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友人達と談笑しながら歩いているとあの庶子の娘が私の前で転んだ。わざとだと一目でわかる様な転び方であまりの大根ぶりに失笑がこぼれる。
「ひっどぉい!アデ…」
「きゃあ!」
あの娘が地面にへたり込み、何かを言い終える前に私も悲鳴を上げて倒れ込んだ。
「アデライス様!」
「貴女何を考えているの!」
「お怪我はございませんか!?」
側近の婚約者達から話は聞いていたので同じ事をするのだろうと思っていた。
だから彼女が今までしてきた事をして、転ばされた様に見せたのだけどちょっと品がなさすぎたわね。
周りのお友達も庶子の娘が何かしたかの様に騒いでくれる。
「これはどうしたんだ?アディー大丈夫かい?」
「申し訳ありません、お見苦しい所を…」
すっと私の手を取り立たせてくれる。
「あ、エド様ぁ。わ」
「君も大丈夫かな?気をつけて歩かないとね。それからね?私は君に名前を呼ぶ事を許していないよ」
顔は笑顔だが冷めた目で娘を見下ろしている。
その事に気がつかないのか娘は頬を染めて「痛くて立てない」と瞳を潤ませて殿下に手を差し出している。
つっと視線を私に戻すと取っていた手の甲に軽く唇を当て、優雅に微笑んだ。
「気をつけて、私の大切なアディー。もしうっかりでも傷がついたらどうするんだい?慎重に行動しなければいけないよ?」
「はい、殿下。ありがとうございます」
「ふふ、君にはエディーって呼んでって言ってるだろう?それじゃあね」
また軽く甲にキスを一つ落として、男爵の庶子には目もくれず、側近候補を引き連れその場を去って行った。
側近候補達も今まで何かと声をかけたりしていたのに、まるで娘がいないかの様に振る舞っている。
娘は手を伸ばしたまま、未だへたり込んでいたが徐々に顔を歪ませると、「何で?花を貰ったのに」「おかしい。シナリオだと…」とブツブツ呟いていた。
「皆様、先程はありがとうございます。よろしければこのままアフタヌーンティーでも如何かしら」
「まあ、素敵ですわ」
「嬉しいですわ、是非」
そのまま皆を連れて私個人で使えるサロンへと移動した。
殿下のあの娘への態度、私に向けた言葉。
あちら側でも男爵、庶子に対して何かしらの懸念があったが調査が終わり、不要だと判断されたという事かしら。
私には殿下の婚約者としてあの娘をどうにかしろと。うっかり醜聞など流す事なくという事かしら。
皆とお茶を楽しんだ後、すぐ部屋に戻りもう一度調査報告書に目を通した。
糖蜜菓子を好んで食べている、下位貴族が好んで飲んでいるお茶は…あの茶葉ね。
「マーサ。アネモネとできればオダマキをメインにした花束と、花乙女の匂い袋を私の名は伏せて送っておいて頂戴」
「はい、お嬢様」
仕方のない事よね。
この国では階級を重じているのよ。とてもね。
それを少し前まで市井で育ったからとはいえ、身の程を弁えない私を含めた上位貴族の令嬢達に対する振る舞い。
礼儀も道理も無視した殿下をはじめとする名だたる子息達に不快と感じさせたあからさまな媚び。
貴女をそのままにしておく事はこの貴族社会を軽んじている事なの。
ケチな小悪党の男爵家の庶子が学園内で見逃される範疇を超えてしまったのよ。
殿下もだけど私でも使い道がないので本来の場所に退場していただきましょう。
ちゃんと警告までして差し上げたのに、もしかしてわかっていなかったのかしら。
「ひっどぉい!アデ…」
「きゃあ!」
あの娘が地面にへたり込み、何かを言い終える前に私も悲鳴を上げて倒れ込んだ。
「アデライス様!」
「貴女何を考えているの!」
「お怪我はございませんか!?」
側近の婚約者達から話は聞いていたので同じ事をするのだろうと思っていた。
だから彼女が今までしてきた事をして、転ばされた様に見せたのだけどちょっと品がなさすぎたわね。
周りのお友達も庶子の娘が何かしたかの様に騒いでくれる。
「これはどうしたんだ?アディー大丈夫かい?」
「申し訳ありません、お見苦しい所を…」
すっと私の手を取り立たせてくれる。
「あ、エド様ぁ。わ」
「君も大丈夫かな?気をつけて歩かないとね。それからね?私は君に名前を呼ぶ事を許していないよ」
顔は笑顔だが冷めた目で娘を見下ろしている。
その事に気がつかないのか娘は頬を染めて「痛くて立てない」と瞳を潤ませて殿下に手を差し出している。
つっと視線を私に戻すと取っていた手の甲に軽く唇を当て、優雅に微笑んだ。
「気をつけて、私の大切なアディー。もしうっかりでも傷がついたらどうするんだい?慎重に行動しなければいけないよ?」
「はい、殿下。ありがとうございます」
「ふふ、君にはエディーって呼んでって言ってるだろう?それじゃあね」
また軽く甲にキスを一つ落として、男爵の庶子には目もくれず、側近候補を引き連れその場を去って行った。
側近候補達も今まで何かと声をかけたりしていたのに、まるで娘がいないかの様に振る舞っている。
娘は手を伸ばしたまま、未だへたり込んでいたが徐々に顔を歪ませると、「何で?花を貰ったのに」「おかしい。シナリオだと…」とブツブツ呟いていた。
「皆様、先程はありがとうございます。よろしければこのままアフタヌーンティーでも如何かしら」
「まあ、素敵ですわ」
「嬉しいですわ、是非」
そのまま皆を連れて私個人で使えるサロンへと移動した。
殿下のあの娘への態度、私に向けた言葉。
あちら側でも男爵、庶子に対して何かしらの懸念があったが調査が終わり、不要だと判断されたという事かしら。
私には殿下の婚約者としてあの娘をどうにかしろと。うっかり醜聞など流す事なくという事かしら。
皆とお茶を楽しんだ後、すぐ部屋に戻りもう一度調査報告書に目を通した。
糖蜜菓子を好んで食べている、下位貴族が好んで飲んでいるお茶は…あの茶葉ね。
「マーサ。アネモネとできればオダマキをメインにした花束と、花乙女の匂い袋を私の名は伏せて送っておいて頂戴」
「はい、お嬢様」
仕方のない事よね。
この国では階級を重じているのよ。とてもね。
それを少し前まで市井で育ったからとはいえ、身の程を弁えない私を含めた上位貴族の令嬢達に対する振る舞い。
礼儀も道理も無視した殿下をはじめとする名だたる子息達に不快と感じさせたあからさまな媚び。
貴女をそのままにしておく事はこの貴族社会を軽んじている事なの。
ケチな小悪党の男爵家の庶子が学園内で見逃される範疇を超えてしまったのよ。
殿下もだけど私でも使い道がないので本来の場所に退場していただきましょう。
ちゃんと警告までして差し上げたのに、もしかしてわかっていなかったのかしら。
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