あなたがそう望んだから

まる

文字の大きさ
6 / 9

6

しおりを挟む
「えーちょっともう最悪なんですけど」


身支度を整える為鏡を覗き込むと何だか顔が浮腫んでる。

太ったとか?ううん。ウエストは別に変わってないし、何だろう水分取り過ぎたかな?
こんな事今までなかったのに変なの。


「え、ちょっとやだ。ニキビできてるじゃん。何これー」


脂っこいもの食べ過ぎたかな。お肉系は少し控えよ。


「乙女の匂い袋持って…と」


王子早く告白してくれないかな。早く確定させちゃいたい。
親密度リセットされたっぽいから、他の攻略者もう一度やり直さなくちゃいけないんだよね。

推しメンは騎士だし体育会系でしょ、夜すごそうだから絶対押さえておきたいのに。


「あ!」

「え?」


ぼんやりとしていたら足元に転がってきた何かを思いっきり踏んでしまったみたい。
ぱきゃっと壊れる音がする。


「あ…お揃いのペンが…」

「っ!」


なにその被害者面、あんたが悪いんでしょうが!


「ごめんなさい、私が悪かったんです」

「大丈夫?また今度お揃いの物を選びに行きましょう。…どうも申し訳ありませんでした。失礼します」

「え、ちょ」


友人らしきモブがアタシを軽く睨んで手を引き去って行く。
はっとすると、女のモブだけでなく、男のモブまでこっちを見てヒソヒソする。

何でアタシが悪役令嬢見たいな扱いされてんのよ、ヒロインはアタシなのよ!
ふん、まぁいいわ。王子と結婚したらこいつらに罰与えてやるんだから。

腕をボリボリ掻き毟りながら中庭にあるガゼボへ向かう。
中庭は王子にエンカウントする確率の高い場所。と。


「エド様ぁ~。皆様もご一緒でとーっても楽しそう!アタシも一緒にいいですかぁ」


あ、推しメンとクーデレも一緒にいる。ちょうど良いかも。最近ちっとも話せてなかったし久しぶりにゆっくり相手してあげよ。

そう思って手を大きく振って王子の元に駆け寄った。


「ああ、えっと名前は何だったかな」


は?


「ボビニオン男爵家の令嬢です、殿下」

「ああそうだったね。ボビニオン嬢いいかな。私は同じ事を何度も言う事は好まない。私は貴女に名を呼ぶ事は許していない。わかったね?また3度目がないようにしっかりと覚えておいてね」

「は、はい…」


優しげなのに…すごく怖い。
匂い袋をギュッと握りしめ頷く事しか出来なかった。

何で?だってこれくれたんじゃないの?もう告白も秒読みなんでしょ?

王子はアタシの握りしめた匂い袋に目を向けると、くすりとしてそのまま立ち去ってしまった。

やっぱり直接渡されなかったからなのかも。
あのお邪魔キャラがバグってるからシナリオがおかしいんじゃない。やっぱり文句言ってやらなくちゃ。

それにしても痒い。


しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

因果応報以上の罰を

下菊みこと
ファンタジー
ざまぁというか行き過ぎた報復があります、ご注意下さい。 どこを取っても救いのない話。 ご都合主義の…バッドエンド?ビターエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

さよなら聖女様

やなぎ怜
ファンタジー
聖女さまは「かわいそうな死にかた」をしたので神様から「転生特典」を貰ったらしい。真偽のほどは定かではないものの、事実として聖女さまはだれからも愛される存在。私の幼馴染も、義弟も――婚約者も、みんな聖女さまを愛している。けれども私はどうしても聖女さまを愛せない。そんなわたしの本音を見透かしているのか、聖女さまは私にはとても冷淡だ。でもそんな聖女さまの態度をみんなは当たり前のものとして受け入れている。……ただひとり、聖騎士さまを除いて。 ※あっさり展開し、さくっと終わります。 ※他投稿サイトにも掲載。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

この婚姻は誰のため?

ひろか
恋愛
「オレがなんのためにアンシェルと結婚したと思ってるんだ!」 その言葉で、この婚姻の意味を知った。 告げた愛も、全て、別の人のためだったことを。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

処理中です...