142 / 281
第一章 外れスキル

142.急な現場指導

しおりを挟む
 俺達は冒険者ギルドの入り口に向かった瞬間、部屋中血の臭いが漂っていた。あまりの人数の多さに驚いた。

「痛い……早くどうにかしてくれ!」

「仲間を助けてくれ!」

 辺りからは助けを求める声が響いていた。その現場を目の当たりにした俺達は改めて気を引き締め直した。

「意識がない人、傷が酷い方は奥の方に運んでください」

 俺の声にさっきの現場を見ていた冒険者達は傷だらけの冒険者を奥の方へ運び出した。

「ラルフとガレインは一緒に行動して、危険な人から順に助けてあげて! 表面上の傷なら俺がどうにかする」

「わかった」

 内臓損傷はガレインしか治療できないため、まずはラルフが確認し、その後ガレインが治療する方向性が良いだろう。

 俺は近くにいた冒険者に声をかけた。

「教会から人は来てますか?」

「まだ来てねーぞ! あいつら基本金のことしか考えてないからな」

 ネロを助けるときに教会へ人を呼びに行ったはずがまだ到着していないらしい。

「他に患者はいますか?」

「外にまだまだたくさんいるぞ」

 俺はその足で冒険者ギルドから外に出ると、そこにも血を流した人や関節が変な方へ曲がった人が壁にもたれていた。

 どこから見ても地獄絵図にしか見えなかった。医療ドラマに出てくる災害現場のように感じるその光景に俺の頭はどこか冷静になってきていた。

 俺はその中で軽傷そうな人に声をかけた。

「組織の損害はどの程度ですか?」

「ああ、俺達はほぼ全滅した。魔物のボスは退治出来たがオークキングに半数はやられたよ」

 今回戻ってきたのは王都より東に位置する所に依頼へ行った討伐組織らしい。

 王都を中心に西は昆虫型、東はオークやオーガなど二足歩行の魔物、南はゴブリンやウルフなど低ランク魔物、そして北はハーピーや鳥類型の魔物が多く生息している。

「ありがとうございます。すぐ治療に回るのでもう少し頑張ってください」

「ああ、早めに仲間達を助けてくれると助かる」

 見た感じ男は軽症のため後回しした。

「お兄ちゃん来たよー!」

 そんな中元気に声をかけてきたのはミィだった。

 しかし、ミィ以外の子ども達は今の状況を見て固まっていた。ミィは子どもだから理解はできていない可能性があるが、他の子はある程度現状がわかっているのだろう。

「これから君達はこういう現場で働くことになる可能性がある。誰もが助けられると思わなくていい、自分のできることを精一杯やってくれ」

 そのまま子ども達は俺について行くと外よりもすごい光景にさらに言っていたことを理解したのだろう。

 あまりの酷い現場にその場で吐いてしまう子もいるぐらいだ。

「お兄ちゃん……」

 ミィは俺のズボンを掴んでいた。

「別に怖ければここから立ち去ってもらっても構わない。だけど、外れスキルと言われていた君達が一番必要とされる現場はここだ」

「俺は逃げないぜ! 将来お世話になる冒険者の先輩達は俺が助けるんだ」

 そんな中一番に声を上げたのは、俺と同じスキルを持ったマークだ。

「マークいくぞ」

「おう!」

 マークが俺に続くと続々とみんなら後を追ってきた。俺はガレインとラルフがいるところへ向かった。

「ラルフどうだ?」

「ギルド内の人は全て見たから、今度は外に行ってくる」

 倒れた人の頭の隣には、ラルフがスキルを発動させ画像投影させた紙が置いてあった。

――――――――――――――――――――

血管迷走神経反射による意識消失
左上腕骨亜脱臼
左橈骨、尺骨骨幹部骨折
左大腿骨開放骨折

――――――――――――――――――――

 画像投影された紙にはこんな感じに書かれていた。

 血管迷走神経反射とは、ストレスや強い痛み、排泄や腹部内臓疾患による刺激が迷走神経を介して脳幹血管中枢に刺激し、血圧や心拍数が低下することを言う。

 簡単に言えば、極度の痛みによって意識を保っていてはいけないと脳が反応し意識を消失させている状態だ。

「治療に当たるから何か木を準備して」

「平らな板だったら大丈夫か?」

 俺は頷くとマークは冒険者に頼み込み、ギルド内にあるテーブルを割って木を集めてきた。

 俺は木受け取るとまずは亜脱臼をしていた上腕骨を元の位置に修復し、伸びた靭帯を戻すように回復魔法をかけた。

 その後木を前腕と大腿骨に付けて、回復魔法をかけながら骨の位置を修正するようにイメージした。

「ちょっとラルフを呼んできてもらってもいいか?」

 子ども達はラルフを呼んでもらうと急いで戻ってきた。

「どうした?」

「ちょっと治っているか確認してもらってもいいか?」

「ああ」

 ラルフはスキルを発動させると紙に書いた文字を消した。

「骨は仮骨かこつ形成されてくっつき始めてる」

「ならこのままスキルを使い続ければ骨に関してはどうにかなるか」

 仮骨とは骨折した部位に起こる新しくできた骨みたいなものだ。

 傷の処置と同様にある程度回復魔法でどうにかならないかと思ったが、やはり俺の回復魔法は細胞を促進させることができるらしい。

「マリー達は動かし過ぎないように包帯を巻いて」

 彼女は孤児院にいる【看護】のスキルを持つ子達だ。

「わかりました」

 マリーは包帯を取り出し木がズレないように巻いた。

 事前に孤児院の子達には、副木を使った固定方法や包帯による関節の固定方法は教えていた。

 むしろ俺が教えれることが少ないからな。

「ケント! 外の人は外傷と骨折が主だ」

「わかった。なら俺はそっちを担当する。ミィはガレインのお兄ちゃんにこれを食べさせてあげて」

 俺はミィに王国魔力蜜を近くにあった容器に移し替えて渡した。

「これが終わったらミィも食べていい?」

「ああ、いいぞ」

「やったー!」

 ミィは嬉しそうに王国魔力蜜を持ってガレインの元へ走って行った。子どもには嫌な現場だけどこれで少しはミィも役に立つだろう。

「さぁ、他の子は付いてきて!」

「はい!」

 俺達は外傷や骨折の人を中心に治療することにした。
しおりを挟む
感想 120

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...