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第一章 幼少期編
第八十二話 報復
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王妃様が来て、挨拶が行われた後は、思い思いに交流する時間だ。お茶を飲みながら和やかに会話をする時間。しかし、私とイルト王子を取り巻くのは、やはり、負の感情が全面に押し出された空気だった。
「ゆみりあじょう。あんなやつらはきにしなくていい」
「……そういうわけにもいかない、ですね」
イルト王子は気にするなと言う。しかし、私はイルト王子が悪く言われるのが我慢ならない。先ほどから、『不吉の王子』だとか、『穢れの王子』だとかいう言葉がちょこちょこ聞こえてくる。そして、その声に反応してか、イルト王子の顔は強張ったものになっていた。
「ちょっとだけ、お話、してきますね?」
「っ、ゆみりあじょう!?」
「大丈夫です。すぐに戻りますから」
追いかけてきそうなイルト王子を制して、私は席を立つ。目指すは、ちょっと人気の少ない庭の奥だ。
(うん、分かりやすく囲まれた、ね)
私が一人になったのを見てとった年長組の令嬢達は、さりげなく私を囲んでくる。その顔に浮かべるのは、醜い嘲笑。
「あらやだ。ごめんあそばせ?」
逃げ道を塞がれたところで、パシャリと、熱い紅茶をかけられる。
(うん、定番中の定番。でも、この服を纏っている私に、その程度は何ともないよ)
本来なら、ドレスに染みができるとか、火傷をするとかいう心配が出てくるのだろうが、私の場合、それはあり得ない。なんせ、このドレスは私のお手製なのだ。その程度の対策をしていないわけがない。クスクスと嗤う令嬢達は、私に嫌がらせができたと喜んでいるのだろうが、そんなことを成功させるわけがない。
(うん、こいつら、イルト様の悪口言ってたやつらだね)
獣つきは、総じて耳が良い。イルト王子には内容まで聞こえていなかったかもしれないが、私には全て筒抜けだ。だからこそ、私は前から用意していたそれを、ストレージからそっと取り出して手の中に隠す。
「いえ、お気になさらず。誰でも、手が滑ることはありますものね? そう、こんな風に」
そうして、私はそれを解き放つ。とある魔法を込めた、私監修の魔石を。令嬢の足元に投げつけることで、的確に発動させる。
「ひっ、何これ!」
「いやっ、いやぁ!」
「だ、誰かっ、助けなさい!」
それは、とても、とても特殊な魔石。私は、ただそれを発動させただけ。ただ、魔石を投げただけ。そして、表面上は何も起こっていないはずなのに、令嬢達は恐怖に顔を歪めて悲鳴を上げる。
いや、そこには、人ならざるものが、多数押し寄せてきていた。
半透明な姿、血に濡れ、時には体の一部がもがれていたり、はみ出ていたりするそいつら。
(我ながら、リアルにできたなぁ)
昼間のローズガーデンに突如として現れたそれは、亡霊。しかも、その亡霊達の姿は、よく見れば、彼女達自身の姿だった。
「あ、あぁぁぁあっ」
「い、いやーっ! 来ないで! 来ないでぇっ!」
金髪の令嬢が、首の取れかけた自身の亡霊に追われる。
「ひっ、ひぃっ!」
青い髪の令嬢は、腰が抜けたのか、這ってくる色々とはみ出した自身の亡霊と対峙している。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
茶髪の令嬢は、目の部分がただの窪みとなった自身の亡霊にじっと、見下ろされてうずくまる。
(持続時間設定は、一時間くらいにしておこうかなぁ? それで、二度とイルト様を見下した発言ができないように、亡霊に言葉を話させてっと)
「ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない」
「わるくちはー、だーめ、だよぉ?」
「ひひっひひひひひっ、わるいこ、どこかな? ひひひひひっ」
とりあえずは、トラウマ確実だと思える状況を作り出した私は、さっさと結界の外に出て、彼女達を閉じ込めておく。一時間きっかり立てば、表面上は回復するようにも設定して、放置する。
「よしっ、イルト様のところに戻ろう!」
これで少しは反省してくれるだろうと思って、私はその場を後にした。
「ゆみりあじょう。あんなやつらはきにしなくていい」
「……そういうわけにもいかない、ですね」
イルト王子は気にするなと言う。しかし、私はイルト王子が悪く言われるのが我慢ならない。先ほどから、『不吉の王子』だとか、『穢れの王子』だとかいう言葉がちょこちょこ聞こえてくる。そして、その声に反応してか、イルト王子の顔は強張ったものになっていた。
「ちょっとだけ、お話、してきますね?」
「っ、ゆみりあじょう!?」
「大丈夫です。すぐに戻りますから」
追いかけてきそうなイルト王子を制して、私は席を立つ。目指すは、ちょっと人気の少ない庭の奥だ。
(うん、分かりやすく囲まれた、ね)
私が一人になったのを見てとった年長組の令嬢達は、さりげなく私を囲んでくる。その顔に浮かべるのは、醜い嘲笑。
「あらやだ。ごめんあそばせ?」
逃げ道を塞がれたところで、パシャリと、熱い紅茶をかけられる。
(うん、定番中の定番。でも、この服を纏っている私に、その程度は何ともないよ)
本来なら、ドレスに染みができるとか、火傷をするとかいう心配が出てくるのだろうが、私の場合、それはあり得ない。なんせ、このドレスは私のお手製なのだ。その程度の対策をしていないわけがない。クスクスと嗤う令嬢達は、私に嫌がらせができたと喜んでいるのだろうが、そんなことを成功させるわけがない。
(うん、こいつら、イルト様の悪口言ってたやつらだね)
獣つきは、総じて耳が良い。イルト王子には内容まで聞こえていなかったかもしれないが、私には全て筒抜けだ。だからこそ、私は前から用意していたそれを、ストレージからそっと取り出して手の中に隠す。
「いえ、お気になさらず。誰でも、手が滑ることはありますものね? そう、こんな風に」
そうして、私はそれを解き放つ。とある魔法を込めた、私監修の魔石を。令嬢の足元に投げつけることで、的確に発動させる。
「ひっ、何これ!」
「いやっ、いやぁ!」
「だ、誰かっ、助けなさい!」
それは、とても、とても特殊な魔石。私は、ただそれを発動させただけ。ただ、魔石を投げただけ。そして、表面上は何も起こっていないはずなのに、令嬢達は恐怖に顔を歪めて悲鳴を上げる。
いや、そこには、人ならざるものが、多数押し寄せてきていた。
半透明な姿、血に濡れ、時には体の一部がもがれていたり、はみ出ていたりするそいつら。
(我ながら、リアルにできたなぁ)
昼間のローズガーデンに突如として現れたそれは、亡霊。しかも、その亡霊達の姿は、よく見れば、彼女達自身の姿だった。
「あ、あぁぁぁあっ」
「い、いやーっ! 来ないで! 来ないでぇっ!」
金髪の令嬢が、首の取れかけた自身の亡霊に追われる。
「ひっ、ひぃっ!」
青い髪の令嬢は、腰が抜けたのか、這ってくる色々とはみ出した自身の亡霊と対峙している。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
茶髪の令嬢は、目の部分がただの窪みとなった自身の亡霊にじっと、見下ろされてうずくまる。
(持続時間設定は、一時間くらいにしておこうかなぁ? それで、二度とイルト様を見下した発言ができないように、亡霊に言葉を話させてっと)
「ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない」
「わるくちはー、だーめ、だよぉ?」
「ひひっひひひひひっ、わるいこ、どこかな? ひひひひひっ」
とりあえずは、トラウマ確実だと思える状況を作り出した私は、さっさと結界の外に出て、彼女達を閉じ込めておく。一時間きっかり立てば、表面上は回復するようにも設定して、放置する。
「よしっ、イルト様のところに戻ろう!」
これで少しは反省してくれるだろうと思って、私はその場を後にした。
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