私、異世界で獣人になりました!

星宮歌

文字の大きさ
27 / 74
第二章

第二十六話 獣人と魔族

しおりを挟む
「っ、ありがとうございます! あ、リコさんは、甘いものは大丈夫ですか?」

「大丈夫……です」


 蕩けるような笑みを浮かべたセインさんを直視してしまった私は、プイッと顔を逸らして答える。
 その態度が褒められたものではないことくらい分かってはいるのだが、きっと、このまま見ていたら目が潰れるだろうとの判断だった。ただ……やっぱり反応が気になって、目が潰れない程度にチラッと見て、すぐに目を逸らす。


 心臓に悪い……。


 優しくて、蕩けるようなその笑みは、容易く私の心臓を暴走させると同時に、獣としての本能を呼び覚ます。


 私の番。わたしの、わたしの、はやく、捕まえナキャ……。


 今にもセインさんに飛びかかりそうな体をどうにか抑え込まなければならない私は、そのままセインさんから顔を逸らし続けることとなる。


「その、リコさんは、好きなお菓子はありますか?」

「……プリン」


 衝動を抑え込みながら告げる言葉は、いつも以上にぶっきらぼうになってしまう。


「プリンですね! 俺も、プリンは好きなんですよっ」


 ふいに一人称が変わったことに気づいて、チラッと視線をセインさんへ向けると、自分でもそれに気づいたのか、慌てて口を押さえるセインの姿を目撃することとなる。


「そ、その、すみません。つい……」

「……大丈夫……『俺』でも、良い」


 そんなセインさんを可愛いと思ってしまう私は、きっと重症だ。ついでに、セインさんもプリンが好きだという情報が嬉しくて仕方ないというのも、重症だと判断する要素だ。


「そ、そうですか? その、顔に似合わず粗野だとか、思いませんか?」

「? ……思わない」


 何を心配しているのかは分からないが、セインさんが『俺』という言葉を使えば、少しドキドキするし、素を出してもらえていると実感できて嬉しい。


「っ、ありがとうございます! リコさん!」

「ん」


 私の番が可愛い。早く、抱き締めてあげなきゃ……。
 って、違う!


 ぼんやりと本能に流されかけて、セインさんをまともに直視していた私は、慌ててまた視線を逸らす。


 危ない……。セインさんは魔族で、番なんて言われても分からないし、そもそも魔族なら……そう、だ。魔族、なら……片翼じゃ、ないと……。


 私達獣人には、運命の番という概念がある。それは、本能的に惹かれる相手のことを呼ぶものだが、魔族にも似たような概念が存在していた。

 『片翼』と言われるそれは、まだ解明されていない点も多い概念ではあるものの、私達の運命の番のように、ただ一人とは限らない。いや、同時期に二人以上存在することはないとされているものの、片翼が死ねば、またその魔族にとっての片翼がどこかで生まれる。そのため、魔族の中には、生まれ変わりを信じる者が多かった。


「それなら、プリンが美味しいお店を紹介しますね!」


 セインさんのきらめくような笑みを見ていると、片翼なんていう概念を忘れそうになる。それでも……。


 迷惑は、かけちゃ、ダメ……。


 セインさんの負担にはなりたくない。その一心で、私は、この想いを封じることにした。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?

甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。 ……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。 ※不定期更新です。

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

数多の想いを乗せて、運命の輪は廻る

紅子
恋愛
愛する者を失った咲李亜は、50歳にして異世界へ転移させられた。寝耳に水だ。しかも、転移した先の家で、訪ねてくる者を待て、との伝言付き。いったい、いつになったら来るんですか? 旅に出ようにも、家の外には見たこともないような生き物がうじゃうじゃいる。無理無理。ここから出たら死んじゃうよ。 一緒に召喚されたらしい女の子とは、別ルートってどうしたらいいの? これは、齢50の女が、異世界へ転移したら若返り、番とラブラブになるまでのお話。 16話完結済み 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付きで書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

最初から勘違いだった~愛人管理か離縁のはずが、なぜか公爵に溺愛されまして~

猪本夜
恋愛
前世で兄のストーカーに殺されてしまったアリス。 現世でも兄のいいように扱われ、兄の指示で愛人がいるという公爵に嫁ぐことに。 現世で死にかけたことで、前世の記憶を思い出したアリスは、 嫁ぎ先の公爵家で、美味しいものを食し、モフモフを愛で、 足技を磨きながら、意外と幸せな日々を楽しむ。 愛人のいる公爵とは、いずれは愛人管理、もしくは離縁が待っている。 できれば離縁は免れたいために、公爵とは友達夫婦を目指していたのだが、 ある日から愛人がいるはずの公爵がなぜか甘くなっていき――。 この公爵の溺愛は止まりません。 最初から勘違いばかりだった、こじれた夫婦が、本当の夫婦になるまで。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい

鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。 家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。 そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。 いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。 そんなふうに優しくしたってダメですよ? ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて―― ……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか? ※タイトル変更しました。 旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」

処理中です...