あなたがそう望んだから

まる

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視界が霞み、苦しい。全身が相変わらず痒い。

あの男共に引きづられてお腹に鈍い痛みを感じた後、気がついたら王都にあるアタシの父親だと言った男爵の玄関辺りに横たわっていた。

せめてベットに運びなさいよ!

そう言ってやりたかったのに呻き声しか出ない。

あのおっさんとおばさんはギャーギャー騒いでいて煩いし。
それよりもアタシの心配しなさいよ。可哀想だと思わないわけ?

耳の中からゴーゴーどくどく音がして話し声も良く聞き取れない。


「~~こい!」


痛っ!乱暴に扱わないでよ、アタシこの家のお嬢様よ?
え、待ってなんか家から遠ざかってない?どこ連れて行く気よ。いくらアタシが可愛いからってまさかおっさん達の前で拐うつもりなの!?

ちょっとお腹圧迫しないで苦……し、い……………。








髪をぐっと引っ張られる感覚で目が覚める。

いったい。なんなの?此処どこなのよ。何でベットじゃないの?
それになんか臭い…。


「げ。コイツ病い持ちか?せっかくタダで楽しめると思ったのによお」

「…おいこいつ全身ぐちゃぐちゃじゃねぇか?もしかして娼婦病でここに捨てられたのかもしれねぇ」

「はぁ!?やべぇ、早く洗わねえとこっちまでうつっちまうぞ」


髪を掴まれている感覚がなくなり、そのまま強く顔を地面にうった。

先程より幾分かマシになったとはいえ、お腹は鈍く痛いし、体は痒いし、重いしで最悪。
それにここどこなのよ。

さっきまで学園で兵士に引きづられてたと思ったら、おっさんの家の前にいて、今は臭くて汚い掘立小屋みたいなボロボロの建物ばかりの場所にいるし信じられない。

普通こんな可愛いアタシが具合悪くしてたら手厚く看病するでしょ?
アタシヒロインよ?この世界で幸せを約束された存在の筈でしょ、それが何でこんな臭くて汚い場所で寝てるわけよ。

ゲームのヒロインはこんな扱いされたなんて話なかった!こんなストーリーなんて知らない!

全部ぜーーーーーーーんぶあの女が、ヒロインの前に立ち塞がるはずの婚約者という立ち位置の悪役令嬢共が、アイツらがちゃんとシナリオ通りに動かないからアタシがこんな辛い目にあってるのよ!

そうだ。100%攻略出来てるはずの王子様は?王子様ならアタシを探して迎えに来てくれる。きっとそうに違いないわ!

王子様のヒロインはここにいるの。早く、お願い早く迎えに来てー…。



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