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第一章 外れスキル

175.異世界病院のアイドル

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 引っ越しが終わり数日が経った。今日も異世界病院は繁盛している。その理由はスライムであるキンポヨのおかげだ。

「キンポヨ分離して」

 俺の指示に従ってキンポヨはいくつかに分離した。

 あれからスライムの上位種のキンポヨにはさまざまな能力が隠されていたことがわかった。

 その一つ目がこの分離能力だ。

 キンポヨは自身の体をいくつかに分けることで全員が同じような能力が使えた。

「じゃあ、温めるよ」

 俺は手を出すと分離したキンポヨ達が集まってきていた。

 手を隙間なくスライムが集まると温熱療法を発動させた。

 これがキンポヨの二つ目の能力だ。

 取り込んだものを吸収できるため自身の温度を変更することができる。

 温熱療法を使えばホットパックになり、水治療法を使えば少しひんやりとしたジェルパックに代用が可能となった。

 そのためやっと温熱療法が実際の現場にも使えるようになった。

 すると話を聞きつけた高齢者や体を良く使う労働者が異世界病院に溢れかえっていた。

 
「これを肩の上に置いて温めてください」

 俺はスライムを異世界病院に来た人の肩に置いた。

 そしてホットパックで温めているうちに違う患者の対応をしている。

「最近調子はどうですか?」

「お腹の調子が悪くて運動どころじゃないよ」

「わかりました。でも体を動かさないとお腹も動かないから少しは動いてくださいね」

 今来ている方は近所にいるおばあさんだ。元々体が動かしにくくなって、定期的に家族やウルとともにリハビリをしに来てくれる。

「それはわかっておるんだがな。お腹が痛くて……」

「便って何日出てないんですか?」

「もう五日になるんかね。もう出さないと動けないんだ」

「ってな感じで家にいてもずっとトイレ引きこもって力んでいるだ」

 今日はウルが連れてきており、家でもトイレにこもって出てこないようだ。

 気分転換にでも連れ出したがすぐにトイレに戻ってしまう。

 お腹もだいぶ張っており、便が出ないことに固執していた。

 高齢者で便に固執してずっとトイレで踏ん張っている人は多いからな……。

「おばあさんをトイレに案内するからよろしくね」

 キンポヨは理解したのか触手を出して敬礼をしていた。

 一緒に住みだしてからトイレ以外で水を出すと部屋が濡れてしまうと説明すると、聞き分けがいいのか触手で敬礼やバツ印などで感情を表すようになっていた。

 ちなみにキンポヨの水は汚水ではなく、純粋に水属性魔法らしい。

「ウルはそのままおばあさんトイレに誘導して」

「わかった!」

 おばあさんはウルの付き添いでトイレに入って行った。

 しばらくするとスッキリした表情で戻ってきた。

「あー、ケントくんスッキリしたわ」

「これで運動はできそうですか?」

「ああ、少しは動けそうだよ」

「しっかり動いてくださいね」

 おばあさんはそのままリハビリ室に向かった。

「キンポヨ助かったよ!」

 俺はキンポヨを褒めると照れ隠しなのか、触手で鼻の下?あたりをかいていた。

 鼻があるのかはわからないが……。

 これがキンポヨの三つ目の能力。アニーやアリスも体験したが、キンポヨの触手からは溶液や酸液を出すことができ、自身でその濃度を変えることができる。

 また、潤滑液も出すことができるため、触手のサイズを変えて浣腸しながら吸収するため痛みを伴うこともなかった。

 基本的には自身での排泄機能の維持のために、入り口部分の固いところのみ取り除くように伝えてある。

 以上がキンポヨが仲間になったことで起きた仕事の変化だ。

 そんな便利なキンポヨは稀に冒険者のおっさん達に連れて行かれそうになることもあった。

 前世で成人していた俺はどこかおっさん達の気持ちも理解できる。

 冒険者としても長期間の旅と命がけの現場に心身ともにリラックスを求め、自身の慰めに使うのだろう。

 王都のように夜のお店が旅先にあるわけでもないから仕方ないことなのだが、連れて行かれても困るため今は小瓶に潤滑液を入れて渡している。

 流石に俺のキンポヨをそんなのに使って欲しくもないし、脳筋絶倫の手に渡ったら壊れてしまう。

 なんやかんやでキンポヨはいつのまにか異世界病院のアイドル的な扱いに上り詰めた。
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