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治療薬の効果と悪意の夜会3
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ちらりとシアンを見るとちょうど店員と話し込んでいるようで、こちらに背を向けていた。
ルースレアはすぐに自分についていてくれた店員に話しかける。
「この、イヤーカフスを、一つ、欲しい、です」
途切れ途切れのルースレアの言葉に嫌な顔一つせず、店員が頷いてくれた。それからちらりとシアンを見て、小さな声で話しかけられる。
「もしかして贈り物ですか?」
店員には筒抜けだったようだ。何度も頷くと、にこやかな笑みを浮かべてシアンに気づかれないように包装し手渡してくれる。
代金は後でミューラから別に受け取ってもらうように調整してもらった。
「ルースレア? なにか気になるものがあったの?」
ドキン、と心臓が跳ねる。こちらに近づいてきたシアンは忙しなく動く茶色の耳と尻尾を見て首を傾げた。
とっさに後ろに隠したものには気づいてないらしい。
「……だい、じょうぶ」
「そう……? そろそろ行こうか」
「は、い」
なんとか誤魔化して、ルースレアはシアンと共に店を出る。見送りに店外まで出てきた先ほどの店員と目が合うと、朗らかな笑みを浮かべられて恥ずかしくなった。
馬車に乗り込むとふう、と小さく息を吐き出す。
「疲れたのかな。どこかで休んでいく?」
心配そうにこちらを見るシアンに首を振り、問題ないと伝える。
「そう……じゃあ、その隠しているのもがなにか教えてくれる……?」
びくっと体が震える。どうやら気づいていたらしい。
しゅんと耳を垂らしながら、ルースレアは手に持っていたものを差し出した。
「ミューラへの贈り物?」
違う、と首を横に振る。そしてシアンの手を取るとその上に贈り物を乗せた。
「僕、に?」
「は、い」
シアンはまさか自分へのものだと思っていなかったらしい。驚いた様子で贈り物をじっと見ている。
「待ち切れないから、開けるね」
「気に入って、もらえると、いいです、が」
「イヤーカフス?」
小さな小箱をぱかりと開け、中身を見たシアンが呟く。それからイヤーカフスを手にとって、ルースレアの方へ差し出した。
気に入らなかったのかと慌てると、シアンが蕩けるような笑みを浮かべる。
「ルースレアがつけて」
低く甘えるような声で囁かれる。そんなシアンにじわじわと頬に熱が集まるのを感じながら、ルースレアは彼の左の猫耳に慎重に取り付けた。
耳に伸ばしていた手を下げると、すぐ近くに青と金の瞳がある。
「これ、ラピスラズリだね。……もしかして僕の瞳を連想したの?」
「……は、はい」
「そっか。……ありがとう。とても嬉しい」
シアンの尻尾がご機嫌に揺れる。すぐ近くで甘く話す彼にルースレアは頭がクラクラしそうだ。
結婚して慣れてきた、はずだったのに。まだこんなにも心臓がドキドキする。
「大切にするね、ルースレア」
ちゅっと軽いリップ音と共に唇が触れ合う。そろそろ限界を迎えて目を回しそうなっていると、すっと温もりが離れていった。
「……ここが屋敷じゃなくて残念だったな」
ぼそりと呟いたシアンの言葉は顔を真っ赤にさせているルースレアには届かなかったのだった。
◇
贈ったイヤーカフスをつけるシアンに見慣れた頃には、ルースレアは問題なく話すことができるようになっていた。
「……うん。数値も安定してますし、声帯の方も問題ありません。ここまでよく努力しましたね、奥様」
「ありがとうございます、先生」
「本当は……完治させることができればよかったのですが……」
ルースレアが声を出せるのはファルが調薬した丸薬を毎日欠かさず飲んでいるからだ。それをやめてしまえばすぐに声が出なくなる。
「……先生、完治は難しくても、こうして普通の獣人のように話せる。それだけで多くの病で苦しむ人たちが救われます」
「ありがとうございます。奥様は最近、社交を頑張っておられるとか」
「はい。話せるようになってからは、大分好意的になってくださる方が増えました」
「奥様のおかげで私の方にも病の相談に来る人が増えて、嬉しく思います。研究の成果が広く知れ渡ったおかげですね」
夜会にお茶会とルースレアは最近は招待を受けたものにはほとんど参加している。そのおかげで獣族返りだった彼女の回復ぶりが噂になり、国中に広がった。
今まで虐げられ、居場所の無かった者たちが噂を聞いてファルのところに訪れるようになっているのだ。
そしてこれはルナシークの政策が上手く行っている証拠でもあり、褒美にと多くの研究資金がシアンのもとに舞い込んでいる。
「これからは人材育成にも目を向けなければなりませんね。調薬も日月草の育成も現状のままだと追いつかなくなりますから」
「シアン様がルナシーク殿下にいただいた研究資金を施設の拡張と人材育成に回すとおっしゃっていました」
「そうですか! ……やっと、やっと……ここまで来た」
不意にファルが涙ぐみ、ルースレアはどうしたのかと慌てた。
ルースレアはすぐに自分についていてくれた店員に話しかける。
「この、イヤーカフスを、一つ、欲しい、です」
途切れ途切れのルースレアの言葉に嫌な顔一つせず、店員が頷いてくれた。それからちらりとシアンを見て、小さな声で話しかけられる。
「もしかして贈り物ですか?」
店員には筒抜けだったようだ。何度も頷くと、にこやかな笑みを浮かべてシアンに気づかれないように包装し手渡してくれる。
代金は後でミューラから別に受け取ってもらうように調整してもらった。
「ルースレア? なにか気になるものがあったの?」
ドキン、と心臓が跳ねる。こちらに近づいてきたシアンは忙しなく動く茶色の耳と尻尾を見て首を傾げた。
とっさに後ろに隠したものには気づいてないらしい。
「……だい、じょうぶ」
「そう……? そろそろ行こうか」
「は、い」
なんとか誤魔化して、ルースレアはシアンと共に店を出る。見送りに店外まで出てきた先ほどの店員と目が合うと、朗らかな笑みを浮かべられて恥ずかしくなった。
馬車に乗り込むとふう、と小さく息を吐き出す。
「疲れたのかな。どこかで休んでいく?」
心配そうにこちらを見るシアンに首を振り、問題ないと伝える。
「そう……じゃあ、その隠しているのもがなにか教えてくれる……?」
びくっと体が震える。どうやら気づいていたらしい。
しゅんと耳を垂らしながら、ルースレアは手に持っていたものを差し出した。
「ミューラへの贈り物?」
違う、と首を横に振る。そしてシアンの手を取るとその上に贈り物を乗せた。
「僕、に?」
「は、い」
シアンはまさか自分へのものだと思っていなかったらしい。驚いた様子で贈り物をじっと見ている。
「待ち切れないから、開けるね」
「気に入って、もらえると、いいです、が」
「イヤーカフス?」
小さな小箱をぱかりと開け、中身を見たシアンが呟く。それからイヤーカフスを手にとって、ルースレアの方へ差し出した。
気に入らなかったのかと慌てると、シアンが蕩けるような笑みを浮かべる。
「ルースレアがつけて」
低く甘えるような声で囁かれる。そんなシアンにじわじわと頬に熱が集まるのを感じながら、ルースレアは彼の左の猫耳に慎重に取り付けた。
耳に伸ばしていた手を下げると、すぐ近くに青と金の瞳がある。
「これ、ラピスラズリだね。……もしかして僕の瞳を連想したの?」
「……は、はい」
「そっか。……ありがとう。とても嬉しい」
シアンの尻尾がご機嫌に揺れる。すぐ近くで甘く話す彼にルースレアは頭がクラクラしそうだ。
結婚して慣れてきた、はずだったのに。まだこんなにも心臓がドキドキする。
「大切にするね、ルースレア」
ちゅっと軽いリップ音と共に唇が触れ合う。そろそろ限界を迎えて目を回しそうなっていると、すっと温もりが離れていった。
「……ここが屋敷じゃなくて残念だったな」
ぼそりと呟いたシアンの言葉は顔を真っ赤にさせているルースレアには届かなかったのだった。
◇
贈ったイヤーカフスをつけるシアンに見慣れた頃には、ルースレアは問題なく話すことができるようになっていた。
「……うん。数値も安定してますし、声帯の方も問題ありません。ここまでよく努力しましたね、奥様」
「ありがとうございます、先生」
「本当は……完治させることができればよかったのですが……」
ルースレアが声を出せるのはファルが調薬した丸薬を毎日欠かさず飲んでいるからだ。それをやめてしまえばすぐに声が出なくなる。
「……先生、完治は難しくても、こうして普通の獣人のように話せる。それだけで多くの病で苦しむ人たちが救われます」
「ありがとうございます。奥様は最近、社交を頑張っておられるとか」
「はい。話せるようになってからは、大分好意的になってくださる方が増えました」
「奥様のおかげで私の方にも病の相談に来る人が増えて、嬉しく思います。研究の成果が広く知れ渡ったおかげですね」
夜会にお茶会とルースレアは最近は招待を受けたものにはほとんど参加している。そのおかげで獣族返りだった彼女の回復ぶりが噂になり、国中に広がった。
今まで虐げられ、居場所の無かった者たちが噂を聞いてファルのところに訪れるようになっているのだ。
そしてこれはルナシークの政策が上手く行っている証拠でもあり、褒美にと多くの研究資金がシアンのもとに舞い込んでいる。
「これからは人材育成にも目を向けなければなりませんね。調薬も日月草の育成も現状のままだと追いつかなくなりますから」
「シアン様がルナシーク殿下にいただいた研究資金を施設の拡張と人材育成に回すとおっしゃっていました」
「そうですか! ……やっと、やっと……ここまで来た」
不意にファルが涙ぐみ、ルースレアはどうしたのかと慌てた。
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