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第一章 幼少期編
第百二話 レッツ、パーティー!5
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「おや、これは異なことを。儂は明確な立場を表明していると思いますがの?」
確かに、エルドン侯爵は第一王子派であることに変わりはない。しかし、穏健派にも過激派にも通じているとなれば、その立場は一気に怪しげなものへと変わってくる。
(ただ、自分に利のある方を見定めている、というだけなら良いんだけど……)
もし、そうでなかった場合は、彼の存在は地雷になりかねない。
飄々と誤魔化してみせるエルドン侯爵に、私はちょっとだけ、爆弾を投げてみる。
「そうですか、なら、一つだけ面白い情報を差し上げます。近々、侯爵の派閥は大打撃を受けて、再起不能になりそうですよ?」
にっこりと微笑みながら告げれば、エルドン侯爵はひくりと頬を引きつらせる。彼の情報網には、そんな兆候は欠片もなかったはずだ。しかし、それを五歳児の公爵令嬢があたかも当然のように宣言する。そうなってくると、エルドン侯爵としては疑問に思うはずだ。『過激派と穏健派、どちらの派閥が被害を受ける?』と。
もちろん、内情を知らなければ第一王子派全体が打撃を受けると思う者も居るだろうが、エルドン侯爵はそうは受け取らないだろう。何せ、第一王子派は巨大な派閥だ。それらへ一気に攻撃を仕掛け、傾かせることは不可能と言っても過言ではない。
「それは、お父君から伺ったのですかな?」
「さぁ? どうでしょう?」
私のお父様は、恐らく、エルドン侯爵は穏健派だと思っている。と、いうより、ほとんどの人間がエルドン侯爵は第一王子派の穏健派だと考えているのだ。だから、エルドン侯爵はそこを突いて、誰からの情報かを得ることによって、どちらの派閥が危険なのかを探ろうとしたのだろうが、そんな単純な引っかけに乗ってあげるつもりはない。
そもそも私は、侯爵にどちらの派閥に属しているのかを尋ねてしまっている。そうなると、エルドン侯爵には自身がどちらの派閥だと思われているのかが分からなくなってしまう。
(さて、と。あなたは私達の敵かな?)
私から情報を引き出せず、しかも、これだけの駆け引きを見せられて、派閥の危機という情報をはったりだと断じることもできなくなったエルドン侯爵は、どうにか笑顔を浮かべながらも次の言葉を探しているらしかった。しかし……。
「ゆみりあじょう。もう、あいさつはおわったのだから、ぼくのそばにいて?」
「はい、喜んでっ」
イルト王子の存在が、タイムリミットを告げる。さすがに、エルドン侯爵もイルト王子に逆らうような真似はできない。
(悩め悩め。もしも敵ならば、嫌がらせになるし、そうでなかったとしても……うん、しっかりと私達の利になる。しっかりと働いてね?)
「それでは、私達はここで失礼します」
「え、えぇ、またいずれ、お会いしとうございますな」
社交辞令の一貫、もしくは、本音でそう言ったであろうエルドン侯爵に、イルト王子は冷たい視線を注ぐ。
「……」
「は、はいっ、そうですね。それでは」
今にもエルドン侯爵を殺しそうな雰囲気のイルト王子に、私は早々に会話を切り上げてイルト王子の手をしっかりと握ってその場を離れる。
「ゆみりあじょう?」
「えっと……私は、イルト様以外、眼中にないですよ?」
ハイライトの消えた目で問いかけるイルト王子に、私はほの暗い喜びを覚えながらも一応諌める。
「……ほんとうに?」
「はいっ。イルト様、大好きですっ!」
そう言って、イルト王子にギュッと抱きつけば、イルト王子もようやく納得したのか、瞳に光を戻す。
「ほかのおとこと、ふたりきりになったらゆるさないからね?」
「そんなこと、万に一つもあり得ないと思いますが、しっかり、肝に銘じておきますねっ」
残念なことに、エルドン侯爵からは今回の事件の黒幕である確証は得られなかった。いや、むしろ、無関係である可能性が高くなってしまった。もしも関係があるのであれば、私が派閥の危機を口にした段階で、あそこまで焦ることはなかったはずだ。
柔らかな笑みを浮かべて機嫌良さげにするイルト王子を前に、私は、残る黒幕候補を考えて、ふいに、視界の端にお父様とお継母様の姿が映る。今回のパーティーは、イルト王子にエスコートされるためにお父様達とは別々に来ることになったものの、二人もしっかりと参加しているのだ。
(あれ? あの、お父様達と話しているのは……)
そして、そこに映った黒幕候補の姿に、私は、そいつを黒幕だと認定して、笑みを浮かべるのだった。
確かに、エルドン侯爵は第一王子派であることに変わりはない。しかし、穏健派にも過激派にも通じているとなれば、その立場は一気に怪しげなものへと変わってくる。
(ただ、自分に利のある方を見定めている、というだけなら良いんだけど……)
もし、そうでなかった場合は、彼の存在は地雷になりかねない。
飄々と誤魔化してみせるエルドン侯爵に、私はちょっとだけ、爆弾を投げてみる。
「そうですか、なら、一つだけ面白い情報を差し上げます。近々、侯爵の派閥は大打撃を受けて、再起不能になりそうですよ?」
にっこりと微笑みながら告げれば、エルドン侯爵はひくりと頬を引きつらせる。彼の情報網には、そんな兆候は欠片もなかったはずだ。しかし、それを五歳児の公爵令嬢があたかも当然のように宣言する。そうなってくると、エルドン侯爵としては疑問に思うはずだ。『過激派と穏健派、どちらの派閥が被害を受ける?』と。
もちろん、内情を知らなければ第一王子派全体が打撃を受けると思う者も居るだろうが、エルドン侯爵はそうは受け取らないだろう。何せ、第一王子派は巨大な派閥だ。それらへ一気に攻撃を仕掛け、傾かせることは不可能と言っても過言ではない。
「それは、お父君から伺ったのですかな?」
「さぁ? どうでしょう?」
私のお父様は、恐らく、エルドン侯爵は穏健派だと思っている。と、いうより、ほとんどの人間がエルドン侯爵は第一王子派の穏健派だと考えているのだ。だから、エルドン侯爵はそこを突いて、誰からの情報かを得ることによって、どちらの派閥が危険なのかを探ろうとしたのだろうが、そんな単純な引っかけに乗ってあげるつもりはない。
そもそも私は、侯爵にどちらの派閥に属しているのかを尋ねてしまっている。そうなると、エルドン侯爵には自身がどちらの派閥だと思われているのかが分からなくなってしまう。
(さて、と。あなたは私達の敵かな?)
私から情報を引き出せず、しかも、これだけの駆け引きを見せられて、派閥の危機という情報をはったりだと断じることもできなくなったエルドン侯爵は、どうにか笑顔を浮かべながらも次の言葉を探しているらしかった。しかし……。
「ゆみりあじょう。もう、あいさつはおわったのだから、ぼくのそばにいて?」
「はい、喜んでっ」
イルト王子の存在が、タイムリミットを告げる。さすがに、エルドン侯爵もイルト王子に逆らうような真似はできない。
(悩め悩め。もしも敵ならば、嫌がらせになるし、そうでなかったとしても……うん、しっかりと私達の利になる。しっかりと働いてね?)
「それでは、私達はここで失礼します」
「え、えぇ、またいずれ、お会いしとうございますな」
社交辞令の一貫、もしくは、本音でそう言ったであろうエルドン侯爵に、イルト王子は冷たい視線を注ぐ。
「……」
「は、はいっ、そうですね。それでは」
今にもエルドン侯爵を殺しそうな雰囲気のイルト王子に、私は早々に会話を切り上げてイルト王子の手をしっかりと握ってその場を離れる。
「ゆみりあじょう?」
「えっと……私は、イルト様以外、眼中にないですよ?」
ハイライトの消えた目で問いかけるイルト王子に、私はほの暗い喜びを覚えながらも一応諌める。
「……ほんとうに?」
「はいっ。イルト様、大好きですっ!」
そう言って、イルト王子にギュッと抱きつけば、イルト王子もようやく納得したのか、瞳に光を戻す。
「ほかのおとこと、ふたりきりになったらゆるさないからね?」
「そんなこと、万に一つもあり得ないと思いますが、しっかり、肝に銘じておきますねっ」
残念なことに、エルドン侯爵からは今回の事件の黒幕である確証は得られなかった。いや、むしろ、無関係である可能性が高くなってしまった。もしも関係があるのであれば、私が派閥の危機を口にした段階で、あそこまで焦ることはなかったはずだ。
柔らかな笑みを浮かべて機嫌良さげにするイルト王子を前に、私は、残る黒幕候補を考えて、ふいに、視界の端にお父様とお継母様の姿が映る。今回のパーティーは、イルト王子にエスコートされるためにお父様達とは別々に来ることになったものの、二人もしっかりと参加しているのだ。
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