不透明な君と。

pAp1Ko

文字の大きさ
3 / 5

しおりを挟む
柚岡璃華Side.

僕は、あの日、風邪で体調不良になった。朝は平気だったが、段々と、悪化して結局保健室に行く羽目になった。

だが、それで彼と出会うことができた。僕の最愛。
体調が戻って、彼の教室に会いに行ったときに、気付いた。彼が自分と同じ高ランクのSubであることに。

彼はSubなのに、彼と僕を罵る三人組のGlareを浴びているのに平然としていた。その高潔な姿に一目惚れした。しかし、僕の溢れ出たGlareを浴びた彼は、震えていた。そんな姿を他のDomにもSubにも見られたくなくて、急いで第二性緊急時専用室に彼を連れて入った。

部屋に入り、鍵をかけると彼はその場に座り込んでしまった。小刻みに震えて怯えていた。

聞けば、Glareもしっかり受けたのは初めてらしく、それだけで恐怖していた。本能と理性、身体が反発しあっているようで、すぐにでもSub Dropに落ちるくらい不安定な様子だった。

すべての行動を、命令commandをゆっくり、大丈夫と教えながら、欲求を満たすことができた。

保健医の手を借りて、彼を自室に運んでもらい、Sub寮の寮母さんに約束だから、と頼み込み彼の部屋に居ることの許可をもらい、ベッドで眠る彼の髪を梳く。

「ふふ、あのとき3人に出したGlareは、Defenseディフェンスだったんだよ。早く目を覚まして、僕のSub。」

暫くすると睫毛が震え、綺麗なヘーゼルブラウンの瞳が見えた。

「おはよう。ひかさくん。」
「....?」
「僕が誰か分かる?」
「...柚岡、璃華。」
「うん、そう。」
「....ここは、俺の部屋?」
「そう、保健医の佐々木さんに手伝って貰ったんだ。流石に僕じゃ、ひかさくんを運べないからね。」
「あ、ごめん、なさい?」
「んー?ひかさくん、今怖いことある?」
「ないと思うけど。」
「じゃあ、Playの名残かな?」
「?...なにが。」
「僕に『ごめんなさい』って、君の口調なら『ごめん』とか『すまねぇ』の気がして。」
「...たしかに?」
「まあ、そのうち戻るよ。僕は、約束を守ったからね。僕にもご褒美くれない?」
「俺が?お、まえ、に?...?、?」
「なるほど、ひかさくん、僕にタメ口でいいよ。」
「?...ああ。」
「Play中もタメ口でいいよ。」
「...?...またやるのか?」
「Playすれば、こんな抑制剤飲まなくていいんだよ。」

そう言って、寝てる間に見つけた大量の抑制剤を見せる。

「いい?この抑制剤はね、軽いけど中毒性があるからって禁止されてるやつなんだよ。だから、もう飲んじゃだめだよ?」
「...そうなのか。でも、飲まないと...。」
「ほら、飲まないとって思ってる。それが中毒性ってことだよ。飲まないと不安になるんだ。多分、ひかさくんがPlay中に本能と身体が分離していたのは、長年飲み続けた抑制剤の効果のせいだよ。」
「...もう、飲まない。」
「うん、欲求が出てきたら、僕に言って。手伝うよ。」
「...うん。」
「それで、ご褒美なんだけど。」
「ま、待て、まず約束が分からない。」
「君が目を覚ましたときに、君の隣にいるっていう約束。」
「...なんとなく、覚えてる。俺はお前に何をすればいい?」

さすがひかさくん。男前だ。かっこいい。

「じゃあ、僕の、パートナーになってよ。」

「パートナー?俺が?」
「そう。だめ?」
「い、いいけど。俺、初心者もいいとこだぜ?」
「いいよ、かわいいひかさくんも僕は好き。」
「すっ、...好きっとか、言うな/////」

かわいい、かわいい。

「何度でも言うよ。僕の可愛くてかっこいいSub。僕のパートナーになってくれる?」
「...、おう。」
「ふふ、ありがとう。今度Collarを買いに行こうね。」
「Collar?」
「パートナーになった証だよ。」
「分かった。」
「あと、セーフワードSafe Wordも決めないとね。何がいい?」
「普通はどうやって決めるんだ?」
「そうだね、よく聞くのはSubの嫌いな物とかかな?」
「俺の、嫌いな物...。.....家。」
「家?お家?」
「ああ、母さんがいなくなった、あの家は嫌いだ。」
「じゃあ、セーフワードSafe Wordは、家ね。」
「ああ。」

「よろしくね。僕の愛しいSub。」
「よろしく、柚岡。」

....パートナーになって、名字で呼び合うの?なんか他人行儀じゃない?でも、ちゃんと知り合ったの今日だし。でも、パートナーになった....。

「ねえ、ひかさくん。」
「なんだ。」
「お互い名字で呼び合うのは、ちょっと他人行儀だと思わない?」
「...たしかに。じゃあ、璃華りか。」
「...來希らいきくん?」
「くん、も他人行儀じゃねぇの?」
「....ら、來希。」
「おう。」
「なんか、恥ずかしい。///」
「璃華もかわいいじゃねぇか。」
「うう~。」

一晩、來希の部屋に泊まらせてもらい、お互いの好きなものを聞いたり、家族について聞いたりした。


その週の休日に外出届を出して、二人で街にでて、Collarを買った。針金のように細く、でも光を反射すると輝くシルバーのCollarを贈った。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。 更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

不器用な僕とご主人様の約束

いち
BL
敬語のクラブオーナー×年下のやんちゃっ子。遊んでばかりいるSubの雪はある日ナイトクラブでDomの華藍を知ります。ちょっと暑くなってくる前に出会った二人の短編です。 🍸カンパリオレンジのカクテル言葉は初恋だそうです。素敵ですね。 ※pixivにも同様の作品を掲載しています

【完結】俺だけの○○ ~愛されたがりのSubの話~

Senn
BL
俺だけに命令コマンドして欲しい 俺だけに命令して欲しい 俺の全てをあげるから 俺以外を見ないで欲しい 俺だけを愛して……… Subである俺にはすぎる願いだってことなんか分かっている、 でも、、浅ましくも欲張りな俺は何度裏切られても望んでしまうんだ 俺だけを見て、俺だけを愛してくれる存在を Subにしては独占欲強めの主人公とそんな彼をかわいいなと溺愛するスパダリの話です! Dom/Subユニバース物ですが、知らなくても読むのに問題ないです! また、本編はピクシブ百科事典の概念を引用の元、作者独自の設定も入っております。 こんな感じなのか〜くらいの緩い雰囲気で楽しんで頂けると嬉しいです…!

悪夢の先に

紫月ゆえ
BL
人に頼ることを知らない大学生(受)が体調不良に陥ってしまう。そんな彼に手を差し伸べる恋人(攻)にも、悪夢を見たことで拒絶をしてしまうが…。 ※体調不良表現あり。嘔吐表現あるので苦手な方はご注意ください。 『孤毒の解毒薬』の続編です! 西条雪(受):ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。 白銀奏斗(攻):勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。

世界で一番優しいKNEELをあなたに

珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。 Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。 抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。 しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。 ※Dom/Subユニバース独自設定有り ※やんわりモブレ有り ※Usual✕Sub ※ダイナミクスの変異あり

処理中です...