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第一章 幼少期編
第百三話 レッツ、パーティー!6
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お父様達のところに居る人物が黒幕だと分かった原因。それは、お父様達との会話が聞こえてきたからでもあった。
「ご機嫌よう。アルテナ公爵。この度は、どうも上手くやったらしいですね?」
「ご機嫌よう。ゾーラ夫人。えぇ、そうですな。貴女にとっては、思わしくない状況かもしれませんが」
「あら、何のことですか? 私といたしましても、今回の件はとても喜ばしいことです。何せ、あの二人が一緒に纏まってくれるのですから、ね?」
ゾーラ夫人と呼ばれた女性は、ランダス公爵家の当主夫人。ゾーラ・リ・ランダス。この国には、三つの公爵家が存在し、そのうちの一つが、このランダス家だった。
(同格の家、そして、切れ者と噂のゾーラ夫人、かぁ……うん、絶対に、返り討ちにしてみせるっ)
含みを持たせた言葉に、じっとゾーラ夫人を睨むお父様。お父様は、第一王子派にして、表面的には穏健派を装っているゾーラ夫人をとても警戒しているらしかった。彼女が過激派に手を貸したとしても、彼女の表面的な立場は穏健派。言い逃れができない証拠を提示しない限り、彼女は確実に逃げられる。たとえそれが、イルト王子を害するようなものであっても、生半可な証拠では、彼女を罪に問えない。
(あぁ、うん、これは、かなり厄介かな?)
下手をすれば、今回は、彼女を取り逃がすことになりそうだ。しかし、それでも確実に爪痕は残してみせる。
今回、イルト王子への襲撃とは別に、何かを仕掛けてくることは分かっていた。……いや、『何か』なんて曖昧なものではなく、しっかりと、それがどういう存在なのかを理解している。しかし、彼女は徹底的に自身の関与を隠そうとしたため、その存在の本質は理解していても、それがどういった外見のものなのかまでは分からないでいた。
(『呪言の石』。それを、イルト様に使うつもりなんだよ、ね?)
それは、本来罪人に使われる道具であり、精神を追い詰めるためのものだ。本人に、欠片でも心が残っていれば、精神を病むことは確実と言える存在。あらゆる悪意と嘆きを、対象者に延々と聞かせ続ける道具。それは、悪意を受ける者であればあるほど、嘆きを受ける者であればあるほど、強大な力を発揮する。だから、罪人にはうってつけの代物なのだ。そして、もし、それがイルト王子に使われた場合、イルト王子は、これまで受けてきた黒に対する蔑みを、一度に受けることとなる。そんなもの、イルト王子には重すぎるに決まっていた。
(恐らく、これが『モフ恋』でイルト様が顔を焼く原因……)
『モフ恋』のシナリオで、イルト王子が自身の顔を焼いたことは分かっていたが、その原因が、どうしても分からなかった。そもそも、普通、五歳児の子供が思い詰めたところで、自身の顔を焼くに至るのかを考えれば、それが不自然だということが分かるだろう。
(つまりは、本来のシナリオで、イルト様への精神攻撃は成功した。そして、精神を激しく病んだ……いや、むしろ壊されたイルト様は、自分の顔を焼くほどになってしまったんだと思う)
罪人に使用されるほどに危険な道具を使われたのだ。そうなるのは、自然の流れだろう。しかし、それが分かっているからこそ、私は今、イルト王子を守れる場所に居る幸運に感謝する。どんな形状をしているのかの情報が手に入らなかったのは痛手だが、それでも、私はイルト王子へと触れようとする者を牽制すれば良いのだと理解できていた。
(イルト様には、指一本触れさせない)
黒幕は分かっても、誰が刺客か分からない以上、警戒は常に最大レベルだ。
パーティーはまだもうしばらく続く。私は、イルト王子から片時も離れるつもりなどない。
楽団が奏でる音楽が変わり、ダンスのためのゆったりとしたワルツが流れ出す。
「ゆみりあじょう。ぼくとおどっていただけませんか?」
「喜んでっ」
そうして、私はイルト王子の手を取り、会場の中央へと進んだ。
「ご機嫌よう。アルテナ公爵。この度は、どうも上手くやったらしいですね?」
「ご機嫌よう。ゾーラ夫人。えぇ、そうですな。貴女にとっては、思わしくない状況かもしれませんが」
「あら、何のことですか? 私といたしましても、今回の件はとても喜ばしいことです。何せ、あの二人が一緒に纏まってくれるのですから、ね?」
ゾーラ夫人と呼ばれた女性は、ランダス公爵家の当主夫人。ゾーラ・リ・ランダス。この国には、三つの公爵家が存在し、そのうちの一つが、このランダス家だった。
(同格の家、そして、切れ者と噂のゾーラ夫人、かぁ……うん、絶対に、返り討ちにしてみせるっ)
含みを持たせた言葉に、じっとゾーラ夫人を睨むお父様。お父様は、第一王子派にして、表面的には穏健派を装っているゾーラ夫人をとても警戒しているらしかった。彼女が過激派に手を貸したとしても、彼女の表面的な立場は穏健派。言い逃れができない証拠を提示しない限り、彼女は確実に逃げられる。たとえそれが、イルト王子を害するようなものであっても、生半可な証拠では、彼女を罪に問えない。
(あぁ、うん、これは、かなり厄介かな?)
下手をすれば、今回は、彼女を取り逃がすことになりそうだ。しかし、それでも確実に爪痕は残してみせる。
今回、イルト王子への襲撃とは別に、何かを仕掛けてくることは分かっていた。……いや、『何か』なんて曖昧なものではなく、しっかりと、それがどういう存在なのかを理解している。しかし、彼女は徹底的に自身の関与を隠そうとしたため、その存在の本質は理解していても、それがどういった外見のものなのかまでは分からないでいた。
(『呪言の石』。それを、イルト様に使うつもりなんだよ、ね?)
それは、本来罪人に使われる道具であり、精神を追い詰めるためのものだ。本人に、欠片でも心が残っていれば、精神を病むことは確実と言える存在。あらゆる悪意と嘆きを、対象者に延々と聞かせ続ける道具。それは、悪意を受ける者であればあるほど、嘆きを受ける者であればあるほど、強大な力を発揮する。だから、罪人にはうってつけの代物なのだ。そして、もし、それがイルト王子に使われた場合、イルト王子は、これまで受けてきた黒に対する蔑みを、一度に受けることとなる。そんなもの、イルト王子には重すぎるに決まっていた。
(恐らく、これが『モフ恋』でイルト様が顔を焼く原因……)
『モフ恋』のシナリオで、イルト王子が自身の顔を焼いたことは分かっていたが、その原因が、どうしても分からなかった。そもそも、普通、五歳児の子供が思い詰めたところで、自身の顔を焼くに至るのかを考えれば、それが不自然だということが分かるだろう。
(つまりは、本来のシナリオで、イルト様への精神攻撃は成功した。そして、精神を激しく病んだ……いや、むしろ壊されたイルト様は、自分の顔を焼くほどになってしまったんだと思う)
罪人に使用されるほどに危険な道具を使われたのだ。そうなるのは、自然の流れだろう。しかし、それが分かっているからこそ、私は今、イルト王子を守れる場所に居る幸運に感謝する。どんな形状をしているのかの情報が手に入らなかったのは痛手だが、それでも、私はイルト王子へと触れようとする者を牽制すれば良いのだと理解できていた。
(イルト様には、指一本触れさせない)
黒幕は分かっても、誰が刺客か分からない以上、警戒は常に最大レベルだ。
パーティーはまだもうしばらく続く。私は、イルト王子から片時も離れるつもりなどない。
楽団が奏でる音楽が変わり、ダンスのためのゆったりとしたワルツが流れ出す。
「ゆみりあじょう。ぼくとおどっていただけませんか?」
「喜んでっ」
そうして、私はイルト王子の手を取り、会場の中央へと進んだ。
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