異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品

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第一章 少年との出会い

20.聖男、久しぶりに会った少年は変わっていた

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 ドキドキしながらこの一カ月を過ごした。
 僕にとったら短い期間だったけど、向こうにしたら一年以上になる。
 成長した姿を見るのは楽しみだけど、前回があれだったからな……。

 部屋全体が眩い光を放つとともに、僕は息を呑んで彼の姿が見えるのを待った。

「みにゃと……」

 変わらない呼び名に少しホッとする。
 相変わらず僕の名前を間違えて読んでいるのに気づいているのだろうか。
 ただ、聞こえた声がいつもと違う。
 明らかに低くなり、僕の心に響いてくる。

「ルシ……アン……?」

 ジーッと見つめると、クローゼットの前にルシアンが立っていた。
 灰色の髪が陽の光を受けて淡く光り、緑の瞳がこちらをまっすぐ見つめている。
 それに手には何かを包んだ布の束を持っていた。

「俺はちゃんと咲かせたぞ!」

 彼が差し出したのは小さな花束だった。
 白いカスミソウがふわりと揺れ、赤いポピーが中央で静かに燃えている。
 そして、陽だまりのようなマリーゴールドがそれらを包み込むように咲いていた。

「花束……?」
「ああ、荒れた土地でも咲く花だからね。みにゃとに渡したくて持ってきた」

 指先には少し土の跡が残っている。
 きっとこっちに来る前に急いで摘んで持ってきたのだろう。
 少しだけ見た目が変わっても、僕を見つめる優しい瞳は変わらない。

「ありがとう」

 受け取った瞬間、部屋の空気がふっと柔らかくなる。
 いや、僕の体が軽くなったと言った方が早いだろう。

 気づいた時には僕はルシアンに抱きかかえられていた。
 ルシアンの唇がゆっくりと近づき、額にそっと触れる。

「へへへ、ちゅーしちゃった」

 その言葉に僕は照れ臭さよりも、ついつい笑ってしまった。

「ははは、ルシアンは相変わらずだね」

 少し頬張った頬にがっしりとした体。
 僕とそこまで身長は変わらないだろう。
 年齢でいうと多分12歳前後なのに、もう体つきが大人になりつつある。

「これでも頑張ったんだよ?」

 僕はゆっくり下ろさせると、ルシアンの顔をジーッと見つめる。
 ルシアンは照れくさそうに頭をかきながら微笑む。
 優しい笑顔がこんなに安心するとは思わなかった。

「何かあった?」
「いや、声変わりしても子どもなんだなって!」

 一瞬、突然の変化に戸惑った。
 声も見た目も違っていれば別人に感じるからね。
 ただ、この様子だと中身はまだまだ子どもだ。

「ほら、体だって大人になってきたよ!」

 ルシアンは服をチラッと捲り上げた。
 綺麗に割れた腹筋に残った過去の傷跡がアクセントになっていた。
 だが、僕はそんなことを気にせずに服をもっと上げていく。

「傷はないか……」

 あれから傷は増えていないから安心した。
 いくら大きくなったからって、毎回傷ができていたから心配で仕方ない。
 ルシアンが傷だらけになるのは心苦しかったからね。
 看護師なのに何もできないって、無力以外に何者でもない。

「んっ……どうしたの?」

 服をあげられているルシアンは顔を赤くしてそっぽ向いていた。
 その様子にどこか面白くなって、僕はさらに抱きついた。

「ルシアン、会いたかった――」

 だが、すぐに引き剥がされてしまった。
 同じぐらいの背丈のルシアンの瞳が僕をジーッと見つめる。
 ルシアンから感じたことのない熱がこもった瞳だ。

「みにゃと……そそそ、そういうのは考えてからやらないとダメだぞ!」

 なぜか僕が怒られてしまった。
 こんな日が来るとは思わず、つい僕は唖然としてしまう。
 だって、あんなにベッタリとしていたルシアンが自ら僕を引き剥がしたんだからね。
 驚きを通り越して、なんとも言えない気持ちに襲われている。

「嫌だった?」
「そんなことはない! むしろもっと抱きつきたい!」

 息を荒くして真剣な顔で言われると、それはそれで違う気がする。
 それにどことなく少年より男性になって、身の危険を感じる。

「ルシアンも男になったんだね!」

 僕はニコリと笑ってその場を誤魔化すようにルシアンから離れる。
 チラッと振り返ると、少し残念そうにしていたルシアンがいた。
 なんか……小型犬が中型犬になったような気がする。

「ホットケーキでも食べる?」

 少し気になりいつものように声をかける。

「食べる!」

 勢いよく返事をしたルシアンに僕は再び笑ってしまった。
 やはり大きくなっても、ルシアンは変わらなかった。

✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦
【あとがき】

やっとここまできた!
ルシアンくん、可愛いです| |д・)
花束になって二人を見守っていたいと切実に思いました笑

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