悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

文字の大きさ
34 / 412
第一章 幼少期編

第三十三話 神霊樹の森 前編 (三人称視点)

しおりを挟む
 そこは、木で埋め尽くされた場所。木の中から木が生えて、土という存在が見当たらない場所。縦横無尽に木の枝が伸び、道を生み出したそこにとびきり小さな影と二つの大きな影が駆け抜ける。そう、それは、ユミリアと鋼、ローランだった。


「ユミリア様が、神々しい……」

「ユミリア、可愛い」

「みゅう?」


 ユミリアの後ろを走っていた黒衣のローランと何かを背負った鋼の言葉に、ユミリアは走りながらも疑問符だけを浮かべる。現在、ユミリアは滅殺シリーズの装備を身につけている。
 キラキラと光る美しい銀の法衣に、背中にはメカニックな翼、手を覆う手袋は、漆黒で、甲の部分には赤い半球が埋め込まれている。銀のティアラは、どこか冷たく感じるものではあったが、ユミリアの黒髪には良く映えており、それ以外にも銀のブレスレットとイヤリングがついている。ちなみに、背中の翼は飾りなどではなく、飛ぶ機能はもちろん、殲滅機能も備えている優れものだ。


「っ、じぇんぽう、ごちゃいにょまもにょっ(っ、前方、五体の魔物っ)」

「ここは、俺が!」


 走りながら告げるユミリアに、ローランが即座に反応して、ユミリアを追い越す。そして、まもなくして現れたのは、五体のゴブリンだった。


「でりゃあぁあっ!」


 現れたゴブリンに対して、ローランは黒い柄だけを持って襲いかかり、一瞬、青白い刀身のようなものが見えたかと思えば……次の瞬間には、ゴブリン達は悲鳴をあげる間もなく首を飛ばす。


「みゅっ、れーざーちにょうはもんだいにゃいみちゃい(みゅっ、レーザー機能は問題ないみたい)」


 それは、剣と魔法の世界にあるまじき存在。レーザーブレードだった。もちろん、これもユミリア作だ。


「ユミリア様にもらった剣は、かなり特殊ではあるが、使い心地抜群だぞ」

「しょれはよかっちゃにょ(それは良かったの)」

「次は、ぼくの番っ」

「みゅうっ、にゃら、こにょしゃちにいっぱいいりゅにょ。じゅういち、かにゃあ? (みゅうっ、なら、この先にいっぱい居るの。十一、かなぁ?)」


 その言葉に、今度は鋼がユミリアとローランを追い越して前に出る。そして、現れた花型モンスター、マンイーターを前に止まるとググっとその場で踏ん張り……背中の二つの細長いものが、その反動でガチャンっと音を立てて前に倒れる。


「殲滅する」


 そして、鋼が魔力をそれに込めた瞬間、背中にあった二つの筒……いや、銃口が、火を吹く。

 ドゴンッ、ドゴンッ、ドゴンッ、ドゴンッ、ドゴンッ!

 重々しい銃撃音が響けば、その度に、マンイーター達は反撃することすらできずに、粘液を散らして爆散していく。


「みゅうっ、こりぇももんだいにゃしゃしょうっ(みゅうっ、これも問題なさそうっ)」


 ウキウキとした様子の鋼にそんな判断を下すと、今度はユミリアが先頭に出て加速する。そして……。


「ちゅぎはわちゃしっ。しぇんめちゅぅっ(次は私っ。殲滅ぅっ)」


 マンイーターの奥で、ユラユラと揺れていた巨大な魔物エルダートレントの群れへと突っ込んだユミリアは、走りながら背中の翼を広げ、とうとう上空に飛び立つ。そして、その翼が凄まじい光を放ったかと思えば、翼はユミリアを包み込むような形で先端のみを離し、そこに高魔力の球体を生み出す。それが、キュンッと音を立てて一瞬にしてエルダートレントの元へ放たれた途端、エルダートレントはその光に呑まれ……消失した。


「みゅっ、こっちももんだいにゃいにょ(みゅっ、こっちも問題ないの)」


 そうして、再び走り出そうとしたのだが、なぜか、ローランと鋼がついてこないことに気づいて振り向く。するとそこには、パカンと口を開けたローランと鋼、そして、上空でユミリア達を追っていたはずのセイが居た。


「みゅ?」

「……ユミリア様、すげぇ」

「痕跡も、残らないなんて……」

「うわぁ……」


 どうやら、三人はユミリアの技に呆けているらしかった。


「みゅう、いしょがにゃいと、おいてくにょ(みゅう、急がないと、置いてくの)」

「す、すまない」

「ごめん」

「っ、わ、分かってるってば……ごめん」


 ユミリアの言葉に我に返ったセイ達は、すぐさま、先程までのフォーメーションに戻り、走り出す。
 ユミリア達が先を急ぐ理由。それは、この神霊樹の森の広大さにある。『コツ生』においても、この神霊樹の森は広大過ぎて、探索を終えるまでとても時間がかかっていたのだ。だから、急がなければ、夕飯の時間に間に合わない、というわけだった。
 浅い部分に出現する敵は、特に苦戦することなく、一撃で倒していく。しかし、だんだんと奥深くまで入り込んでいけば、そうもいかない。頭上からの奇襲や、高威力の魔法攻撃、いやらしい罠の数々が待ち受けている。


「みゅうぅぅうっ!」


 猫耳をピンっと立てたユミリアは、突如として降ってきた巨大な丸太を破壊して、側の枝に飛び乗ると、そこを走り出す。
 そんなユミリアの背後に、怪しい影が迫ったのを、鋼が撃ち抜き、ローランが斬り捨てる。上空に居るセイは、何もしていないわけもなく、空を飛ぶ魔物達へ鱗粉を浴びせ、永遠の眠りへと誘っていく。


「もうしゅぐにゃにょっ(もうすぐなのっ)」


 そんなユミリアの言葉に、より張り詰めた空気。そして、その言葉通り、ユミリア達はその場所へ辿り着いた。
しおりを挟む
感想 344

あなたにおすすめの小説

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

幽霊じゃありません!足だってありますから‼

かな
恋愛
私はトバルズ国の公爵令嬢アーリス・イソラ。8歳の時に木の根に引っかかって頭をぶつけたことにより、前世に流行った乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまったことに気づいた。だが、婚約破棄しても国外追放か修道院行きという緩い断罪だった為、自立する為のスキルを学びつつ、国外追放後のスローライフを夢見ていた。 断罪イベントを終えた数日後、目覚めたら幽霊と騒がれてしまい困惑することに…。えっ?私、生きてますけど ※ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください(*・ω・)*_ _)ペコリ ※遅筆なので、ゆっくり更新になるかもしれません。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...