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Ⅱ
しおりを挟む結局、バカ三人衆は5日間の謹慎処分となり、翌週には教室に戻ってくるらしい。Glareを浴びたSubの生徒たちも大事には至らなかったため、翌日には登校していた。
そして、翌週。
月曜日の放課後。
バカ三人衆もいる教室に、彼はやって来た。
「暈來希くんっている?」
保健室で出会った小柄な生徒だ。あのときは気付かなかったが、整った顔をしている。ぱっちりした目に色素の薄い茶色の髪。全体的に細く、身長は俺の10cm下くらいだろうか。かわいいより美人という言葉のほうが似合う。
「....はい。」
「君が來希くん?」
「...ああ。」
「そっか、えっと。はじめまして、じゃないけどはじめまして。保健室利用カード、書いてくれてありがとう。メモも残してくれたみたいで、保健医さんも助かったって。」
「ああ、それは良かった。」
「あ、自己紹介がまだだったね。僕は、1年C組の柚岡璃華だよ。よろしくね。」
「ああ、よろしく。俺の名前は知ってるみたいだが、暈來希だ。」
握手をして微笑み合ってると、またバカ三人衆がやらかした。こいつ等はやらかさないと生きていけないのか?この学校に合ってねぇって。普通高校に行け。
「Subは、Subとしか仲良くできないもんな。」
「支配される側でまとまらないと生きていけないなんてかわいそうにw」
「同情するよww」
クラスの視線は彼らにとって途轍もなく痛い筈なのに、よく言えるな。その度胸を尊敬しよう。
「お前と違って、SubらしいSubだな。俺と一回どうだ?」
「俺も入れてよ~。かわいこちゃんと遊びた~い。」
「やめとけよ、あいつからせっかくのおトモダチ、奪っちゃ可哀想だろwww」
クラス内にバカ三人衆の声しか聞こえない。全員が冷たい蔑むような視線を送っている。バカ共の笑い声が響く中、凛とした声が通った。
「...あのさ、僕、Domだけど?」
「「「はぁ?」」」
「ふっwwwその見た目で、Domは無いだろwww」
「それなw、強がって嘘ついちゃだめでしょw」
「例え、真実だとしても、こんなナヨナヨしたヤツと俺らが同じって、ありえねぇだろwww」
再び笑いだし、柚岡を馬鹿にするバカ三人衆。柚岡の方を見ると目を細めて、バカ共に視線を送っている。その瞳から強いGlareがバカ三人衆だけに向けて放たれる。他のSubには感じさせないくらい完璧なコントロール。
バカ三人衆も、馬鹿にした相手が自分たちより遥かに上にランクで勝てないと分かったのか、また、Glareにより恐怖心を煽られたのか、後退って、尻餅をついていた。腰を抜かして立てないようで、「悪かった」と必死に謝ると、柚岡はGlareを放つのを止めてこちらを向いた。
その瞬間、感じたことのない感情が湧き上がり、先週のSubの生徒のように、足が震えはじめていた。柚岡の瞳に残ったGlareを、目があった瞬間に浴びてしまったようだった。
柚岡も俺の異変に気付いたのか、俺の手を引いて教室を駆け出た。廊下を速歩きで連れて行かれて、最近はどの学校にもある第二性緊急時専用室の前で止まり、先に部屋に入った柚岡に引き込まれた。
室内に入って扉を閉めてしまえば、完全防音の6畳ほどの密室になる。鍵が閉められた音が耳に入ったのと同時に、俺はその場に膝をついて座り込んでしまった。
「っ、暈くん!」
「ぁ、...な、に。」
「大丈夫?僕のGlare浴びちゃった?」
「ぐ、れあ。これが?」
「Glare浴びたことないの?」
「浴び、たことはある、けど、こんなの、しらない、
っ、こわい、やだ、こわい。ごめんなさい、ごめん、なさい。」
「っ、慣れてないのか...。大丈夫、大丈夫。」
柚岡が俺の背中を擦っている。俺は自分で何を言っているのか分からなくなっていた。耳に入る柚岡の声しか分からなくなっていた。
「っ、ヒュッ、は、ごめ、っは、...。」
「暈くん、話さなくていいよ。過呼吸になりかけているから、ゆっくり呼吸しよう。」
ゆっくり?呼吸?俺は呼吸してるぞ?何を言っているんだ。
「ゆっくりでいいから、僕の声に合わせて、吸って、吐いて、吸って、吐いて。そう上手だね。」
背中を擦る柚岡の手が冷え切った俺には温かく感じる。
「暈くん、僕のことわかる?」
「...ゆず、おか。」
「うん、そう。合ってるよ。えらいね。」
「...?...な、に?」
「暈くんは、Playしたことある?」
「...な、い。」
「どうやって欲求を抑えてたの?」
「...もと、もとDomに対して、そういう、欲求、感じたことがなくて、。ぐれ、あ、も浴びても、なんとも、なくて。一応、抑制剤はまい、にち飲んでて、」
なんで、おれはこんなにスラスラ答えてるんだ?個人情報だろ。なんで...。
「こんな、なんで、しらない、こわい、こわい。」
「大丈夫、大丈夫。今、暈くんは僕のGlareを浴びちゃって欲求が出てきてるんだ。怖いことじゃないよ。」
「こわ、くない?」
「うん、取り敢えず、その欲求をどうにかしようね。怖くないけど、暈くんは怖くなっちゃうからね。」
「...なに、するの?」
「暈くんは、Playも全部初めてだからね、ゆっくりやろう。」
そう言って柚岡は俺から離れて、俺の正面に屈む。
「...な、に?」
「ゆっくりでいいからね。おいで。」
「っ、やだ、こわい、や、っ、。」
「大丈夫。大丈夫。僕は、目の前だよ。僕のとこまでおいで。」
脳が、従わなければならないと、信号を出しているのがわかる。でも、身体が、足が動かない。目の前、柚岡の顔は怒っていない。ゆっくり、ゆっくりでいい。ゆっくり動かない足を引きずるようにして前に進む。柚岡の前まで辿り着くと、頭に手を置かれる。
「いい子、いい子、良くできました。」
「...っなに、。」
「これがリワードだよ。」
「これ、が、。なん、か、ふわふわ。」
「そっか、それじゃあ、あと少しで欲求が満たされるかもね。」
「ほ、と?」
「うん。じゃあ、立って。ゆっくりね。僕の手使っていいよ。」
柚岡が差し出す、手を握ってゆっくり立ち上がる。
「そう、上手だね。えらいよ。」
「ん、...もっと、。」
「それじゃあ、あっちの簡易ベッドに座ろう。」
「うん。」
柚岡に手を引かれて、簡易ベッドに座る。...座ろうとしたが、立ち尽くしてしまった。なぜ?
「...どうしたの?座れない?」
「...わか、ない。」
「うーん、座って。」
「あ、。」
ベッドに座ると、柚岡が頬を撫でながら褒めてくれる。
「良くできました。暈くんは褒められたんだね。」
「...ん。」
もっと、褒めて、撫でてほしいと脳が言っている。今なら何でも言うことを聞いてしまいそうだ。....そんなの、俺じゃない。
「...っ、やっ、。」
「まだ、本能と身体がうまく噛み合ってないのかな?」
「わ、かんな、い。」
「大丈夫、大丈夫。怖くないよ。」
「こわく、ない。」
「うん、怖くない。今日は眠ってしまおうか。」
「寝る?俺だけ?」
「大丈夫だよ。どこにも行かないから。目が覚めたとき、君の隣りにいると約束する。」
「...ん。」
「さあ、おやすみ。」
そのまま俺は眠りについた。
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