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第一章 外れスキル

186.アスクリス令嬢 【side:アリミア】

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――約一年前

 アリミアは屋敷の縁にある倉庫に住んでいた。公爵家の倉庫のため小屋に見えるほどの大きさはあった。

「アリス様お食事です」

 そう、この時はまだアリミアではなくアリスと呼ばれていた。

――ガチャガチャ

 倉庫の鍵を開ける音がするとメイドの格好をした若い女性がパンとスープを持って立っていた。

「ヘレン!」
 扉が開けられたと同時に中からアリミアが飛び出した。

「アリス様、公爵家のお嬢様がいきなり飛び出してはダメですよ」

「だって私にはヘレンしかいないもん!」

 アリスのその姿にヘレンはグッと噛みしめいつも通りの顔をした。

「アリス様は本当に可愛いわね」

「へへへ! そんなこと言ってくれるのはヘレンだけだよ。私にもちゃんとしたスキルがあれば……」

 優しい父と母の元に生まれたアリスは、公爵家の令嬢ともあり、毎日優雅な生活をしていた。

 それが五歳のスキル解放の日から生活は一変した。

 外れスキルだと分かると同時にアリスはこの倉庫に入れられ、次の日からはメイドのヘレンしか顔を出さなくなった。

「アリス様は私がお守りします」

「ん?」
 
「いえ、失礼しました。私が来てからずっとヘレン様のお世話をしているなーっと思っただけですよ」

 ヘレンはアリスが外れスキルだと分かった時から、アリスの面倒を見るために雇われたメイドだ。

「ヘレンが来て一年になるね」

「月日が経つのは早いですね」

「そういえば、ハッタは元気?」

「御子息様もお元気ですよ。今日も剣の稽古をされていました」

「ドール騎士団長は厳しいからハッタも大変だね。私も昔はやっていたのにな……」

 アリスも五歳になる前までは弟のハッタとともに剣の稽古をしていた。

 アスクリス公爵家の子供であれば騎士関係のスキルが解放されると予測されているため、慣れ親しむためにも早い段階から剣と触れ合う事は多い。

「アリス様はスキル【剣士】だから剣の腕は申し分ないと思われるんですが……」

「うん……そうだね」

 アリスはスキル解放の人に自身が外れスキルなのを理解した。

 そのため、家族にステータスを見せるときはビクビクしていたが、なぜか隠蔽されスキル【剣士】となっていた。

 スキル【剣士】だと知った母は激怒し、アリスを倉庫に閉じ込めたのだ。

「あっ、そろそろ仕事に戻らないと行けないわ」

 ヘレンは何かを思い出したのか食べ終わった食器を片付け始めた。

「もう行っちゃうの?」

「今日はアスクリス公爵家主催のパーティーがあるのよ! それでメイド達は大忙しなのよ。アリス様ごめんなさい」

 ヘレンがアリスの食事を持ってくるのが遅れたのもパーティーの準備をしていたからだ。

「わかったわ」

 アリスはヘレンに笑って答えると、ヘレンの顔はどこか悲しげな表情をしていた。

「では失礼します」

 ヘレンは倉庫の扉を閉めた。扉を閉める手はどこかガタガタと震えていた。
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