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第一章 少年との出会い
21.聖男、ホットケーキはいつもの味?
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「あのー、ルシアンくん?」
「なに?」
「……さすがに、これはちょっと違うと思うんだけど?」
思わず語尾が弱くなる。
目の前の光景に頭が追いつかない。
いつものようにホットケーキを作って、食べるつもりでいた。
だが、なぜか思っていたことと違う形になり、僕は戸惑いを隠せない。
「別に俺がみにゃとに食べさせてもおかしくないよね?」
「いや、さすがにおかしいし、これもおかしくない?」
僕はルシアンの足元に指をさす。
だが、ルシアンはいつものように首を傾げていた。
「おかしくないよ?」
「うっ……」
そう言われると、不思議と反論できなくなる。
まっすぐな瞳に見つめられて、言葉が喉の奥で止まった。
だって――。
ルシアンの膝の上に僕が座るって、普通に考えておかしいでしょ!
しかも、肩越しに伝わる体温がやけに熱い。
鼓動のリズムが僕に重なって響いてくる。
ホットケーキを作るところまではいつも通りでよかった。
だが、その後からおかしくなった。
普段ならルシアンが嬉しそうにホットケーキを運ぶでしょ。
でも今回はホットケーキと僕が抱えられて運ばれることになった。
そして、そのまま膝の上に抱きかかえられる形で座らされ、口元にはフォークに刺したホットケーキが押さえつけられた。
「ほら、みにゃとあーんする」
「恥ずかしいって……」
「ほらほら!」
さすがに27歳の男にこれはない。
何かの羞恥プレイかと思ってしまうほどだ。
「ほら、もうやめよ? ホットケーキも冷めちゃうよ?」
「また温めればいいよ。もう、電子レンジの使い方もわかるし」
「くっ……」
このままだとずっと言い合いが繰り返されるのだろう。
僕が仕方なく口を開けると、ホットケーキが放り込まれる。
少し食べさせ方が雑だが、それもどこかルシアンぽかった。
けれど、彼の手が僕の頬に触れた瞬間、心臓が跳ねた。
大きくて、あたたかくて、どこか頼もしい手をしていた。
ああ、この子はもう僕の知っていた〝少年〟じゃない。
そう現実を突きつけられた気がした。
「うん、ホットケーキはいつ食べても美味しいね」
それでもホットケーキはいつもと変わらない味がする。
「俺が食べさせてあげるからじゃなくて?」
さっきからこのムズムズするのはなんだろうと思っていた。
だが、今になってはっきりと気づいた。
「やっぱりルシアンが可愛くない!」
いつものルシアンは自分のことを〝僕〟と呼んでいた。
ただ、今は〝俺〟と呼び、低くなった声がゾクッとする。
「何言ってるの? 俺はいつでも可愛いよ?」
「うっ……」
目をキラキラさせて僕を見つめてくる。
こういうところは変わらないよ。
だけど、なんというのか……。
計算高くなっている!
僕はルシアンの手からフォークを奪うと、そのまま向きを変える。
傍から見たら、座っているルシアンに馬乗りになっている状態だ。
「可愛いなら食べさせられるのはルシアンだよね?」
「ふふふ、あーん!」
そう言って、ルシアンは口を開けて待っていた。
俺はホットケーキをルシアンの口の中に入れると、嬉しそうに微笑んでいた。
この笑顔を見ていると、何も言えなくなる。
僕はため息混じりに笑いながら、もう一切れをフォークに刺した。
確かに昔のルシアンとはやっていることは変わらない。
だけど、ルシアンであって、ルシアンじゃないってのが正解だろう。
その後もルシアンが口を開けて待っているから、僕はホットケーキを全て食べさせ続けた。
「次は、一緒に作ろっか……」
作り方を教えれば、一人で準備して一人で食べるだろう。
僕はなんとなくそう思った。
「うん! みにゃとが教えてくれるなら、頑張って覚えないとね!」
ルシアンの言葉に胸の奥が少しだけ熱くなる。
大きくなっても、どこか頼ってくれるルシアンがそこにはいた。
ただ、急な成長には僕の心は追いつけないでいた。
「なに?」
「……さすがに、これはちょっと違うと思うんだけど?」
思わず語尾が弱くなる。
目の前の光景に頭が追いつかない。
いつものようにホットケーキを作って、食べるつもりでいた。
だが、なぜか思っていたことと違う形になり、僕は戸惑いを隠せない。
「別に俺がみにゃとに食べさせてもおかしくないよね?」
「いや、さすがにおかしいし、これもおかしくない?」
僕はルシアンの足元に指をさす。
だが、ルシアンはいつものように首を傾げていた。
「おかしくないよ?」
「うっ……」
そう言われると、不思議と反論できなくなる。
まっすぐな瞳に見つめられて、言葉が喉の奥で止まった。
だって――。
ルシアンの膝の上に僕が座るって、普通に考えておかしいでしょ!
しかも、肩越しに伝わる体温がやけに熱い。
鼓動のリズムが僕に重なって響いてくる。
ホットケーキを作るところまではいつも通りでよかった。
だが、その後からおかしくなった。
普段ならルシアンが嬉しそうにホットケーキを運ぶでしょ。
でも今回はホットケーキと僕が抱えられて運ばれることになった。
そして、そのまま膝の上に抱きかかえられる形で座らされ、口元にはフォークに刺したホットケーキが押さえつけられた。
「ほら、みにゃとあーんする」
「恥ずかしいって……」
「ほらほら!」
さすがに27歳の男にこれはない。
何かの羞恥プレイかと思ってしまうほどだ。
「ほら、もうやめよ? ホットケーキも冷めちゃうよ?」
「また温めればいいよ。もう、電子レンジの使い方もわかるし」
「くっ……」
このままだとずっと言い合いが繰り返されるのだろう。
僕が仕方なく口を開けると、ホットケーキが放り込まれる。
少し食べさせ方が雑だが、それもどこかルシアンぽかった。
けれど、彼の手が僕の頬に触れた瞬間、心臓が跳ねた。
大きくて、あたたかくて、どこか頼もしい手をしていた。
ああ、この子はもう僕の知っていた〝少年〟じゃない。
そう現実を突きつけられた気がした。
「うん、ホットケーキはいつ食べても美味しいね」
それでもホットケーキはいつもと変わらない味がする。
「俺が食べさせてあげるからじゃなくて?」
さっきからこのムズムズするのはなんだろうと思っていた。
だが、今になってはっきりと気づいた。
「やっぱりルシアンが可愛くない!」
いつものルシアンは自分のことを〝僕〟と呼んでいた。
ただ、今は〝俺〟と呼び、低くなった声がゾクッとする。
「何言ってるの? 俺はいつでも可愛いよ?」
「うっ……」
目をキラキラさせて僕を見つめてくる。
こういうところは変わらないよ。
だけど、なんというのか……。
計算高くなっている!
僕はルシアンの手からフォークを奪うと、そのまま向きを変える。
傍から見たら、座っているルシアンに馬乗りになっている状態だ。
「可愛いなら食べさせられるのはルシアンだよね?」
「ふふふ、あーん!」
そう言って、ルシアンは口を開けて待っていた。
俺はホットケーキをルシアンの口の中に入れると、嬉しそうに微笑んでいた。
この笑顔を見ていると、何も言えなくなる。
僕はため息混じりに笑いながら、もう一切れをフォークに刺した。
確かに昔のルシアンとはやっていることは変わらない。
だけど、ルシアンであって、ルシアンじゃないってのが正解だろう。
その後もルシアンが口を開けて待っているから、僕はホットケーキを全て食べさせ続けた。
「次は、一緒に作ろっか……」
作り方を教えれば、一人で準備して一人で食べるだろう。
僕はなんとなくそう思った。
「うん! みにゃとが教えてくれるなら、頑張って覚えないとね!」
ルシアンの言葉に胸の奥が少しだけ熱くなる。
大きくなっても、どこか頼ってくれるルシアンがそこにはいた。
ただ、急な成長には僕の心は追いつけないでいた。
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