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第六章 辺境の島に国を作る
55.王子、ダンジョンの秘密を知る
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『あのー、これよかったらどうぞ。ぼくが作ったお茶です』
「お気遣いありがとうございます」
湯浴みをしているところを覗いてしまった僕は急いで扉を閉めた。ボス部屋にはミノタウロスやエキドナ、有名な上位種の魔物がいると思っていた。
だが、実際に目の前にいたのは可愛い少女だった。
いや、あれは僕と同じものが付いていたから少年のはずだ。
見たこともない人種に僕は混乱していた。
湯浴みを終えた彼女はそんな僕に声をかけて、ボス部屋に案内してくれた。
全体的にピンクの物が多いそのボス部屋は本当にボス部屋なのかと思ってしまう。
部屋の中に置いてあるぬいぐるみも、令嬢にプレゼントしたら喜びそうな物ばかりだ。
『あんな姿を見せてしまってすみません』
「いえいえ、こちらもまさかボス部屋がこんな構造になっているとは知らずに――」
『いえいえ、こちらこそすみません。初めてダンジョンに遊びにくる方がいたので、念入りに準備をしていました』
ここは本当にダンジョンなのだろうか。
念入りに準備をしていたと言われたら、普通の男性なら如何わしいお店だと勘違いしてしまうような雰囲気だ。
どうやらダンジョンに入った時に聞こえた声も彼女が話していたらしい。
ちなみに男性か女性か聞いたところ。
"男の娘"と言っていた。
それなら彼女じゃなくて、彼と言った方が正しいのだろう。
僕はとりあえず淹れて頂いたお茶を一口飲むことにした。
「あっ、このお茶は紅茶とは違うんですね」
『これは東の国伝わる緑茶というものなんです』
彼は後ろにある本棚から本を取り出そうとしていた。
『んー♡ あと少しだけど届かない』
ああ、これは変なことをする男性も多いだろう。チラチラと中が見えそうで見えないスカートの感じが、男心をくすぐりそうだ。
見てはいけないと思ってもついつい目で追ってしまう。
『ここに載っていたので自分で作ってみたんです』
本を広げながら振り返ったため、急いで目を逸らす。
『あのー、本を見てもらっても』
「ああ、すみません」
本を見るとそこには緑茶の説明が書いてあった。どうやら発酵というものの違いでお茶の味が変わるらしい。
それでも今は緑茶しか作れないと言っていた。
それよりも気になっていたことがあった。
あっ、決してスカートの中身ではないぞ。
「自分で作ってみたってどういうことですか?」
『はい。ぼくダンジョンなので、自分で色々作ることができるんです』
僕が気になっていたのは、自分で作ってみたって言葉だった。
ダンジョンは見たものを自分で作ることができるらしい。その力を使って彼はこの部屋の中にある物やお茶を作ったと言っていた。
「トラップや魔物がいないのは――」
『誰も来ないのでいらないと思って用意してませんでした!』
どうやら彼は少し天然のようだ。誰も来ないならダンジョンや魔物、ドロップ品に力を使わずに、快適に過ごせるように重きを置いたらしい。
きっとこの力を貸してくれるなら明らかに生活の質が上がるのは確かだ。
このお茶一つ取っても、何もない僕達には嗜好品になるレベル。どうにか彼を村の住人にすることはできないのだろうか。
「その力を僕達に貸してもらえないか? よかったら村に来て欲しいんだ」
とりあえず、住人にならないかと声をかけることにした。
『それは無理なんです。ぼくはダンジョンなので、移動できないですし、魔力が足りないので力を貸すにもエネルギーの補給が必要です』
移動できないなら一緒に住むのは難しいようだ。
残念ながら住人にするのは無理でも、助けてもらうことはできるはずだ。
エネルギーの補給をどこからしているかが問題になる。
ダンジョンの仕組みから考えると、ダンジョン内で死んだ魔物や人間から取り込んでいるのだろうか。
魔物を吸収していたら、何度も魔物を生み出すサイクルができてもおかしくない。
それよりもダンジョンのボスだと思っていたら、彼自体がダンジョンの管理者らしい。
ダンジョンが人の形をしているってかなりの大発見になる。
いや、そもそもこの島自体がおかしいため、何が正常なのかもわからない。
「ひょっとしたら魔石でもエネルギー補給になるか?」
『あっ、魔石でも全然大丈夫ですよ!』
おお、お爺ちゃんの遺影がここで役に立ちそうだ。数日の遺影だったけど、彼にはお疲れ様と言いたい。
家の中を色鮮やかにしてくれてありがとう。
今度はちゃんと有効活用してあげるから安心してね。
たくさん彼から話を聞いていると、勢いよく扉を開ける音とあいつらの声が聞こえてきた。
『アドルはどこにいるんだ!』
『ワシらが勝手に行ってすまなかった!』
どうやらコボスケ達は僕を探していたようだ。前回も僕を森に置き去りにして、怒られたのを覚えていたのだろう。
僕と目が合うと瞳がうるうるとしていた。ずっと探していたのだろう。
コボスケ達は飛び込むように中に入ってきた。
「おすわり!」
ただ、僕は許したわけではないからな。
「お気遣いありがとうございます」
湯浴みをしているところを覗いてしまった僕は急いで扉を閉めた。ボス部屋にはミノタウロスやエキドナ、有名な上位種の魔物がいると思っていた。
だが、実際に目の前にいたのは可愛い少女だった。
いや、あれは僕と同じものが付いていたから少年のはずだ。
見たこともない人種に僕は混乱していた。
湯浴みを終えた彼女はそんな僕に声をかけて、ボス部屋に案内してくれた。
全体的にピンクの物が多いそのボス部屋は本当にボス部屋なのかと思ってしまう。
部屋の中に置いてあるぬいぐるみも、令嬢にプレゼントしたら喜びそうな物ばかりだ。
『あんな姿を見せてしまってすみません』
「いえいえ、こちらもまさかボス部屋がこんな構造になっているとは知らずに――」
『いえいえ、こちらこそすみません。初めてダンジョンに遊びにくる方がいたので、念入りに準備をしていました』
ここは本当にダンジョンなのだろうか。
念入りに準備をしていたと言われたら、普通の男性なら如何わしいお店だと勘違いしてしまうような雰囲気だ。
どうやらダンジョンに入った時に聞こえた声も彼女が話していたらしい。
ちなみに男性か女性か聞いたところ。
"男の娘"と言っていた。
それなら彼女じゃなくて、彼と言った方が正しいのだろう。
僕はとりあえず淹れて頂いたお茶を一口飲むことにした。
「あっ、このお茶は紅茶とは違うんですね」
『これは東の国伝わる緑茶というものなんです』
彼は後ろにある本棚から本を取り出そうとしていた。
『んー♡ あと少しだけど届かない』
ああ、これは変なことをする男性も多いだろう。チラチラと中が見えそうで見えないスカートの感じが、男心をくすぐりそうだ。
見てはいけないと思ってもついつい目で追ってしまう。
『ここに載っていたので自分で作ってみたんです』
本を広げながら振り返ったため、急いで目を逸らす。
『あのー、本を見てもらっても』
「ああ、すみません」
本を見るとそこには緑茶の説明が書いてあった。どうやら発酵というものの違いでお茶の味が変わるらしい。
それでも今は緑茶しか作れないと言っていた。
それよりも気になっていたことがあった。
あっ、決してスカートの中身ではないぞ。
「自分で作ってみたってどういうことですか?」
『はい。ぼくダンジョンなので、自分で色々作ることができるんです』
僕が気になっていたのは、自分で作ってみたって言葉だった。
ダンジョンは見たものを自分で作ることができるらしい。その力を使って彼はこの部屋の中にある物やお茶を作ったと言っていた。
「トラップや魔物がいないのは――」
『誰も来ないのでいらないと思って用意してませんでした!』
どうやら彼は少し天然のようだ。誰も来ないならダンジョンや魔物、ドロップ品に力を使わずに、快適に過ごせるように重きを置いたらしい。
きっとこの力を貸してくれるなら明らかに生活の質が上がるのは確かだ。
このお茶一つ取っても、何もない僕達には嗜好品になるレベル。どうにか彼を村の住人にすることはできないのだろうか。
「その力を僕達に貸してもらえないか? よかったら村に来て欲しいんだ」
とりあえず、住人にならないかと声をかけることにした。
『それは無理なんです。ぼくはダンジョンなので、移動できないですし、魔力が足りないので力を貸すにもエネルギーの補給が必要です』
移動できないなら一緒に住むのは難しいようだ。
残念ながら住人にするのは無理でも、助けてもらうことはできるはずだ。
エネルギーの補給をどこからしているかが問題になる。
ダンジョンの仕組みから考えると、ダンジョン内で死んだ魔物や人間から取り込んでいるのだろうか。
魔物を吸収していたら、何度も魔物を生み出すサイクルができてもおかしくない。
それよりもダンジョンのボスだと思っていたら、彼自体がダンジョンの管理者らしい。
ダンジョンが人の形をしているってかなりの大発見になる。
いや、そもそもこの島自体がおかしいため、何が正常なのかもわからない。
「ひょっとしたら魔石でもエネルギー補給になるか?」
『あっ、魔石でも全然大丈夫ですよ!』
おお、お爺ちゃんの遺影がここで役に立ちそうだ。数日の遺影だったけど、彼にはお疲れ様と言いたい。
家の中を色鮮やかにしてくれてありがとう。
今度はちゃんと有効活用してあげるから安心してね。
たくさん彼から話を聞いていると、勢いよく扉を開ける音とあいつらの声が聞こえてきた。
『アドルはどこにいるんだ!』
『ワシらが勝手に行ってすまなかった!』
どうやらコボスケ達は僕を探していたようだ。前回も僕を森に置き去りにして、怒られたのを覚えていたのだろう。
僕と目が合うと瞳がうるうるとしていた。ずっと探していたのだろう。
コボスケ達は飛び込むように中に入ってきた。
「おすわり!」
ただ、僕は許したわけではないからな。
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