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第一章 幼少期編
第三十七話 私のお嬢様(メリー視点)
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ユミリアお嬢様がお生まれになったその日、私は、視力を完全に失った。
元々、どこか体の調子はおかしかったし、目が霞むことも多かった。だから、それは遅かれ早かれ起こっていたことだったはずなのに、周囲の者はそうは思わなかったらしい。それは、ユミリアお嬢様が、黒の獣つきであったから。
「ユミリアお嬢様……お嬢様は私が、お守りします」
元々、ユミリアお嬢様が生まれた暁には乳母として仕えることが決まっていた私は、本来なら、目が見えなくなった時点で他の者と交代するはずだったのだが、私はそのまま、ユミリアお嬢様に仕えることとなった。黒の獣つきを他の者が恐れたということもあるのだろうが、何よりも、ユミリアお嬢様に関心がなかったというのが一番の理由だろう。
奥様は、ユミリアお嬢様を生んだ直後、倒れて心を病んでしまった。旦那様は、毎日仕事、仕事で、ユミリアお嬢様の存在を知っているのかどうかさえ怪しい。そんな状況だからこそ、私は必死にユミリアお嬢様に仕えた。幼いユミリアお嬢様が、少しでも悪意に晒されないように、ユミリアお嬢様のお世話はどうしてもできない料理など以外のほとんどを私が請け負った。しかし……。
(もう、ダメなんでしょうか……?)
最近は、歩いていてもふらついて倒れることが多い。頭はずっと激痛を訴えるし、手はどんどん痺れてきている。自分の命は長くない。幼いユミリアお嬢様を置いて、私は逝ってしまう。
(まだ……せめて、もう少し……)
ユミリアお嬢様は天才だ。普通はまだ、単語の羅列ですらまともに話せないはずの年齢で、ちゃんと会話ができる。そして、何やら、自分の状況を理解しているような節さえある。しかし、それでもまだまだ幼いことは事実。行動範囲も限られているし、容易く傷つく存在だ。
(誰か、信頼できる人が居れば……)
何度も何度もふらつき、倒れながら、それでもユミリアお嬢様のために食事を運んだ私は、『めりーっ』と嬉しそうに私の名前を呼ぶユミリアお嬢様の声に、どうにかふらつく体を抑え込む。
(ユミリアお嬢様には、無様な姿はさらせないっ)
「めりーっ、めりーっ、あにょねっ、ちょうはねっ、いちごみりゅく、ちゅくっちゃにょっ! (メリーっ、メリーっ、あのねっ、今日はねっ、イチゴミルク、作ったのっ!)」
激しい頭痛のせいでぼんやりする中、そんな言葉を聞いた私は、違和感を覚える。
(ユミリアお嬢様が、厨房に……? かろうじて食事を提供してくれてはいるものの、ユミリアお嬢様を嫌う連中の中に……?)
猛烈に、嫌な予感が駆け巡る。
(ユミリアお嬢様を殺すことはなくとも、ユミリアお嬢様の幼さにつけこんで、何を混ぜさせたか分からないっ)
そんな危険なものを、ユミリアお嬢様に飲ませるわけにはいかない。しかし、ユミリアお嬢様をどう説得したものかと頭を悩ませるはめにもなる。
「あにょねっ、こりぇ、めりーにってちゅくっちゃにょっ。めりー、いちごみりゅく、しゅきだっちぇいっちぇちゃかりゃっ(あのねっ、これ、メリーにって作ったのっ。メリー、イチゴミルク好きだって言ってたからっ)」
そんな愛しいユミリアお嬢様の言葉に、私は思わずニンマリと笑う。私が犠牲になることで、ユミリアお嬢様が苦しまずにすむならばそれで良い。例え、今の私の体が危険な状態だったとしても、ユミリアお嬢様のためなら、どんな毒でも食らってみせるっ。
「ありがとうございます、ユミリアお嬢様」
「みゅっ」
元気良く返事をするユミリアお嬢様。私は、痺れる手に持たせてもらったコップを必死に力を保って持つと、ゆっくり、ユミリアお嬢様が愛情を込めて作ったイチゴミルクを飲み干すのだった。
元々、どこか体の調子はおかしかったし、目が霞むことも多かった。だから、それは遅かれ早かれ起こっていたことだったはずなのに、周囲の者はそうは思わなかったらしい。それは、ユミリアお嬢様が、黒の獣つきであったから。
「ユミリアお嬢様……お嬢様は私が、お守りします」
元々、ユミリアお嬢様が生まれた暁には乳母として仕えることが決まっていた私は、本来なら、目が見えなくなった時点で他の者と交代するはずだったのだが、私はそのまま、ユミリアお嬢様に仕えることとなった。黒の獣つきを他の者が恐れたということもあるのだろうが、何よりも、ユミリアお嬢様に関心がなかったというのが一番の理由だろう。
奥様は、ユミリアお嬢様を生んだ直後、倒れて心を病んでしまった。旦那様は、毎日仕事、仕事で、ユミリアお嬢様の存在を知っているのかどうかさえ怪しい。そんな状況だからこそ、私は必死にユミリアお嬢様に仕えた。幼いユミリアお嬢様が、少しでも悪意に晒されないように、ユミリアお嬢様のお世話はどうしてもできない料理など以外のほとんどを私が請け負った。しかし……。
(もう、ダメなんでしょうか……?)
最近は、歩いていてもふらついて倒れることが多い。頭はずっと激痛を訴えるし、手はどんどん痺れてきている。自分の命は長くない。幼いユミリアお嬢様を置いて、私は逝ってしまう。
(まだ……せめて、もう少し……)
ユミリアお嬢様は天才だ。普通はまだ、単語の羅列ですらまともに話せないはずの年齢で、ちゃんと会話ができる。そして、何やら、自分の状況を理解しているような節さえある。しかし、それでもまだまだ幼いことは事実。行動範囲も限られているし、容易く傷つく存在だ。
(誰か、信頼できる人が居れば……)
何度も何度もふらつき、倒れながら、それでもユミリアお嬢様のために食事を運んだ私は、『めりーっ』と嬉しそうに私の名前を呼ぶユミリアお嬢様の声に、どうにかふらつく体を抑え込む。
(ユミリアお嬢様には、無様な姿はさらせないっ)
「めりーっ、めりーっ、あにょねっ、ちょうはねっ、いちごみりゅく、ちゅくっちゃにょっ! (メリーっ、メリーっ、あのねっ、今日はねっ、イチゴミルク、作ったのっ!)」
激しい頭痛のせいでぼんやりする中、そんな言葉を聞いた私は、違和感を覚える。
(ユミリアお嬢様が、厨房に……? かろうじて食事を提供してくれてはいるものの、ユミリアお嬢様を嫌う連中の中に……?)
猛烈に、嫌な予感が駆け巡る。
(ユミリアお嬢様を殺すことはなくとも、ユミリアお嬢様の幼さにつけこんで、何を混ぜさせたか分からないっ)
そんな危険なものを、ユミリアお嬢様に飲ませるわけにはいかない。しかし、ユミリアお嬢様をどう説得したものかと頭を悩ませるはめにもなる。
「あにょねっ、こりぇ、めりーにってちゅくっちゃにょっ。めりー、いちごみりゅく、しゅきだっちぇいっちぇちゃかりゃっ(あのねっ、これ、メリーにって作ったのっ。メリー、イチゴミルク好きだって言ってたからっ)」
そんな愛しいユミリアお嬢様の言葉に、私は思わずニンマリと笑う。私が犠牲になることで、ユミリアお嬢様が苦しまずにすむならばそれで良い。例え、今の私の体が危険な状態だったとしても、ユミリアお嬢様のためなら、どんな毒でも食らってみせるっ。
「ありがとうございます、ユミリアお嬢様」
「みゅっ」
元気良く返事をするユミリアお嬢様。私は、痺れる手に持たせてもらったコップを必死に力を保って持つと、ゆっくり、ユミリアお嬢様が愛情を込めて作ったイチゴミルクを飲み干すのだった。
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