AFTER DEAD「最後の帰路」

ハンドアイランド

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終わりのための旅

谷風の話

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「取ってないですね!」

谷風が頭をガシガシ掻きながら、少し照れたように笑った。

「そもそも、連絡機器をかなり前に失くしまして!」

その様子に俺は内心、安堵した。
取り敢えず、あの男との繋がりはなさそうだ。

「我々、自衛隊は日本を守れませんでした」

前を向いたまま、まっすぐに言う。

「私は、皆を守るために自衛隊に入りました」

「それなのにーー」

言葉が続かない谷風。

急に切り替えたように、笑顔に変わる谷風の表情。

「せめて、生き残っている方々の助けになれればと思っています!」

少し間が空いて、付け加える。

「じゃないと、
  犠牲になった娘に、合わせる顔がないのでね、、」

やはりーー。
彼の娘は、もうこの世にはいない。

俺は何も言えず、前を見たまま歩いた。
少女も状況を察したのか、沈んでいる。
もしかしたら初めての友達ができるという、淡い期待が消えたからだろう。

重い雰囲気をなんとかしようと、俺は再度話題を変えた。

「谷風さんみたいな方が仲間だと、安心できます」

そう言って、軽く頭を下げる。
もちろん、この気持ちに嘘はない。

「ええ!
  お任せください!!」

谷風は即答する。
腹の底からの大声。
街に反響する。

場を盛り上げるつもりで言ったが、
その声量に、俺は周囲を見渡す。
武装集団に「ここにいます」と知らせているようなものだからだ。

谷風はまったく気にせず、誇らしげだ。

その後は、他愛ない話が続いた。
気づけば、住処が見えていた。


その日の夕食は、かなり賑やかだった。
二人も人数が増えたので、会話が永遠に続く。

食後は、役割分担をして片付けをする。
その後は順番にシャワーを浴びた。
すぐに寝室に向かう者、リビングで談笑する者と、まるでシェアハウスのようだった。

この住処に寝室は二つしかない。
上泉夫妻と少女。
俺と林と谷風。
このメンバーで部屋割りをした。

今夜の見張りは、林が担当だ。
といっても、リビングで横になり窓の外を監視するという簡易的なものだ。

俺が寝室で横になっていると、谷風が入ってきた。
その巨体が横になると、少し窮屈に感じる。

谷風の存在が気になって、なかなか寝付けない。

それでも、しばらくすると意識がゆっくりと沈んでいく。
瞼が重くなってきた。

その時、

「まだ起きてますか?」

突然、谷風の低い声が聞こえた。

寝かけていた分、急な声に驚く。

「あ、はい」

「ちょうど寝かけてました、、」

そう言って、小さく笑う。

「そうでしたか、申し訳ない」

谷風の声量は、昼間よりずっと抑えられていた。

「どうしました?」

俺が聞くと、少しの間があった。

「改めて、今日は申し訳なかったです」

昼間の誤解の件だ。

「いえいえ」

「谷風さんも、少女を助けようと思ってのことでしょうし」

責める気はない、というのが伝わるように軽い調子で答えた。


しばらくの沈黙が流れて、

「ちょっと、私の話に付き合ってくれませんか?」

その言葉で完全に目が覚める。

「ええ、どうしました?」

布団の中で体勢を変える。

「誰かに話しを聞いてもらえるなんて、久々でして、、」

ーーああ。

俺は察した。
多分、娘さんの話だ。

「察しの通りですが、私の娘はもう、亡くなってます」

返す言葉が見つからず、天井を見つめていた。

谷風が続ける。

「娘はね、
  私が、殺したようなものなんですよ」

ーーん?
一瞬、意味が分からなかった。
だが、遅れて理解が追いつく。

背中に冷たいものを感じた。
余計に何も言えなくなった。

「急に驚かせて申し訳ない」

谷風が、申し訳なさそうに言った。

多分、簡単には語れない事情があるのだろう。
俺は黙って、ただ続きを待つことにした。
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