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第一章 外れスキル

79.作戦実行

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 騎士達は馬車を守りながら抗戦していた。ゴブリン率いるエリートゴブリンは魔物の中ではそこまで強くない。

 しかし、あまりの数の多さに騎士達も押し負けていた。

「リモン、カルロ行くぞ!」

 マルクスの合図とともに魔物達へ飛びかかった。

「くそやろー! チビどもかかってこんかー!」

 マルクスはスキルで挑発し注目を集めた。

 言葉の選択は相変わらず脳筋ぽさが出ていたが、ゴブリン達はマルクスに注意が向き、狙いをマルクスに変えた。

 その隙間をリモンは見逃さなかった。間を抜けて騎士たちの元へ近づいた。

「力を貸します」
 
「ああ、助かった!」

「状況を教えてください」

「敵はエリートゴブリンを中心にゴブリンがおよそ三十体ほどです。こちらの負傷者は騎士が五名戦闘不能なのと御者をしていた執事が一番状態が酷いです」

「まずは負傷者をゴブリンを離してください。その間は私達が相手をしています。途中仲間が助けに来ますが驚かないでください」

 防戦していた騎士は他の騎士に指示をし、負傷者を馬車の近くまで運んだ。

「すみません。失礼します」

 俺はコロポのスキルを使ってリモン達とは別の方から移動していた。

「ななな、なんだ」

「私はケントです。治療しますが今は姿を見せれないのでそのまま敵が近づかないか見ててください」

「ああ」

「馬車と仲間を死ぬで守れ! 一体たりとも魔物を通すな!」

 騎士はすぐに指示を出すと敵が近づけないように陣形を変えて馬車と負傷者を囲った。


「ギャーオー!」

 エリートゴブリンが叫ぶと周りにいたゴブリン達の肌が赤く染まった。その姿はどこか自我を失ったかのように不気味に感じた。

 ゴブリンはマルクス達三人に向かって走った。

 急にゴブリン達の速度は速くなり剣で切りつけても怯むことなく向かってきていた。痛みを全く感じないのだろうか。

「うぉ!? こいつらさっきよりも強くなってるぞ」

「リモン、カルロ耐えるんだ! そろそろ騎士達も来るはずだ」

「ああ」

 その間に俺は騎士達の応急処置を終えた。

「応急処置は終わりました。マルクスさん達の援護をお願いします」

「助かったぞ! お前ら行くぞー!」

 騎士の一人が声を上げると数名だけ馬車に残し、ゴブリンの元へ向かった。

「ボス行くよ!」

「ガゥ!」

 俺はボスに跨ると素早くエリートゴブリンの前に向かった。

 エリートゴブリンは意外に大きく、俺が飛んでも首には届かないほどだ。

 エリートゴブリンは何かに気づいたのか周辺を見渡していた。

「おらー! デカブツの相手は俺だー!」
 その瞬間をマルクスは逃さなかった。すぐに挑発すると意識はまたマルクスに向いた。

「ボスやるぞ!」

「ガゥ!」

 ボスへの合図とともにエリートゴブリンの上空に直径1m程度の水球を発動させた。

 上空に手を挙げると水治療法を使って100℃近くまで温度を上げた。

 その水球は俺が作ったお手製だ。これが当たればダメージになるはずだ。
 
 相手はまだ水球の存在には気づいていない。

「いけー!」

 マルクスが叫ぶと同時に水球をエリートゴブリンの頭に向けて落とした。

「ギィヤアー!」

 エリートゴブリンでも100℃のお湯は熱かったのかその場で頭を下げた。

 その瞬間を待っていた。ボスはすぐに駆け出し首元にある首輪に手を伸ばした。

「よし、異次元医療鞄発動!」

 首輪はそのまま異次元医療鞄に収納された。

 すると首輪を外されたエリートゴブリンはすぐに力尽きたのか、ガリガリに痩せこけそのまま動かなくなった。

 指揮官を失ったゴブリンは次第に冷静さを取り戻した。

 その場から立ち去ろうと逃げようとしても誰も逃すつもりはない。

 ゴブリンの繁殖はゴキブリ並みにすごいらしいからな。

 俺はコロポのスキルを解除し姿を表すとそのまま怪我をしていた騎士達の元へ駆け寄った。

 出血を止めただけで傷口までは塞ぎ切れていない。ただの応急処置程度だ。

 突然現れた俺に馬車の近くにいた騎士は驚いて剣を向けてきた。

 だがそんなのを気にする余裕はない。まずは治療をするのが先だ。

「なんだこの小僧は!?」

 今度は何に驚いていたのかわからないが、できれば静かにして欲しいものだ。

 その後も治療の続きを終えると驚いていた騎士に声をかけた。

「これで終わりですか?」

「騎士はこれで最後だ。あとは御者をしていた執事がいるがたぶん間に合わない……」

 騎士が指差した方には胸に矢が刺さったままで倒れている執事がいた。

 騎士の応急処置はしていたが執事は馬車で見えなかったのだ。

 すぐに駆け寄るが胸からは多量の血液が流れていた。

 腕で脈を測るが拍動していない。頸動脈を触知するとわずかに拍動を感じることが出来た。

 一般的に多量の出血が起こると徐々に全身状態の異常をきたすようになる。

 脈拍や呼吸数の増加、血圧低下、その後は意識が不鮮明になり、顔面蒼白と見た目ですぐにわかる。

 最終的には敗血性ショックで亡くなってしまうだろう。

 そんな中必死にスキルを発動するが出血は止まらない。

「ダメだ……」

 俺はどうすればいいのかわからなかった。医師でもなく看護師でもない俺はリハビリ以外のことは対処できないのが普通だ。

 傷口を防げたのも謎の回復力があるスキルのおかげだった。

 そもそもリハビリ自体が復帰を目指す人達を助けるものだ。

 そのスキルで傷が防げていたのが不思議なのだ。

「うっ……」

 異世界に来て俺はスキルを使うたびに自分は誰でも助けられると思っていた。

 出血していたリモンでさえも治せたから大丈夫だと……。

「すみません! すみません! すみません! 僕が何もできないから……」

 必死にスキルを発動させながらも執事に頭を下げた。

「ケント!」

「すみません! すみません!」

「おい、ケント! しっかりしろ!」

 俺は誰かに止められた。振り返るとそこにはマルクスや騎士達が立っていた。

「マルクスさん……俺がやらなきゃ」

「お前は良くやった。誰よりも頑張ったんだ」

 マルクスとラルフは俺に近づき抱きついた。

「でも助けられなかった。何も出来なかった」

「大丈夫だ。助かったやつもいるぞ。頑張ったんだ」

「うっ……」
 
 血だらけの男の前に必死にスキルを使うその姿はまだ十一歳の子どもがするようなものではなかった。

 だからこそ騎士達は誰も文句を言えなかった。何も関係のない子供があまりにも切なく必死になっていたからだった。
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