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第一章 帰還と波乱
第一話 お姉様が居ない世界(ミーシャ視点)
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かつて、この世界には、ユミリア・リ・アルテナという少女が居た。彼女は、いわゆる前世の記憶を持っていて、この世界が『モフモフとゆく、恋の花』という前世で見知っていたゲームの世界と同じであることと、このままでは破滅の運命を迎える黒目黒髪で獣付きの悪役令嬢になってしまったということを知る。
そのため、運命を変えようと奮闘し、完全にシナリオから外れた結果を掴み取ったかに思えたが……どういうわけか、神々の争いに巻き込まれ、また、自身も神となって、この世界から去ってしまった。
そんなお姉様達が居なくなって、三年という月日が経った。お姉様は、自らの肉体を捨てて、その中に、一度は消滅しかけたものの、お姉様とともにあったことで回復した本来の悪役令嬢、ユミリア・リ・アルテナに渡すという手段を選んで別世界へ旅立ってしまった。それによって生じる不具合やら何やらは、創世神様に今までのお姉様を知る人間の記憶を改竄してもらうなんていう力技で解決して、現在、この世界はとても平和になっていた。
「……いつ、戻ってくるんですか……」
本来のユミリアの魂は、魂の状態でありながらお姉様のことを見続けてきたらしく、悪役令嬢らしさなど欠片も見当たらない。本来であれば、誰かと結婚していても良さそうな年頃ではあるものの、お姉様がイルト・ラ・リーリスという第二王子を溺愛し、さらに相手からも溺愛される関係であったことから、理想がわりと高い。そんなわけで、ある日、『運命の相手を見つけてきます』という置き手紙をして、冒険者になって活動を始めてしまったとかいう事実に関しては、全て、お姉様の責任だと思っている。
ちなみに、お姉様の婚約者であったイルト殿下は、現在、亡くなったという形で記憶が改竄されている。実際のところは、お姉様と別世界に居るはずなのだが、旅立った後に連絡が来たことは一度もないため、どうなっているか全く分からない。
「ミー? どうした?」
「あ、アルト……」
お姉様を想って窓の外を見て黄昏れていると、金髪に緑の瞳を持つ王子様。いや、王太子様であるアルト・ラ・リーリス殿下がやってくる。
ここは、リーリス王国の王城の一室であり、私、ミーシャ・リグナーは、アルトに嫁ぎ、現在、ミーシャ・ラ・リーリスとなっている。学園の卒業と同時に婚姻した私達だが、しがない男爵令嬢の私は、浄化の魔法を使える聖女だとのことでこの婚姻が成立したのだ。もちろん、本当は、お姉様の方が素晴らしい浄化魔法を使用することができるのだが……まぁ、今のユミリアには使えないため、その事実は誰も覚えていない。覚えているのは、神々と、一部のお姉様に近しい存在のみだ。
「お姉様のこと、考えていました」
「あぁ、ユミリア嬢……いや、ユレイラ様と言った方が良いのか。もう、三年になるな」
「はい」
アルトも、お姉様に近しい存在として、何よりも、イルト殿下の兄として、その記憶は残っていた。お姉様の神としての名前を告げて、寂しそうにするアルトは、きっと、大切な弟のことも思い出しているのだろう。アルトは、イルト殿下をとても可愛がっていたため、もし可能であるならば、数十年以内で帰ってきてほしいところではある。
マリフィーという名の神であり、ミーシャの体に入っている私は、この体が朽ちても神として神界に戻り、お姉様と再会する時がいつか来るはずだ。しかし、アルトはただの人。その寿命は、とても短い。
「あの二人のことだ。案外、子供が生まれていたりしてな」
「神は、中々子供ができないものではありますが……そうですね。お二人の子供が居たら、さぞ可愛いでしょうね」
お互いがお互いのことを好きで、ヤンデレと化していた二人のことだ。きっと、その子供もヤンデレになりそうな予感はあるものの、それでも見てみたい気持ちの方が強かった。
……ただ、そんなことを考えた翌日に、それが実現することになるとは、この時は全く思ってもみなかった。
そのため、運命を変えようと奮闘し、完全にシナリオから外れた結果を掴み取ったかに思えたが……どういうわけか、神々の争いに巻き込まれ、また、自身も神となって、この世界から去ってしまった。
そんなお姉様達が居なくなって、三年という月日が経った。お姉様は、自らの肉体を捨てて、その中に、一度は消滅しかけたものの、お姉様とともにあったことで回復した本来の悪役令嬢、ユミリア・リ・アルテナに渡すという手段を選んで別世界へ旅立ってしまった。それによって生じる不具合やら何やらは、創世神様に今までのお姉様を知る人間の記憶を改竄してもらうなんていう力技で解決して、現在、この世界はとても平和になっていた。
「……いつ、戻ってくるんですか……」
本来のユミリアの魂は、魂の状態でありながらお姉様のことを見続けてきたらしく、悪役令嬢らしさなど欠片も見当たらない。本来であれば、誰かと結婚していても良さそうな年頃ではあるものの、お姉様がイルト・ラ・リーリスという第二王子を溺愛し、さらに相手からも溺愛される関係であったことから、理想がわりと高い。そんなわけで、ある日、『運命の相手を見つけてきます』という置き手紙をして、冒険者になって活動を始めてしまったとかいう事実に関しては、全て、お姉様の責任だと思っている。
ちなみに、お姉様の婚約者であったイルト殿下は、現在、亡くなったという形で記憶が改竄されている。実際のところは、お姉様と別世界に居るはずなのだが、旅立った後に連絡が来たことは一度もないため、どうなっているか全く分からない。
「ミー? どうした?」
「あ、アルト……」
お姉様を想って窓の外を見て黄昏れていると、金髪に緑の瞳を持つ王子様。いや、王太子様であるアルト・ラ・リーリス殿下がやってくる。
ここは、リーリス王国の王城の一室であり、私、ミーシャ・リグナーは、アルトに嫁ぎ、現在、ミーシャ・ラ・リーリスとなっている。学園の卒業と同時に婚姻した私達だが、しがない男爵令嬢の私は、浄化の魔法を使える聖女だとのことでこの婚姻が成立したのだ。もちろん、本当は、お姉様の方が素晴らしい浄化魔法を使用することができるのだが……まぁ、今のユミリアには使えないため、その事実は誰も覚えていない。覚えているのは、神々と、一部のお姉様に近しい存在のみだ。
「お姉様のこと、考えていました」
「あぁ、ユミリア嬢……いや、ユレイラ様と言った方が良いのか。もう、三年になるな」
「はい」
アルトも、お姉様に近しい存在として、何よりも、イルト殿下の兄として、その記憶は残っていた。お姉様の神としての名前を告げて、寂しそうにするアルトは、きっと、大切な弟のことも思い出しているのだろう。アルトは、イルト殿下をとても可愛がっていたため、もし可能であるならば、数十年以内で帰ってきてほしいところではある。
マリフィーという名の神であり、ミーシャの体に入っている私は、この体が朽ちても神として神界に戻り、お姉様と再会する時がいつか来るはずだ。しかし、アルトはただの人。その寿命は、とても短い。
「あの二人のことだ。案外、子供が生まれていたりしてな」
「神は、中々子供ができないものではありますが……そうですね。お二人の子供が居たら、さぞ可愛いでしょうね」
お互いがお互いのことを好きで、ヤンデレと化していた二人のことだ。きっと、その子供もヤンデレになりそうな予感はあるものの、それでも見てみたい気持ちの方が強かった。
……ただ、そんなことを考えた翌日に、それが実現することになるとは、この時は全く思ってもみなかった。
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