異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品

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第一章 少年との出会い

19.聖男、馴染んだかけ合い ※一部ルシアン視点

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「次はちゅーしてもらうんだからね!」

 あれから度々ルシアンからご褒美のちゅーを求められるが、僕はずっと拒否していた。
 だって、小さいころのルシアンを知っているのにそんなことはできない。

「大きくなったらね!」

 由香のおばあさんのことで改めて考え直そうとは思ったけど、やっぱり今のルシアンはまだ子どもだ。

「約束だからね!」

 そう言って、ルシアンは拗ねた顔をしていた。
 この掛け合いがここ最近の馴染みになりつつある。
 このままだと次に来た時はすぐにちゅーを強請って来そうな気がする。
 今回は一番初めに一緒にお風呂に入ったぐらいだし……。

「そんなことよりも準備はできた?」   
「たくさん荷物も持ったし、本と辞書もあるよ!」

 前回に引き続き荷物を用意したが、今回はルシアンに必要なものを準備させた。
 薬関係はあまり使っていないから残っているし、本に関してはここまで日本語が理解できたら、何が必要になるのかわからない。
 初めはパソコンを欲しがっていたけど、さすがに持っていっても検索はできないからね。
 それにさすがにパソコンは高すぎる!
 我が家はテレビの代わりにパソコンが活躍しているから、僕の部屋には何もなくなってしまう。
 その代わりと言ってはいつも通りだが、たくさんの本と使わない電子辞書を待たせた。

「みにゃと、ちゃんとお花に水をあげてね!」
「それはルシアンも同じだよ」

 ルシアンはさつまいもの苗やじゃがいもの種芋以外に、いくつか野菜や花の種を買っていた。
 一年でどれぐらい育つか実験するらしい。
 そして我が家にもプランターを用意して種を植えた。
 正直、これから冬になるのに花が咲くとは思えない。

「じゃあ、行ってくるね! 次はちゅーだよ!」
「大きくなったらね!」

 また念押しに一言告げてから、ルシアンはいつものように自分の世界に戻って行った。
 何度も行ったり来たりを繰り返しているが、本当にどういう仕組みなんだろう。
 あっちの言葉なのはわかってるけど、うまく呪文も聞き取れないんだよね。

「そういえば、合鍵渡したままだった……」

 財布は使わないから置いておくと言われたが、首にかけたままの合鍵をそのまま持っていってしまった。
 無くさないか心配だが、こっちの世界でなくならないのであれば問題ないはず。
 賃貸アパートだと退去する時に問題になるからね。





 楽しい時間は一瞬にして過ぎてしまった。

「おかえりなさい、ルシアン様」
「ああ、こっちはどうだった?」

 僕……いや、俺がいなかった半年のことを部下に話を聞いていく。

「今のところ何も気づいていないかと思います」
「それならよかった」

 俺はいなくなって半年の間、部下に自分の仕事を任せていた。
 って言っても孤児を集めただけの単純なことだ。

「それにしてもたくさんの荷物を持ってきましたね」
「これで食料問題が解決すればいいけどね」

 湊の世界は食べ物がたくさんあり、色んな文化が発達していた。
 それを当の本人たちは当たり前のように過ごしていたが、俺から見たら驚くことばかりで有意義な時間だった。
 今回持ち帰ったのはその中でも食料に関するものが中心だ。
 我が国では魔素の影響で土地が痩せてきている。
 その結果、国中で食料不足となり、孤児が増えて問題になっている。

「じゃあ、今から植え方を教えるからみんなでやるぞ」

 俺は率先して孤児たちを誘導する。
 貴族である俺たちは自身の領地で各々対策に追われているが、何も解決していないのが現状だ。
 体の傷が減ってきたのはその証拠だ。
 真ん中のクズの双子は学園に通っているし、長男と次男はその問題で追われているからね。

「みんなで生きる残るぞ!」

 湊みたいにちゃんとした言葉を投げかけることはできない。
 ただ、学んだことを伝えることはできる。
 俺は残された孤児を鼓舞して、何をしてでも生きてやる。
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