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第一章 外れスキル

152.生誕祭初日

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――生誕祭初日

「孤児院で食事処をやるので来てください」

 孤児院の医療系スキル組みの子ども達を連れて冒険者ギルドに来ている。

 俺達は食事処の宣伝活動に来たのだ。

「今日ミィの友達がたくさんつくるの! おじさん達来てくれる?」

「はぁー、ミィちゃん可愛いね! 食べに行くよー」

 ミィは大柄な男達に声を掛けていた。あれから医療組の子達は冒険者と関わることが多いからだいぶ知られている。

 強靭な冒険者達も幼い少女に声をかけられると一瞬で虜になっていた。

「そろそろ戻ろうか?」

「ちゃんと来てね! ミィ待ってるよ?」

「ああ、俺達はミィちゃんのためなら絶対いくよ」

 俺この男達を忘れない。ギルドマスターで幼女慣れしてるのかもしれないが、ミィはまだ本物の幼女……いや、幼児なのだ。

 冒険者ギルドから孤児院に向かっていると、王都内はすでに準備で慌ただしくなっていた。

 初日は教会で成人の儀を行い、終わり次第で生誕祭が開始される。

「兄ちゃんは生誕祭はじめてなんだよね?」

「そうだよ! ミィは行ったことあるの?」

「んん、ないよ。みんなが楽しそうに歩いているところを部屋から見てたよ」

 ミィの一言に俺は胸が締め付けられる思いだ。生誕祭は基本的に家族と過ごす祝い事だと聞いている。

「今年はみんなで楽しい思い出を作ろうね」

「うん!」

 そんな話をしていると王都の中心から鐘が鳴り響いてきた。

 それと同時にたくさんの声が聞こえてきた。教会で成人の儀が終わったのだろう。

「いらっしゃい! うちの肉串はどうだー」

 あらゆる屋台からは呼び込みの声がかかりついに生誕祭が始まった。

 その光景に孤児院の子ども達も目を奪われていた。

「みんな急いで帰るよ」

 俺達は子ども達を引き連れ急いで孤児院に帰ることにした。





 孤児院では既に準備が終わり、あとはお客さんが来るだけとなっていた。

 前世では飲食店でのアルバイト歴があったため、ホールスタッフとして参加する予定だ。

――ガラン!

「来たぞー!」

 お客さん1号はフェーズ、ネロ、ドランの三人だった。

 フェーズはあれから外に行く機会が増え、今は軽い助けで出歩けるぐらいになった。

「いらっしゃいませ。こちらの席にどうぞ」

 子ども達は席に案内しメニューを渡すとフェーズ達は真剣に見ていた。

「この孤児院スペシャルメニューってなんだ?」

 メニューには良くある異世界飯と俺が教えた孤児院スペシャルメニューと分かれている。

 変わった料理だけでは、中々手がつけられないと思ったからだ。

「こちらはある冒険者から教えて頂いた料理でございます。馴染みのない異国の料理ですが、ぜひ召し上がってください」
 
――ガラン!

「ケントくん来たよ」

 次に来たのは破滅のトラッセンのメンバーだった。俺は席に案内するとメニューを渡した。

「俺は孤児院スペシャルメニューのカレースープとハンバーグで」

「私も両方お願いします」

「そんなに食べるんですか?」

 男性陣が両方頼むのは分からなくもないが、まさかのリチアとカレンもハンバーグとカレースープを頼んでいた。

「だってこれってケントくんのご飯でしょ? なら美味しいに決まってるじゃないの!」

 俺が作る料理の虜になっているリチアが、全て頼むのは当たり前のようだ。

「なら俺達も両方にするか」

 そんな様子を見ていたフェーズ達も孤児院スペシャルメニューを頼むことにしたようだ。

――数分後

 熱々のハンバーグとカレースープにパンのセットを運んできた。

「こちらハンバーグとカレースープです。カレースープはパンを浸して召し上がってください」

 見たことない料理にフェーズ達は興味津々だった。

 フェーズはパンを手にとり、カレースープに浸して口に入れた。

「うまい……ネロ、ドランうまいぞ」

 それを見ていたネロとドランも次々と手に取り食べ始めた。

「このピリッとしたスープとパンの甘みが合わさって食欲が進むわ」

「このハンバーグもすごいぞ。こんなに肉汁も溢れて柔らかい肉は初めて食べたぞ」

 三人の食べる手は止まらず、すぐに完食していた。どうやら初めて食べた人達にも口に合うようだ。

 フェーズが声をかけよう、手を挙げると隣のテーブルから先に声が上がっていた。

「おかわり!」

「すぐに伺います」

 俺は破滅のトラッセンがいるテーブルに向かった。

「一つずつもらえるか?」

「それなら次はデザートとかはどうですか? 甘い物ですが、ボリュームもあるのでちょうどお腹は膨れると思いますよ」

 俺は隣のテーブルに座っている破滅のトラッセンにデザートを勧めた。

「どうされましたか?」

「あのテーブルで勧めているのは……」

「こちらのデザートですね! 味の種類も沢山ありますが、男性ならシンプルに魔力蜜のパンケーキがオススメです」

「じゃあ、それを一つください」

「俺も同じやつを」

「なら、私は苺のパンケーキがいいわ」

 フェーズ達もパンケーキを頼むことになった。

 そして待つこと数分、孤児院の中は甘い匂いで溢れていた。

「おまたせしました。魔力蜜のパンケーキと苺のパンケーキになります」

 届いたパンケーキの見ために女性陣の目は輝いていた。

 冒険者でもやはり女性は女性だ。綺麗なものと甘いものが好きなのだろうか。

「ちょっとこれすごいわよ。ふかふかな食感のケーキに甘酸っぱい苺が合ってるわ。しかも、銀貨二枚って他で食べるケーキと同じぐらいの値段なのにこのボリュームと美味しいさはすごいわ」

 後から知ったことだが、高いと思っていたパンケーキは王都である有名なケーキ店とあまり変わらないらしい。

「はやく二人も食べなよ! そっちも一口貰うね」

 物静かなネロも見たことのないほどテンションが上がり多弁となっていた。

「おっ、おい!」

 ネロはフェーズのお皿から一口魔力蜜のパンケーキを取り口に入れた。

「んー、これも美味しいわ! 魔力蜜にこんな使い方があったなんて驚いたわ」

 魔力蜜は基本的に魔力ポーションに使われるため、デザート以前に食事に使われないことは常識だ。

「俺のはやらんぞ!」

 ネロの手は今度はドランの方に伸びていたがドランはそれを叩き落としていた。

 やはり食事は人を笑顔にしてくれる。これが俺の求めていたスローライフなんだろう。

 たぶん……。

 その後食べ終わった三人は満足し会計をしに行くと、そこには魔の一手が置いてあるのだ。

「これはなに?」

「これは魔力蜜が使われているクッキーというお菓子ですね。パンとは違ったしっとりとしたものやサクサクしたものまで用意してあります」

 会計テーブルの上に置いてあるのはクッキーだ。

「これも買います」

 魔力蜜と聞いた瞬間にネロはいくつかクッキーを取り会計に入れた。

「ありがとうございます。お知り合いの方にもぜひ勧めて頂けると助かります」

「そうね! こんなに美味しいものを私達しかいないなんて勿体ないものね」

 あれから孤児院に来た人はおらず、結局フェーズ達と破滅のトラッセンのみだ。

 やはり孤児院というだけであまり期待もなく来づらいのだろう。

 ネロはたくさんのクッキーを持って孤児院を後にした。

「フェーズさんありがとうございました」

 帰る間際まで俺も含め他のスタッフがフェーズを入り口までお見送りするとフェーズは驚いていた。

「なあ? 孤児院ってこんなに礼儀も良くて美味しいものを食べているのか?」

「いやいや、普段は運営費が足りないので質素な生活をしてますよ。今回のお金も異世界病院から資金を出してますし、売上は今後の孤児院の運営費に回すために使いますね」

「そうなんか……。よし、たくさんの人に声を掛けてくるから覚悟しておけよ」

「またのご来店お待ちしております」

 俺達は頭を下げ、フェーズ達が見えなくなると店に戻った。
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