AFTER DEAD「最後の帰路」

ハンドアイランド

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合わさるピースと、欠けるピース

辛辣な言葉

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時間が、止まった。
誰も動けない。

谷風の腹に、ナイフが突き刺さっている。

それはまるで、ドラマや映画でしか見たことのない光景。

切腹だ。

「ぐっ、、、、、」

谷風の眉間に深いシワが刻まれる。

歯を食いしばり、顎の筋肉が浮き上がる。

腹に突き刺さったナイフを、両手で強く握っている。


小野川は理解が追いついていない表情をしている。

なぜだーー。
そんな表情だ。

少女は、目を見開いていた。
涙は止まっていた。

目の前の光景が少女の理解を、完全に超えていた。

あまりにも現実離れしている。


沈黙が続く。

「谷風くん、、、、」

不気味な男が、その沈黙を破った。

苦笑いを浮かべている。

「本当に、自分の腹を裂くとは、、、、」

驚きと、興奮が混ざった声だった。


「谷風、、、、。 なぜ、そこまでする、、、?」

小野川が呟く。

谷風が、ゆっくりと小野川の方を見た。

顔は青白く、呼吸は荒い。

だが、その目ははっきりと小野川を見ている。


「わかったんだ、、、」

谷風は呟いた。

「何がだ?」

小野川の眉間にシワが寄る。

苛立ちと困惑が混ざった表情。

「この現実世界に、、、」

「俺の目指すヒーローは、、、存在できない」


「、、、、は?」

小野川の表情が歪む。

理解できない。
そんな表情だった。

「俺が目指すヒーローは、、無欲で、、見返りを求めない存在だ」

「本心で誰かのためになりたいと思う存在」

「助けたとしても、、、見返りを求めない」

微かに、笑った。

「ただ助けたいから助ける、、。映画や漫画で描かれるようなヒーロー」

「正義の権化のような存在になりたかった」

小野川は、黙って聞いている。
ただ、聞いている。


「だが、、、、」

谷風の表情が、歪む。

「この世界で、、、そんな人間は存在しない」

「もちろん、誰かのための行動を、表面上はできる人間はいる」

「だが、、、、」

視線を落とし、刺さったナイフを見る。

「それは承認欲求、自己犠牲から快感を得るマゾヒズム」

ゆっくりと、吐き出した。

「これが、、、現実世界のヒーローの心理だ」

谷風の呼吸が乱れる。

苦しそうだ。


「何が言いたいんだ?!」

小野川が、耐えきれず怒鳴る。

「俺はヒーローになりたくて、自衛隊に入隊したんだ、小野川」

「それは、、、今も変わらない」

息を吸う。

「現実世界に存在するヒーローは、誰よりも強欲なんだ」

自嘲のように、小さく笑う。

「自分が求められる存在になるために、、
  他人には理解できないものを犠牲にする」

「それは、、、」

「時間かもしれない。人との関わりかもしれない。人生かもしれない」

そして、谷風の声がわずかに震えた。

「自分の娘の命かもしれない」

「自分自身の命かもしれない」


「俺は、、、英花の命を犠牲にしても、、、、」

「ヒーローになりたいと、、、強く思った」

視線は、どこか遠くを見ている。

「そして今、、、」

ゆっくりと少女を見る。

「自分の命と引き換えに、、、、少女を助けることができる」

「幼き命を助ける、、、ヒーローになれる」

「これで私は、この世界でヒーローになれる」


一瞬、目を閉じる。

「あの世で英花も、、、認めてくれる」

「だが、多分これは、ただの自己満足だ、、。でも、それでいい」


「理解できん、、、」

小野川が苦い顔をする。


「理解できなくて当然だ。ヒーローは誰よりも強欲なんだ」

「普通じゃない」


「ーー君さ」

軽い声が、その場の空気を切り裂いた。

ナイフをくるくると回しながら、退屈そうに谷風を見ている。

「難しい言葉を並べているけど、結局のところ、、、、」

「ただ死に場所を探しているだけだろう??」

ニヤリと笑う。

「最愛の娘を、自分の選択ミスで殺してしまった」

「もうこの世界で生きていくのが辛い」

「で、、、この場面だ」

谷風に近づく。

「最後にヒーローを演じて、楽になれる」

「そんなところだろう?」

谷風は俯いたまま、動かなかった。
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