156 / 281
第一章 外れスキル

156.生誕祭最終日

しおりを挟む
――生誕祭最終日

 今日も朝から孤児院の食事処は繁盛していた。食べに来る人も固定されており、昨日来ていた人も訪れている。

「フェーズさんまた来たんですね」

「おう、当たり前だ。今日で終わるって思うと悲しいぞ」

 フェーズは落ち込みながらもハンバーグを食べている。そんなに美味しいならレシピの公開も考えた方がいいのだろう。

「ケントおかわり!」

 フェーズは追加注文するとそれに続くように他のテーブルからも追加注文をする声が聞こえた。

「食べすぎじゃないですか?」

「いつ食えるかわからないからな」

「いつって……これからも孤児院で食事処続けることになりましたよ?」

 俺の一言にフェーズは固まっていた。

 いや、フェーズだけではなく常連となった人達も同様に固まっている。

「あのー」

「な、なんだって!?」

 急に大きな声を出すから口からハンバーグが飛び出ているよ……。

「いや、昨日マルヴェイン王子が来て、庇護してやるっていう話になったので、これからも続ける方向性になりました」

「そうか……毎日食べれるんだな! よっしゃー!」

 流石に毎日は体には悪いと思う。フェーズが今度はオークになってしまう。

「どうにか投票して続けてもらうようにしようと思ったけど、なんとかなるんだな……」

「投票……ですか?」

「ケント知らないんか?」

 生誕祭最終日のお昼過ぎまでに、住民からの投票で食事処や屋台の順位を決めるイベントが開催されるらしい。

 そこで三位までに入ると、臨時のお店はお店の資金や土地が商業ギルドから提供してもらえるため、成人した人達は自分のお店を持つために競い争うようになっている。

 もちろんエイマーもそのことは知っているが、修行に出る前の体験的な要素が強いため特に説明はしていなかったらしい。

「俺はここの飯が良かったから投票するつもりだけどな。夜にはパレードがあった中心部で発表があるから見にいこうぜ」

「そうですね。子ども達にも見せたいんで、また助けてくださいね」

「おう、任せろ」

 あの頃の暗かったフェーズはもういないようだ。





 食事処を終えた俺達はエイマーやフェーズ達とともに王都中心に来た。

 屋台をやっているものは生誕祭終了まで開店しているためお祭り騒ぎとなっている。

 子ども達には今回得た利益の中でお小遣いを渡し、なるべく団体で行動するように伝えてある。

 基本冒険者が一人付いているから大丈夫だろう。

「兄ちゃん行こう!」

「ニチャ行こ!」

 俺を引っ張るのはミィとベールだった。

 ベールも今回の食事処を一緒にやるようになってから俺にべったりとしている。

「兄ちゃんは私と行くの!」

「ニチャは私と行くの!」

 二人とも俺を譲らないと言わんばかりの取り合いを始めた。

「妹みたいだな。妹か……」

 俺は前世の妹、そしてエッセン町にいるアリミアを思い出していた。

「二人とも一緒に回ればいいでしょ? 他にも行きたそうな子達もいるしね」

 ミィやベール意外にも俺と行動したそうな子達は多かった。

 ついに俺にモテ期が来たのだろうか。

「いや、ケントはお兄ちゃんだぞ?」

 隣にいたラルフはボソッと呟いた。彼の目はスキルが発動している時のように瞳の色が異なっている。

「ステータス覗いただろ!」

「へへへ」

 いつのまにかラルフもスキルが強化されてきてるのだろう。

 俺はラルフとともに子ども達を引き連れて、屋台で串焼きなど簡単な物を食べていると金属を叩く音が鳴り響いた。

「おっ、ついに順位発表の時間になったぞ」

 近くにいたフェーズが声をかけてきた。金属を叩く音は投票結果の発表を知らせる鐘の音らしい。

「えー、皆さま集まって頂きありがとうございます。これから生誕祭恒例の食事処および屋台の優秀店を発表します」

 舞台の上には商業ギルド長が立っており、その隣のテーブルには何か厚みがある袋と順位の報酬が書かれた紙が置いてあった。

――――――――――――――――――――

1位 大金貨2枚と土地
2位 大金貨1枚と土地
3位 大金貨1枚

※土地は大金貨2枚と交換可能

――――――――――――――――――――

「大金貨1枚だと日本円で100万円だから……1位は最高400万円!?」

 考えてもいなかったが賞金の多さに俺は驚いた。

「第3位の発表です。第3位は屋台ジューシークシヤキーズです」

「あー、チクショー! 今年こそは1位になるつもりだったのに」

 遠くの屋台から大きな声で話す人がいた。

「あっ、さっきあそこで串焼き買ったわ」

「あのおっさんの串焼きは毎年人気だからな」

 3位に入賞したのはさっきまで食べていた串焼き屋の屋台だった。

「それでは第2位の発表です。今回は新規店が入賞しました。第2位は孤児院の食事処です」

「えっ?」

 急に呼ばれたため俺の頭の中は真っ白になった。

「ほら、やっぱり入賞したじゃねーか。これでお金かからずにお店が建てられるな」

「ええ……資金集めも大変ですからね」

 まさかの入賞にマルヴェインからの援助なく、孤児院の食事処が続けれることが決まったのだ。

 その後1位が発表されエイマーが代表として舞台に上がった。

 1位は王族や貴族が通うほどの有名なお店のため、実質平民達の中では孤児院が1位となるのだった。
しおりを挟む
感想 120

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

処理中です...