238 / 281
第一章 外れスキル

238.暴走馬車

しおりを挟む
 俺達は王都に向かうために準備を整えていた。他の冒険者達は先に帰り、俺達は馬車で戻るため片付けをしていたのだ。

「今回はガレインがいなかったらどうなっていたか……」

「そんなことないよ? みんなが居たから助けることができたし、セヴィオン兄さんの時なんてケントがいなかったら諦めていたよ」

「それでも諦めてないからすごいよ」

「気づいたらケントのペースに巻き込まれて人生が変わるもんな」

「私も今は外れスキルじゃないって胸を張って生きていけそうだよ」

 前回、冒険者ギルドで怪我人を治療した時はまだ"弱い自分"という殻から出てこれなかったのだろう。

 それが魔力不安定症の治療が成功したという偉業を成し遂げることによって自信に繋がった。

 あの時のガレインは俺から見ても医師に感じたからな。

 片付けを終えると待っていた馬車に近づいた。

「帰りもよろしく頼むな!」

 俺はバトルホースに声をかけると頷いていた。

 馬車に乗ろうと体の向きを変えようとするとどこか服が引っ張られているような気がした。

「ん?」

 振り返るとそこには服の裾を噛みついたバトルホースがいた。

 なぜか引っ張っているのだ。

「どうしたんだ?」

「ヒヒィン!」

 バトルホースの声を訳すように胸ポケットにいるコロポが話しかけてきた。

「乗って欲しいと言っておるのじゃ」

「えっ? 今から馬車に乗るけど……」

「いや、バトルホースは自分の上に乗って欲しいと言っておるのじゃ」

 流石に馬車を引っ張っているところの上に乗るのは難しいだろう。

 どうしようか考えているとそんな様子を見ていた御者が声をかけてきた。

「よかったら馬車の操作方法を教えましょうか? その方がこの子も喜ぶと思うので」

 こんな姿を見るのは御者も珍しいらしく、俺はついでに馬車の操作の仕方を教えてもらうことにした。

「では出発しましょうか」

 荷物をまとめた俺達は王都に向けて出発した。

 行きの時とは違い問題が解決した今はみんなが楽しそうに笑っていた。

「その先を右らしいぞ」

「ヒヒィーン!」

 馬車の操作は思ったよりも簡単だった。

 って言っても俺が声をかけるとその通りにバトルホースが動くのだ。

 しかも楽しそうに走るから後ろの馬車からは必死に耐えている声が聞こえてくる。

 次第に王都が見えてくるとさらにその勢いは増していた。

「おいおい、ゆっくり走ってくれよ!」

「ヒィヒヒヒ?」

「うぉーい!?」

 何か勘違いしたのか、さらにバトルホースは速度を上げて走り出した。

「いやああああ!」

 後ろからは叫び声が聞こえるが俺達は無事に王都に着いた。

 今回も何事もなく依頼を終えることができた。正確に言えば命は何事もなく無事に終わったというところか。

 実際は馬車に乗っていた子ども達は今にも吐き出しそうな真っ青な顔で馬車から降りてきた。
しおりを挟む
感想 120

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

処理中です...