あなたがそう望んだから

まる

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「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」


思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。

好き者で地位や金があり容姿の優れた者に媚びているとの話でしたわね。


「アンタが転生者ってわかってんのよ、こっちは!姑息にもエドに媚び売ってるけど、最後に結ばれるのはアタシなのよ。ア・タ・シ!どうあがいたってそう決まっているんだからね。だってアタシがこの世界のヒロインなんですもの」

「何を先程からおっしゃっているの?」

「なにとぼけてんのよ。アンタがシナリオ通りに動かないからちっとも攻略が進まないじゃない!ちゃんとシナリオ通りに嫌がらせしてよね!いい!?分かったわね!」


言いたい事だけ言うとドスドスと足を踏み鳴らし立ち去った。
優雅さの欠片もない。なんて下品な娘なんでしょう。

彼女はわかっているのかしら?
学園内ではどうしても貴族のルール通りでは不都合が出てしまう。だからこそ学園内では平等であると言われているのよ。

そうでなければわたくし達の様な高位の者に爵位が下の教師が、同級生が困ってしまうから。最低限の礼儀を重んじたその上で許されている『平等』なのよ。

それは男爵家の庶子が公爵家のわたくしにあの様に無礼を働いていいと言うわけではないわ。

それにシナリオだのなんだのとわけのわからない事を口にして気でも違えているのかしら。


「マーサ、部屋に戻るわ」

「はい、お嬢様」


部屋に戻るとマーサに紅茶を出してもらって一息入れた。


「マーサ」

「はい、お嬢様」


編入して1週間も経たずに高位貴族の子息達の側をウロつき出したとの話を聞いていた。

殿下が入学され、そして程なく娘が編入しての先の行動。
マーサに頼みあの庶子の周辺調査をさせていた。

殿下の周りで興味を引く為か、態々近くで転んで見せたり、手作り菓子の様なものを渡してみたり、挙句には木に登っていた様で木から飛び降りてみたりとわたくしには考えもつかない様な方法で近づいたみたいだ。


「庶子とはいえ仮にも貴族の娘とは思えない行動ばかりね」


下位の伯爵、子爵、男爵の子息と平民と。確実に肉体関係があるのは4人、それ以外では両手で足りない程の男性とお付き合いがある…と。
皆下位貴族の次男、三男ばかりね。ダメね、これじゃ使えないわ。


「マーサ、わたくしの名前は伏せてあの娘にサフランでも送っておいて頂戴」

「はい、お嬢様」


さてと彼女の望みを叶えて差し上げましょうか。





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