悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第一章 幼少期編

第三十九 メリーの起床

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 メリーの声に、セイと鋼は即座に身を隠す。ちなみに、ローランは現在、メリー以外の人間が入って来ないように入り口で見張っているため、まだこちらには戻ってきていない。


「う……?」

「めりー?」


 ゆっくり目を開けて、パチリ、パチリと瞬きするメリー。そして、その視線が、私を……捉えた・・・


「ユ、ミリア……お嬢、様?」

「みゅっ」


 パチ、パチと瞬きを繰り返しながら、信じられないといった様子で私を見つめるメリー。初めて見たメリーの瞳は、髪の色と同じで、海のような青さを持っていた。


「ユミリア、お嬢様?」

「しょーにゃにょっ(そうなのっ)」

「……これは、夢? いえ、きっと、私の願望が最期に見せた奇跡ですね」

「みゅっ!?」


 呆然としていたメリーが、何やらおかしな納得をしかけている事実に、私は大いに慌てる。


「ちがうにょっ。ゆめでもちせちでもにゃいにょっ(違うのっ。夢でも奇跡でもないのっ)」


 耳をピンっと立てて必死に反論すれば、何やらメリーはとても穏やかな表情になる。


(分かって、もらえた?)

「ふふふっ、そうですね。こんなに可愛いユミリアお嬢様が言うんですものね。きっとこれは、神様からの贈り物です」

「みゅうぅっ!?」

(分かってないっ!?)


 やはり、理解してもらえていないということを知って、声をあげた私に、メリーはクスクスと笑う。


「あぁ、これが贈り物なら、ユミリアお嬢様を抱き締めても良いですよね?」

「っ、もちろんにゃにょっ(っ、もちろんなのっ)」


 どうやったらメリーにこれが現実だと理解してもらえるだろうかと、耳を垂らして唸っていた私は、そんなメリーの言葉に、現実を見せるということを盛大に後回しにする。
 そっと、危なげなく起き上がったメリーは、私の前にしゃがみ込んでそっと抱き締めてくれる。


「み、みゅうっ」


 柔らかく、優しい香りに包まれて、私はしばしの間、幸せを満喫する。


「あぁ、ユミリアお嬢様が可愛いっ。私の願望だとは分かっていますが、可愛くて可愛くて可愛いですっ」


 ちょっと苦しいくらいの力で抱き締め始めたメリーだったものの、私はそれすらも幸せに感じて、ただただメリーの温もりに身を委ねる。
 しかし、そんな幸せの中、話はおかしな方向に進み出す。


「ユミリアお嬢様、私は長くありませんが、必ず、ユミリアお嬢様を守れる誰かを見つけてみせます。そして、その方にユミリアお嬢様をずっと守ってもらうんです」

「やっ。わちゃしは、めりーがいいにょっ(やっ。私は、メリーが良いのっ)」


 やはり、現実が分かっていないメリーは、私が絶対にうなずけない考えを披露してくる。


「……あぁ、その言葉を聞けるだけで、私は、ユミリアお嬢様にお仕えした甲斐があったというものです。どうか、どうか、幸せになって……私の、大切な娘……」

「……」


 『大切な娘』と言われるのは、嬉しい。しかし、その前がとんでもなく問題だ。だから、私は……。


「めりーにょ、おばかぁっ(メリーの、おバカぁっ)」

「いひゃいいひゃいっ」


 夢ではないことの証明のため、メリーのほっぺをギュムッとつねる。メリーは涙目になっているが、そんなの知るもんかとばかりに私はメリーを上目遣いに睨む。


「めりー、はんしぇいっ! (メリー、反省っ!)」

「えっ? あれ? 痛い? えっ? 夢……じゃない? ……現実……?」


 ほっぺから手を離して、強く言えば、ようやくメリーの意識は現実を認識したらしく、呆然と頭を触ったり、目をパチパチさせたり、辺りを見渡したりしている。


「しゃっちかりゃ、にゃんどもいってりゅにょっ(さっきから、何度も言ってるのっ)」


 メリーの腕から逃れた私は、精一杯メリーに言い聞かせる。


「……ユミリア、お嬢様?」


 信じられないとばかりに、私を見つめて名前を呼ぶメリーに、私はピョコンっと手を挙げる。


「みゅっ」

「私、毒を呷って死んだんじゃ……」

「みゅうっ!?」


 なぜか、メリーの中では毒を呷って死んだということになっていて、私は混乱する。


「えっと……?」


 しかし、混乱しているのはメリーも同じだ。お互いがお互いを困惑の顔で眺めるという、中々におかしな図ができてしまう。


「ひとまず、話し合いましょうか?」

「みゅっ」


 今、必要なのは、言葉のみ。そう認識した私達は、椅子がない部屋で、遠慮するメリーを強引に説得してベッドに座らせると、私も隣に座って話を始めた。
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