは黒のショールを叔父の前でゆっくりと取った。そしてコバック男爵の前に現れたのはピンクプラチナと呼ばれるめずらしい髪色をした姪のアリアナの姿だった。
「え?どういう…ピンクの…まさかアリアナかい?ああ姉さんによく似ている…」
「叔父様…」
コバック男爵は驚いたともに大人になったアリアナを抱きしめた。アリアナもまた必死にアリアナの存在を隠そうとしてくれた叔父に感謝し涙した。
「よく生きていたね。辛かった事だろう」
「ご迷惑を掛けてごめんなさい」
「アリアナのせいではないよ」
「しかし、どうしてマオリエッタ王子と一緒に?それに先ほどまで何だか地味な女性だとばかり」
「王子とは王都で別件で助けて頂いて事情をお話したら叔父様の所へ付き添うと言って頂けて」
「しかし不安もあったようで、コバック男爵の本音を聞きただそうと姿を変えて近づいたってわけ。あっ俺から言い出したから怒んないでね」
マオは茶目っ気たっぷりに言った。
「ハハ、そうでしたか。信用がないのだな。まぁ仕方ないか。アリアナと会ったのはまだ5歳くらいの時だったものな。よく無事だった」
「叔父様」
遠い存在だった叔父が近い存在になり、久しぶりに心から安堵したリアだった。
「お待ちしていました。マオリエッタ王子、ガロエモ様、…そちらの女性は?」
「ああ、その話は中で話をするよ。一緒にいいだろうか?」
「もちろんです。どうぞ」
応接室に通され、キレイなカップに温かい紅茶が注がれた。
「コバック男爵、急な訪問の受け入れを感謝する」
「いえ、お急ぎのようでしたし、先日の王妃様のお茶会ではわたくしどもの茶葉を気に入ってくださったと伺いましたので何か大きな催し物があるのではないかと思われたのですが…」
にこやかにショーン・コバックはマオを見た。
「残念だが私の見合いの話は流れてしまったのだよ」
「おや、そうでしたか。王妃様は大変喜んでいらっしゃいましたので近く婚約パーティーでもあるのかと思いました」
「コバック男爵とはいずれ、これから茶葉での経済戦略の話でもしたかったのだけどね。今日はその話ではないんだ」
「ほう…」
「君の姪の話だ」
「なぜ、マオリエッタ王子が私の姪の事を御存じで?」
コバック男爵は少し驚いた顔を見せた。
「ちょっと小耳に挟んだのだ」
「そうですか。姪の件でこちらに籍を置くことは叶わなくなりました。その件ですかな?」
「どういう事だ?」
「え?その件ではない?…実はモグリベルとは籍の事で長年膠着《こうちゃく》状態であったのです。こちらに籍を置くことが出来れば無駄な税を支払わなくてよくなり資金面でも助かるのですが今回の件でモグリベルから正式に籍を移す事が困難になりました。売国奴だそうです。参りました」
「…なるほど、モグリベルはその姪を探しているんだろう?姪を見つけモグリベルに差し出す事を条件に籍を移したらいいのでは?」
「ハハ、良い考えですな。ですが姪は死んでいる事でしょう。可哀そうですが魔の森ですよ?とても生きているとは思えませんよ」
「探したのか?コバック男爵がこちらに籍を置いてくれれば王家としても心強い。協力は惜しまないよ」
「あ、ありがとうございます。しかし…難しいかと…」
「なぜだ?」
「そ、それよりも王妃様が茶葉を気に入って頂いている事に感謝しています。王妃様も飲まれる紅茶として他の貴族の方々にも知って頂けて売れ行きも良くなりました。これからもご贔屓にして頂ければ嬉しく思います。そしていずれはモグリベルに王家から口沿いをお願いしたいなどと思っております。いえ、いずれの話ですが」
「そうか…もういいんじゃないのかな」
マオは横で大人しく話を聞いていたリアに向かって言った。
「はい」
「え?」
リアは黒のショールを叔父の前でゆっくりと取った。そしてコバック男爵の前に現れたのはピンクプラチナと呼ばれるめずらしい髪色をした姪のアリアナの姿だった。
「え?どういう…ピンクの…まさかアリアナかい?ああ姉さんによく似ている…」
「叔父様…」
コバック男爵は驚いたともに大人になったアリアナを抱きしめた。アリアナもまた必死にアリアナの存在を隠そうとしてくれた叔父に感謝し涙した。
「よく生きていたね。辛かった事だろう」
「ご迷惑を掛けてごめんなさい」
「アリアナのせいではないよ」
「しかし、どうしてマオリエッタ王子と一緒に?それに先ほどまで何だか地味な女性だとばかり」
「王子とは王都で別件で助けて頂いて事情をお話したら叔父様の所へ付き添うと言って頂けて」
「しかし不安もあったようで、コバック男爵の本音を聞きただそうと姿を変えて近づいたってわけ。あっ俺から言い出したから怒んないでね」
マオは茶目っ気たっぷりに言った。
「ハハ、そうでしたか。信用がないのだな。まぁ仕方ないか。アリアナと会ったのはまだ5歳くらいの時だったものな。よく無事だった」
「叔父様」
遠い存在だった叔父が近い存在になり、久しぶりに心から安堵したリアだった。
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