突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

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第一章 婚約破棄と新たなる幸せ

第八話 悲しみの公爵令嬢

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「さて、ユニス嬢」

 そう改まって、グレン殿下はわたしをゆっくりと離して下さいます。

「はい、殿下」

「ここまでは、僕たちが我慢する場面だった。

 君のーー

 ああ、すまない。

 二人の時は、ざっくばらんでもいいかな?

 なかなか、宮廷に戻る機会も少なくてね。

 普段は平原で騎士団の演習などするしか能の無い私だから」

 と、殿下は僕から私へと。

 個人から公人へと仮面をつけられます。

「もったいないお言葉でございます、殿下。

 わたしのようなものに、そのようなお優しい物言いをして頂けるなどーー」

 と、わたしはついつい、かしこまってしまいます。

 心の中では、あなたに君と。

 いいえ、ユニス、と。

 その優しい紅い瞳で語りかけていただきたいのに。

 それをお伝えすることはわたしにはとてもできません。

 婚約の申し込みを頂きましたが、それはこのあとに、おおやけの場での皇帝陛下からの御許可も必要なこと。

 いまはまだ、単なる公爵令嬢の身。

 過分な期待とわがままは、殿下を困らせるだけだと思ったからです。

「ああ、困ったな。

 私はどうにも、女性の扱いが下手らしい。

 では、我が未来の夫人たる君。

 実は、私はとても負けず嫌いなのだ」

 負けず嫌い?

 それはつまりーー

 神聖ムゲール王国に、先ほどの場をいいようにされた、という意味でしょうか?

「殿下、しかし。

 わたしとの婚約を、あのーー」

 と、わたしはテラスの向こうで集まり、晩餐会の話題をさらった妹とその婚約者を見ます。

 多くの貴族諸侯やその令息令嬢が、二人の周りで事のなりゆきを見守っているーー

「まさか、まだ事態はーー」

 そうだよ、ユニス、と殿下はおっしゃいます。

「君がここにいることを気づいている者は、まあ、少ないだろう。

 なにせ、両国の貴族令息令嬢とはいえ、集まったのは次男や三男。
 
 次女や三女だ。産まれてから屋敷や領地を出たこともない世間知らずたちが多い。

 その彼らに、この晩餐会の最大の余興ともいうべきーー」

 と、そこまで言われてしまうとわたしにも、殿下のおっしゃりたいことはわかります。

 でもーー

 余興とまで言われては‥‥‥

 自身のあまりもの愚かさと、殿下の御心をわずらわせてしまった情けなさに。
 
「ユニスーー!?

 ああ、すまない。

 どうか許しておくれ‥‥‥。君を傷つける気はなかったのだ。

 すまない、ユニス。

 私はこういう気遣いがーー」

 と、殿下はいつの間にか涙を流していたわたしを抱きしめて下さいます。

 わたしは少しだけ。

 ほんの少しだけ、殿下に意地悪をしたくなりました。

 その優しさに甘えたくて。

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