74 / 281
第一章 外れスキル
74.再会
しおりを挟む
部屋に戻っても俺は何も話せずにその場で黙っていた。
「おい、何か話せよ?」
「すみません……迷惑かけてしまって」
「あはは、誰も迷惑だと思ってないぞ」
俺はてっきり怒られるもんだと思っていた。さっきはものすごい顔で俺を掴みかかってきたからな。
俺の精神面の弱さにマルクスはずっと前から心配していた。だからわざわざ俺の故郷による道を選んだらしい。
「お前を捨てた家族を見てきたぞ」
「えっ?」
「今親父は腰を痛めて仕事を引退しているようだ。母親も疲れ切っていたぞ」
「……」
「ここからは俺の提案なんだがな……。一回家に行ってこい」
何を言っているのかわからなかった。俺を捨てた家族に会いに行く理由がないのだ。
「それだとうまく伝わらないですよ?」
「そうか?」
「マルクスさんは一度ケントの実力を治療で親に見せつけにいけってことだと思うよ。正直オラは行かなくもいいけど、これで気が晴れるならやってもいいかな……ってことですよね?」
言葉足らずのマルクスのためラルフが補足していた。
まとめると一緒にケントの家に行き、父親を治療し自分の実力を見せに行けということなんだろう。
「ふっ」
やはり不器用で脳筋なんだと思うとなぜか笑いが出てきてた。
全てやることは強引だがマルクスなりの優しさなんだろう。ただ、全く伝わらないし人にとってはお節介だ。それでも俺のことを考えて動いてくれてることに心が熱くなった。
「ははは、少し元気になったか。念のためにラルフも連れてってやるからお前を捨てた家族を認めさせて来いよ」
「ははは、ラルフもよろしくね?」
「おう!」
ラルフとともに宿屋から出て自身が幼い時に住んでいた家に向かうことにした。
♢
重い足取りで記憶の中にある家を探した。俺は事前にマルクスから外套を渡されて着ている。
「そろそろ着くよ」
治療の技術をつけるために旅に出ているという設定でマルクスとラルフは事前に俺の父親と母親に会っていた。
治療が可能か相談した後に治せるなら訪れるという話をして宿屋に戻って来た。
気づいたら俺住んでいた家の前に立っていた。あの当時と見た目は変わらないがどこか冷たさを感じた。
俺がこの家から離れたからそう感じるのだろうか。もう一生来ないと思っていたのに……。
――トントン!
「あっ、さっきのお兄ちゃん!」
中から小さい女の子が扉を開けた。
「ラン……」
扉を開けた女の子はいつのまにか大きくなっていた。長女で俺のより二つ下の妹だ。
離れた時が三歳だったが今は九歳になった頃だろう。
「ああ、先程の――」
「こちらが先生です」
ランに呼ばれて来たのは母だった。以前よりは顔もこけておりどこか疲れた顔をしていた。
今まで溜めていたものが吐き出されそうになった。それでも今正体をバレるわけにはいかない。
「はじめまして。旦那さんの治療に伺いました」
「……。あっ、あの人は動けないので今も寝ています。こちらです」
母はどこか一瞬ビクッと体を動かしていた。どこか心の奥底で気づいて欲しいと思っていたがそんな気持ちは捨てた方が良さそうだ。
――トントン!
母が扉を開けると中から男の怒鳴り声が聞こえてきた。
「おい! 勝手に開けるなと行っておるだろうが! アバズレ女が」
父は無精髭を生やし動かなくなったのかお腹がぽっこりと出て、あの頃のカッコいい父の姿すでにいなくなっていた。
「あなたの腰を治療してくれる人が訪ねてきたわ」
「おお、ほんとか! ぜひやってくれ」
父親はすぐに頭を下げた。ローブを着た人が俺だとは知らずに……。
「少し失礼します。ラルフどうだ?」
ラルフの透視の目を使い腰の部分を中心に確認した。
「骨とかは特に問題無いと思うよ」
「わかった」
父親への最初で最後の治療が始まった。
「おい、何か話せよ?」
「すみません……迷惑かけてしまって」
「あはは、誰も迷惑だと思ってないぞ」
俺はてっきり怒られるもんだと思っていた。さっきはものすごい顔で俺を掴みかかってきたからな。
俺の精神面の弱さにマルクスはずっと前から心配していた。だからわざわざ俺の故郷による道を選んだらしい。
「お前を捨てた家族を見てきたぞ」
「えっ?」
「今親父は腰を痛めて仕事を引退しているようだ。母親も疲れ切っていたぞ」
「……」
「ここからは俺の提案なんだがな……。一回家に行ってこい」
何を言っているのかわからなかった。俺を捨てた家族に会いに行く理由がないのだ。
「それだとうまく伝わらないですよ?」
「そうか?」
「マルクスさんは一度ケントの実力を治療で親に見せつけにいけってことだと思うよ。正直オラは行かなくもいいけど、これで気が晴れるならやってもいいかな……ってことですよね?」
言葉足らずのマルクスのためラルフが補足していた。
まとめると一緒にケントの家に行き、父親を治療し自分の実力を見せに行けということなんだろう。
「ふっ」
やはり不器用で脳筋なんだと思うとなぜか笑いが出てきてた。
全てやることは強引だがマルクスなりの優しさなんだろう。ただ、全く伝わらないし人にとってはお節介だ。それでも俺のことを考えて動いてくれてることに心が熱くなった。
「ははは、少し元気になったか。念のためにラルフも連れてってやるからお前を捨てた家族を認めさせて来いよ」
「ははは、ラルフもよろしくね?」
「おう!」
ラルフとともに宿屋から出て自身が幼い時に住んでいた家に向かうことにした。
♢
重い足取りで記憶の中にある家を探した。俺は事前にマルクスから外套を渡されて着ている。
「そろそろ着くよ」
治療の技術をつけるために旅に出ているという設定でマルクスとラルフは事前に俺の父親と母親に会っていた。
治療が可能か相談した後に治せるなら訪れるという話をして宿屋に戻って来た。
気づいたら俺住んでいた家の前に立っていた。あの当時と見た目は変わらないがどこか冷たさを感じた。
俺がこの家から離れたからそう感じるのだろうか。もう一生来ないと思っていたのに……。
――トントン!
「あっ、さっきのお兄ちゃん!」
中から小さい女の子が扉を開けた。
「ラン……」
扉を開けた女の子はいつのまにか大きくなっていた。長女で俺のより二つ下の妹だ。
離れた時が三歳だったが今は九歳になった頃だろう。
「ああ、先程の――」
「こちらが先生です」
ランに呼ばれて来たのは母だった。以前よりは顔もこけておりどこか疲れた顔をしていた。
今まで溜めていたものが吐き出されそうになった。それでも今正体をバレるわけにはいかない。
「はじめまして。旦那さんの治療に伺いました」
「……。あっ、あの人は動けないので今も寝ています。こちらです」
母はどこか一瞬ビクッと体を動かしていた。どこか心の奥底で気づいて欲しいと思っていたがそんな気持ちは捨てた方が良さそうだ。
――トントン!
母が扉を開けると中から男の怒鳴り声が聞こえてきた。
「おい! 勝手に開けるなと行っておるだろうが! アバズレ女が」
父は無精髭を生やし動かなくなったのかお腹がぽっこりと出て、あの頃のカッコいい父の姿すでにいなくなっていた。
「あなたの腰を治療してくれる人が訪ねてきたわ」
「おお、ほんとか! ぜひやってくれ」
父親はすぐに頭を下げた。ローブを着た人が俺だとは知らずに……。
「少し失礼します。ラルフどうだ?」
ラルフの透視の目を使い腰の部分を中心に確認した。
「骨とかは特に問題無いと思うよ」
「わかった」
父親への最初で最後の治療が始まった。
12
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。
アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。
それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。
するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。
それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき…
遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。
……とまぁ、ここまでは良くある話。
僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき…
遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。
「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」
それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。
なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…?
2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。
皆様お陰です、有り難う御座います。
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる