不透明な君と。

papiko

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柚岡璃華Side.

僕は、あの日、風邪で体調不良になった。朝は平気だったが、段々と、悪化して結局保健室に行く羽目になった。

だが、それで彼と出会うことができた。僕の最愛。
体調が戻って、彼の教室に会いに行ったときに、気付いた。彼が自分と同じ高ランクのSubであることに。

彼はSubなのに、彼と僕を罵る三人組のGlareを浴びているのに平然としていた。その高潔な姿に一目惚れした。しかし、僕の溢れ出たGlareを浴びた彼は、震えていた。そんな姿を他のDomにもSubにも見られたくなくて、急いで第二性緊急時専用室に彼を連れて入った。

部屋に入り、鍵をかけると彼はその場に座り込んでしまった。小刻みに震えて怯えていた。

聞けば、Glareもしっかり受けたのは初めてらしく、それだけで恐怖していた。本能と理性、身体が反発しあっているようで、すぐにでもSub Dropに落ちるくらい不安定な様子だった。

すべての行動を、命令commandをゆっくり、大丈夫と教えながら、欲求を満たすことができた。

保健医の手を借りて、彼を自室に運んでもらい、Sub寮の寮母さんに約束だから、と頼み込み彼の部屋に居ることの許可をもらい、ベッドで眠る彼の髪を梳く。

「ふふ、あのとき3人に出したGlareは、Defenseディフェンスだったんだよ。早く目を覚まして、僕のSub。」

暫くすると睫毛が震え、綺麗なヘーゼルブラウンの瞳が見えた。

「おはよう。ひかさくん。」
「....?」
「僕が誰か分かる?」
「...柚岡、璃華。」
「うん、そう。」
「....ここは、俺の部屋?」
「そう、保健医の佐々木さんに手伝って貰ったんだ。流石に僕じゃ、ひかさくんを運べないからね。」
「あ、ごめん、なさい?」
「んー?ひかさくん、今怖いことある?」
「ないと思うけど。」
「じゃあ、Playの名残かな?」
「?...なにが。」
「僕に『ごめんなさい』って、君の口調なら『ごめん』とか『すまねぇ』の気がして。」
「...たしかに?」
「まあ、そのうち戻るよ。僕は、約束を守ったからね。僕にもご褒美くれない?」
「俺が?お、まえ、に?...?、?」
「なるほど、ひかさくん、僕にタメ口でいいよ。」
「?...ああ。」
「Play中もタメ口でいいよ。」
「...?...またやるのか?」
「Playすれば、こんな抑制剤飲まなくていいんだよ。」

そう言って、寝てる間に見つけた大量の抑制剤を見せる。

「いい?この抑制剤はね、軽いけど中毒性があるからって禁止されてるやつなんだよ。だから、もう飲んじゃだめだよ?」
「...そうなのか。でも、飲まないと...。」
「ほら、飲まないとって思ってる。それが中毒性ってことだよ。飲まないと不安になるんだ。多分、ひかさくんがPlay中に本能と身体が分離していたのは、長年飲み続けた抑制剤の効果のせいだよ。」
「...もう、飲まない。」
「うん、欲求が出てきたら、僕に言って。手伝うよ。」
「...うん。」
「それで、ご褒美なんだけど。」
「ま、待て、まず約束が分からない。」
「君が目を覚ましたときに、君の隣にいるっていう約束。」
「...なんとなく、覚えてる。俺はお前に何をすればいい?」

さすがひかさくん。男前だ。かっこいい。

「じゃあ、僕の、パートナーになってよ。」

「パートナー?俺が?」
「そう。だめ?」
「い、いいけど。俺、初心者もいいとこだぜ?」
「いいよ、かわいいひかさくんも僕は好き。」
「すっ、...好きっとか、言うな/////」

かわいい、かわいい。

「何度でも言うよ。僕の可愛くてかっこいいSub。僕のパートナーになってくれる?」
「...、おう。」
「ふふ、ありがとう。今度Collarを買いに行こうね。」
「Collar?」
「パートナーになった証だよ。」
「分かった。」
「あと、セーフワードSafe Wordも決めないとね。何がいい?」
「普通はどうやって決めるんだ?」
「そうだね、よく聞くのはSubの嫌いな物とかかな?」
「俺の、嫌いな物...。.....家。」
「家?お家?」
「ああ、母さんがいなくなった、あの家は嫌いだ。」
「じゃあ、セーフワードSafe Wordは、家ね。」
「ああ。」

「よろしくね。僕の愛しいSub。」
「よろしく、柚岡。」

....パートナーになって、名字で呼び合うの?なんか他人行儀じゃない?でも、ちゃんと知り合ったの今日だし。でも、パートナーになった....。

「ねえ、ひかさくん。」
「なんだ。」
「お互い名字で呼び合うのは、ちょっと他人行儀だと思わない?」
「...たしかに。じゃあ、璃華りか。」
「...來希らいきくん?」
「くん、も他人行儀じゃねぇの?」
「....ら、來希。」
「おう。」
「なんか、恥ずかしい。///」
「璃華もかわいいじゃねぇか。」
「うう~。」

一晩、來希の部屋に泊まらせてもらい、お互いの好きなものを聞いたり、家族について聞いたりした。


その週の休日に外出届を出して、二人で街にでて、Collarを買った。針金のように細く、でも光を反射すると輝くシルバーのCollarを贈った。

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