悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第二章 少女期 瘴気編

第百五十二話 七年前

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「イルト様ーっ!」

「ユミリアっ!」


 イルト様を呼びに、イルト様が乗る馬車へと向かえば、イルト様は喜色満面で私の体を抱き止める。


「イルト様っ、私も、イルト様も、同じクラスでしたよっ! ついでに、アルト様もっ」


 黒目黒髪、そして黒の獣つき・・・・・として、優しい性根をそのままに成長したイルト様は、とてもかっこよくて、そんなイルト様に頭をナデナデされるととろけてしまいそうだ。


「そう、それは良かった。……ところでユミリア? 僕に言うことはないかい?」

「みゅ?」

「……何で、僕を置いて、二人とも先に行ったのかなぁ?」


 いつの間にか、撫でる手が止まり、抱き止めていたはずの腕は、捕獲のための腕となっている。


「え、えっと……これには、深い事情がありまして……」


 私とアルト様が先に向かったのは、イルト様に悪意を向ける輩が出ないように牽制するためだったりする。今もきっと、アルト様が上手くやってくれているはずだ。


「ふぅん? それは、僕にも言えないこと?」


 つぅっと私の頬を指でなぞり、そのまま顎をクイッと上げさせられる。そして、目の前に広がるのは、恐ろしく妖艶な笑みを浮かべたイルト様。


「み、みゅう……」


 あまりの妖艶さに、私は、パニックに陥る。


「ねぇ、ユミリアは、七年前、僕を助けるために、力を尽くしてくれたよね?」


 七年前、イルト様が倒れた後、確かに、私は死力を尽くして、イルト様を助けるべく、魔導具を作り上げた。
 イルト様が一度目を覚ましてから一週間後、私は、イルト様にまとわりつく瘴気を封印するという手段に出たのだ。本当は、浄化を再現する魔導具を作りたかった。と、いうより、作る気満々だった。しかし、どうやら、浄化の魔法というものはかなり特殊な存在らしく、その実態を把握することもままならなかったのだ。よって、イルト様を生かすという方向に思考をズラした私は、見事、その魔導具を作り上げてみせたのだ。


「あ、あの、えっと……」

「ふふっ、真っ赤で可愛い。僕はね、今はもう、浄化してもらって必要なくなった魔導具ではあるけど、ユミリアからもらったこのネックレスを、ずっと、ずーっと大切にしてるんだ」


 そのネックレスは、翼を象ったチャームつきのシンプルなネックレス。しかし、瘴気の勢いが強かったせいで、イルト様に渡した後も、何度も何度も改良し、何度も何度も貴重な素材を注ぎ込んだ渾身の逸品だ。何せ、宇宙にまで素材を取りに行ったのだから。


「それでね? 僕は思ったんだ。ユミリアには、絶対に恩返ししなきゃって。だから、ね?」


 『最近コソコソしている理由を話してよ』と、柔らかくも体の芯が震えるような声で告げられて、私は、ボーッとしながらうなずくのだった。
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