悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第二章 少女期 瘴気編

第二百七十三話 恩人の異変(ディラン視点)

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 ユミリア様達が帰還して、ようやく平和な学園生活が送れる。そう思ったのは、きっと僕だけではないはずだ。

 ユミリア様には、かつて、家族の命を救ってもらった恩がある。我がルナリオ家は、ユミリア様のアルテナ家と遠い親戚関係にあるらしい。何代か前のルナリオ家の女性がアルテナ家へ嫁いだとのことで、現在に至るまで、関係も良好だ。そして、どうやら、僕の姉、リリアナ・ル・ルナリオは、ユミリア様のお友達になっていたらしく、その日の予定も、ユミリア様には伝わっていたらしい。
 家族揃っての、ちょっとした観光。もちろん、視察という名目はあったものの、僕やリリアナ姉さんにとって、それは観光でしかなかった。そして、その時に、僕達は襲撃を受けた。彼らは、一様に黒目や黒髪を持つ集団で、とにかく僕達を殺そうとしていた。ただ、その時、リリアナ姉さんがユミリア様の名前を叫んだのだ。すると……。


「みゅ? 呼んだ?」


 当時、五歳のユミリア様が、突如として、襲撃を受ける馬車の中に現れたのだった。そして、そこからは、父上の制止も聞かず、サクッと賊を戦闘不能に追い込み、真っ黒な魔法で縛り上げるユミリア様の姿を目にすることとなった。


(か、格好いい……)


 黒という存在に恐怖を抱きかけていた僕は、ユミリア様のその姿によって、恐怖を抱くことなく、彼女を尊敬するようになっていく。しかも、当時はまだ分かっていなかったが、僕には、魔力を見る力があり……ユミリア様は、様々な光のオーラで、輝いて見えた。それこそ、神様だと言われても信じてしまうくらいに。
 後に、襲撃者達は、元々貴族として生まれ、捨てられた者達の集まりだったことが判明し、彼ら自身が断罪されるのはもちろんのこと、彼らを捨てた家にも断罪が待っていた。その辺りの詳しいことは、父上が教えてくれることはなかったものの、貴族年鑑を見れば、その時期に名前がなくなった貴族がいることから、爵位を剥奪されたのだろうと理解した。
 あのまま、ユミリア様が来てくれなければ、僕達は皆、死んでいたかもしれない。だから、僕は、その恩を返すべく、学年が違うという状況でも、よく、ユミリア様を観察する癖がついていた。


(おかしい……)


 そして、きっと、そのことに気づいたのは、僕だけだった。


(ロード殿下と居るユミリア様は、なぜ、怯えているんだろう……?)


 記憶にある限り、ロード殿下とユミリア様の関係は良好だ。少しばかり愛情が行き過ぎたイルト殿下も、三人で居る時は大人しい。そんな、仲の良い関係のはずなのに、ユミリア様は、いつも、どこかロード様に怯えているように見えた。


(本人に聞く……いや、ユミリア様の側には、いつだってロード様が居る。そうなれば、聞き出せない、か……)


 ユミリア様の様子がおかしいと気づいているのは、きっと僕だけ。イルト殿下は、どこか上の空だし、ミーシャ嬢とアルト殿下は、何やら二人でコソコソしている。ティトやハイルは、普段通りで、何も変わらない。


(そういえば……)

「魔力が、見えない……?」


 学園の廊下で、一人、ロード殿下の魔力が見えないことに気づいた僕は、直後、激しい頭痛に蹲った。
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