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第一章 少年との出会い
29.聖男、気づいたら片想い ※一部ルシアン視点
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「楽しい時間はあっという間だね」
ルシアンとの楽しい時間はすぐに過ぎていった。
買い物に行ったり、動物園に行ったり、映画館にも遊びに行った。
もちろん本屋でたくさんの本も購入した。
そのほとんどが良い思い出になっている。
「みにゃと、俺のこと忘れないでね?」
「それはルシアンでしょ?」
「俺は忘れないよ!」
真剣な眼差しを向けられるとやっぱりドキッとしてしまう。
これは勘違い。僕は自分にそう言い聞かせた。
「じゃあ、行ってくるね」
「あっ、そういえば由香からこれを預かってたんだ」
僕は由香から黒い袋に入った本をいくつか渡されていた。
「開けるな危険って書いてあるけど、何が入ってるの?」
ルシアンは袋から一冊取り出すと、中身を見ずにすぐに袋に戻した。
「みみみ……みにゃとには秘密のやつだな!」
頬を少し赤く染めて、そっぽ向く姿に僕は思わずムッとする。
帰る時まで由香とルシアンは僕を除け者にする。
毎回迎えにくるルシアンに由香は何かを教えていたが、僕が来ると急に静かになる。
まるで僕に内緒で二人だけの隠しごとをしているみたいだ。
チラッと聞こえた声でも〝ちゃんと準備は必要〟とか〝相手の気持ちを優先しなさい〟とか何を言ってるのかわからなかった。
「みにゃと……そんな顔しないで」
ルシアンは心配そうに僕の頬に触れる。
その手はとても暖かくて居心地が良い気がした。
「うっ……」
「ごごご、ごめん!」
無意識にルシアンの手に頬擦りをしていた。
まるで僕が猫みたいだ。
「じゃあ、これでしばらくお別れだね」
「あぁ、行ってきます」
いつものようにルシアンが呪文を唱えると、どこからか風が吹き込みクローゼットの扉が勝手に開く。
光が集まって消えかけるルシアンを見つめていると、胸が苦しくなる。
もう目の前にいるルシアンとは会えなくなるんだ。
そう思うと、自然と寂しくなってきた。
「大好き……」
無意識に僕は小さな声で呟いていた。
きっとルシアンには聞こえてないだろう。
静かな部屋に残された僕はボーッと考える。
「えっ……今なんて言った……」
なぜあんなことを言ってしまったのだろう。
薄々は感じていたが、まさかここにきて本当に自覚するとは思わなかった。
僕がルシアンのことを恋愛対象として好きになっていたことを。
♢
光の中に包まれながら俺は振り返った。
部屋の空気も、光も、声も全部遠ざかっていく。
その瞬間……わずかに聞こえた気がした。
「みにゃと、まさか俺のこと……」
心臓が跳ねて、喉が熱くなった。
けれどそのまま返すことはできなかった。
だって、言葉を返したら、きっとこの気持ちはもう抑えられなくなる。
今からしばらくは会えない。
その事実だけで胸が押し潰される。
「ルシアン様、おかえりなさい」
相変わらず埃臭いこの部屋が俺にとったら唯一大好きなあの人に会える場所だ。
「少しはあっちの世界の思い出に浸らせてくれよ」
「そんなこと言ってる暇はありませんよ。もう、明日から学園の入学式ですからね」
「はぁん!? もうそんなに経っていたのか!」
予定では学園の数週間前に帰ってくる予定だったが、時間軸が変わったのか明日が入学式のようだ。
「また、ルシアン様が消えたって使用人が大騒ぎでしたよ?」
「まぁ、あいつら俺のことなんて気にしてないだろ」
「それもそうですね」
部下はクスリと笑った。
この世界で俺のことを気にするのは、拾ったこいつと畑仕事をしている孤児ぐらいだろう。
「それでルシアン様、これは何ですか?」
俺が目を向けると、部下は黒い袋から飛び出た本を手に取っていた。
「あわわ……それは大事なものだ!」
すぐに俺は取り返して、部下を睨みつける。
これはあいつから手渡された大事な〝BL〟って呼ばれるやつだ。
何でも湊の心を射止めるために、勉強に使えるとオススメされた。
丁寧に描かれた絵はどことなく湊に似ている。
寂しいときに思い出せるようにくれたのだろう。
「へー、これがルシアン様の言ってた聖男ですか?」
「湊のこと……なんだそれ⁉︎」
「一緒に袋の中から出てきましたよ?」
そこには湊が入っているかのような紙が一枚入っていた。
きっとあいつが一緒に入れてくれたのだろう。
さすが向こうの世界は何もかも技術が発展しているからな。
あの女にしてはよくやったと褒めてやりたいぐらいだ。
「湊さんって言うんですね……」
「なっ……お前にはやらんぞ?」
「わかってますよ。ただ、モテそうな方ですね」
部下の言葉に俺は心配になってきた。
湊からそういう話は一度も聞いたことがない。
あいつからは付き合っている彼氏や彼女はいないと聞いている。
だが、湊の見た目だと確実にモテそうだからな……。
「はぁー、一人にするのが怖いな」
「さぁさぁ、早く学園に行かないと間に合わさないですからねー」
呑気に部下は俺を引っ張っていくが、俺は胸騒ぎがして仕方ない。
これから約5年間は湊に会えなくなる。
しばらくは湊が描かれた紙を頼りに頑張るしかないか……。
「はぁー、もう会いたい」
俺は湊のことを思い、大きなため息をついた。
ルシアンとの楽しい時間はすぐに過ぎていった。
買い物に行ったり、動物園に行ったり、映画館にも遊びに行った。
もちろん本屋でたくさんの本も購入した。
そのほとんどが良い思い出になっている。
「みにゃと、俺のこと忘れないでね?」
「それはルシアンでしょ?」
「俺は忘れないよ!」
真剣な眼差しを向けられるとやっぱりドキッとしてしまう。
これは勘違い。僕は自分にそう言い聞かせた。
「じゃあ、行ってくるね」
「あっ、そういえば由香からこれを預かってたんだ」
僕は由香から黒い袋に入った本をいくつか渡されていた。
「開けるな危険って書いてあるけど、何が入ってるの?」
ルシアンは袋から一冊取り出すと、中身を見ずにすぐに袋に戻した。
「みみみ……みにゃとには秘密のやつだな!」
頬を少し赤く染めて、そっぽ向く姿に僕は思わずムッとする。
帰る時まで由香とルシアンは僕を除け者にする。
毎回迎えにくるルシアンに由香は何かを教えていたが、僕が来ると急に静かになる。
まるで僕に内緒で二人だけの隠しごとをしているみたいだ。
チラッと聞こえた声でも〝ちゃんと準備は必要〟とか〝相手の気持ちを優先しなさい〟とか何を言ってるのかわからなかった。
「みにゃと……そんな顔しないで」
ルシアンは心配そうに僕の頬に触れる。
その手はとても暖かくて居心地が良い気がした。
「うっ……」
「ごごご、ごめん!」
無意識にルシアンの手に頬擦りをしていた。
まるで僕が猫みたいだ。
「じゃあ、これでしばらくお別れだね」
「あぁ、行ってきます」
いつものようにルシアンが呪文を唱えると、どこからか風が吹き込みクローゼットの扉が勝手に開く。
光が集まって消えかけるルシアンを見つめていると、胸が苦しくなる。
もう目の前にいるルシアンとは会えなくなるんだ。
そう思うと、自然と寂しくなってきた。
「大好き……」
無意識に僕は小さな声で呟いていた。
きっとルシアンには聞こえてないだろう。
静かな部屋に残された僕はボーッと考える。
「えっ……今なんて言った……」
なぜあんなことを言ってしまったのだろう。
薄々は感じていたが、まさかここにきて本当に自覚するとは思わなかった。
僕がルシアンのことを恋愛対象として好きになっていたことを。
♢
光の中に包まれながら俺は振り返った。
部屋の空気も、光も、声も全部遠ざかっていく。
その瞬間……わずかに聞こえた気がした。
「みにゃと、まさか俺のこと……」
心臓が跳ねて、喉が熱くなった。
けれどそのまま返すことはできなかった。
だって、言葉を返したら、きっとこの気持ちはもう抑えられなくなる。
今からしばらくは会えない。
その事実だけで胸が押し潰される。
「ルシアン様、おかえりなさい」
相変わらず埃臭いこの部屋が俺にとったら唯一大好きなあの人に会える場所だ。
「少しはあっちの世界の思い出に浸らせてくれよ」
「そんなこと言ってる暇はありませんよ。もう、明日から学園の入学式ですからね」
「はぁん!? もうそんなに経っていたのか!」
予定では学園の数週間前に帰ってくる予定だったが、時間軸が変わったのか明日が入学式のようだ。
「また、ルシアン様が消えたって使用人が大騒ぎでしたよ?」
「まぁ、あいつら俺のことなんて気にしてないだろ」
「それもそうですね」
部下はクスリと笑った。
この世界で俺のことを気にするのは、拾ったこいつと畑仕事をしている孤児ぐらいだろう。
「それでルシアン様、これは何ですか?」
俺が目を向けると、部下は黒い袋から飛び出た本を手に取っていた。
「あわわ……それは大事なものだ!」
すぐに俺は取り返して、部下を睨みつける。
これはあいつから手渡された大事な〝BL〟って呼ばれるやつだ。
何でも湊の心を射止めるために、勉強に使えるとオススメされた。
丁寧に描かれた絵はどことなく湊に似ている。
寂しいときに思い出せるようにくれたのだろう。
「へー、これがルシアン様の言ってた聖男ですか?」
「湊のこと……なんだそれ⁉︎」
「一緒に袋の中から出てきましたよ?」
そこには湊が入っているかのような紙が一枚入っていた。
きっとあいつが一緒に入れてくれたのだろう。
さすが向こうの世界は何もかも技術が発展しているからな。
あの女にしてはよくやったと褒めてやりたいぐらいだ。
「湊さんって言うんですね……」
「なっ……お前にはやらんぞ?」
「わかってますよ。ただ、モテそうな方ですね」
部下の言葉に俺は心配になってきた。
湊からそういう話は一度も聞いたことがない。
あいつからは付き合っている彼氏や彼女はいないと聞いている。
だが、湊の見た目だと確実にモテそうだからな……。
「はぁー、一人にするのが怖いな」
「さぁさぁ、早く学園に行かないと間に合わさないですからねー」
呑気に部下は俺を引っ張っていくが、俺は胸騒ぎがして仕方ない。
これから約5年間は湊に会えなくなる。
しばらくは湊が描かれた紙を頼りに頑張るしかないか……。
「はぁー、もう会いたい」
俺は湊のことを思い、大きなため息をついた。
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