2 / 132
第一章 帰還と波乱
第二話 側妃様(ミーシャ視点)
しおりを挟む
お姉様が居ない日常。いや、イルト殿下が居ない日常になって、一つ、大きく変わったことはあった。イルト殿下の母親である、スーリャ・ラ・リーリス様が塞ぎがちになってしまったのだ。
昔は、赤いドリルヘアにしていたスーリャ様は現在、その髪を自然に下ろしている。元々、タレ目で優しそうな、イルト殿下に良く似た顔立ちだった彼女は、その方がよほど似合っていたが、イルト殿下に向ける視線は、いつも厳しいものだったと知っている。リーリス王国で、側妃として望まれ、数々のライバルを蹴落として唯一の側妃となったスーリャ様。黒目黒髪という、忌むべき色を持ってイルト殿下が生まれてしまったがために、散々に周りから非難され続けてきたスーリャ様。そのせいで、スーリャ様がイルト殿下を憎むのは、ある意味当然の流れと言えた。
ただ……きっと、それは本当の姿ではなかったのだと、今なら分かる。昔、お姉様にスーリャ様は悪いお方ではないと聞いたことはあったが、当時はそれに疑問しか抱けなかったが、イルト殿下の安否が分からない状態であるとの報告で失神してしまったスーリャ様を見れば、お姉様の言葉が真実なのだと分かる。
「えっと……アルト。スーリャ様のご容態は……?」
「あまり、思わしくないとのことだ。ユミリア嬢であれば、きっとイルトを助けてくれるとは思うが、もう、一生会えないかもしれないとなれば、当然なのかもしれないがな……」
お姉様達が消えて三年が経った今、スーリャ様の容態は急変していた。もしかしたら、もう、長くはないかもしれないなんてことも囁かれるくらいだ。
「そっか…………」
スーリャ様は、イルト殿下をとても愛している。だからこそ、気鬱になって、今、その命を散らしかねないところまできているのだ。
「……早く、帰ってきてくれるといいけど……」
それが簡単ではないことくらい、私も理解できている。だから、そっと窓の外へと視線を移した私が、思わず目を疑ったのは仕方のないことだろう。
「? ミー? どうした? そんな、あり得ないものを見たような顔をして」
そう言いながら、アルトは私が見ているものを見ようと、同じく窓の外に視線を移すも、首を傾げるのみ。それもそうだ。彼女達は、神でもない限り見つけることができないように、その気配を遮断してしまっている。彼女達が……お姉様達が、故意に私に見つかるように神力を高めたりしなければ、全く分からなかっただろう。
「ちょっと、迎えに行ってきます」
「えっ? 誰を??」
お姉様の側には、イルト殿下とルクレチア、そして、お姉様に良く似た女の子と、なぜか、鎖の束が背後で引きずられている状態だった。
(まずは、無事を確認して、根掘り葉掘り問いただして、あの女の子のことも問い詰めて、スーリャ様のところに連行しなきゃっ)
淑女としてははしたないものの、思いっきり駆け抜けていった私は、いつの間にかアルトをも振り払い、ようやく……お姉様の笑顔を目の前で見ることとなった。
昔は、赤いドリルヘアにしていたスーリャ様は現在、その髪を自然に下ろしている。元々、タレ目で優しそうな、イルト殿下に良く似た顔立ちだった彼女は、その方がよほど似合っていたが、イルト殿下に向ける視線は、いつも厳しいものだったと知っている。リーリス王国で、側妃として望まれ、数々のライバルを蹴落として唯一の側妃となったスーリャ様。黒目黒髪という、忌むべき色を持ってイルト殿下が生まれてしまったがために、散々に周りから非難され続けてきたスーリャ様。そのせいで、スーリャ様がイルト殿下を憎むのは、ある意味当然の流れと言えた。
ただ……きっと、それは本当の姿ではなかったのだと、今なら分かる。昔、お姉様にスーリャ様は悪いお方ではないと聞いたことはあったが、当時はそれに疑問しか抱けなかったが、イルト殿下の安否が分からない状態であるとの報告で失神してしまったスーリャ様を見れば、お姉様の言葉が真実なのだと分かる。
「えっと……アルト。スーリャ様のご容態は……?」
「あまり、思わしくないとのことだ。ユミリア嬢であれば、きっとイルトを助けてくれるとは思うが、もう、一生会えないかもしれないとなれば、当然なのかもしれないがな……」
お姉様達が消えて三年が経った今、スーリャ様の容態は急変していた。もしかしたら、もう、長くはないかもしれないなんてことも囁かれるくらいだ。
「そっか…………」
スーリャ様は、イルト殿下をとても愛している。だからこそ、気鬱になって、今、その命を散らしかねないところまできているのだ。
「……早く、帰ってきてくれるといいけど……」
それが簡単ではないことくらい、私も理解できている。だから、そっと窓の外へと視線を移した私が、思わず目を疑ったのは仕方のないことだろう。
「? ミー? どうした? そんな、あり得ないものを見たような顔をして」
そう言いながら、アルトは私が見ているものを見ようと、同じく窓の外に視線を移すも、首を傾げるのみ。それもそうだ。彼女達は、神でもない限り見つけることができないように、その気配を遮断してしまっている。彼女達が……お姉様達が、故意に私に見つかるように神力を高めたりしなければ、全く分からなかっただろう。
「ちょっと、迎えに行ってきます」
「えっ? 誰を??」
お姉様の側には、イルト殿下とルクレチア、そして、お姉様に良く似た女の子と、なぜか、鎖の束が背後で引きずられている状態だった。
(まずは、無事を確認して、根掘り葉掘り問いただして、あの女の子のことも問い詰めて、スーリャ様のところに連行しなきゃっ)
淑女としてははしたないものの、思いっきり駆け抜けていった私は、いつの間にかアルトをも振り払い、ようやく……お姉様の笑顔を目の前で見ることとなった。
35
あなたにおすすめの小説
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる