悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第三章 少女期 女神編

第三百三十六話 本

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 とっても真っ白になった地面に、さらに色素落としながらも、どうにか形が分かる状態の影。途中から悲鳴すら聞こえなくなったところに水で洗い流せば、ユラユラとその流れとともに薄っぺらな状態で流れそうになる。今は、それをメリーが捕まえて、表に返して……デッキブラシの先端を突きつけているところだった。


「さぁ、お嬢様のために、情報を提供してください」


 漂白した地面より、汚れた地面の方が形をはっきり認識できる状態の影は、メリーの脅しにピクリとも反応しない。


「……なぁ、もしかして、本当に死んだんじゃねぇのか?」

「デッキブラシごときで死ぬなど、そんなに軟弱な存在だったとは思えませんが?」

「いや、その前に、ユミリア様からかなりの攻撃を受けてたし、トドメになったんじゃ……」


 デッキブラシで擦られたことが死因。そう思うと、少しばかり哀れな気もするが、情報がないのは困る。


「みゅ?」


 と、そこで、私はあるものを見つけた。


「ユミリア様?」


 祭壇の上。蓋がされていた箱のその上に、ひときわ存在感を放つ黒い物体があり……見間違いでなければ、それは、本のように見えた。
 ローランの呼びかけを無視して、それの前まで来てしまえば、やはり、それが本だということが分かる。随分と分厚い、革張りの本だ。タイトルは……。


「『反逆者の歴史』?」


 いつ、ここに本が置かれたのかは不明だが、もしかしたら、知りたいことが書いてあるかもしれないと手を伸ばす。


「っ」


 本に触れる直前、その本はひとりでに開き、パラパラとページが捲れていく。そして、ほとんど終わりの部分で静止する。


「『反逆者の魂、侵食について』……これはっ」

「「あっ」」


 今、知りたい情報が書かれてそうな見出しを見つけ、すぐにその先の内容を読み込もうとしたところで、ローランとメリーの声が響く。


「申し訳ございません。お嬢様。どうやら、影に逃げられました」

「悪い。俺も見てはいたんだが、一瞬で、地面に消えやがった」


 振り向いた先で、申し訳なさそうにするメリーとローラン。しかし……。


「いや、多分、大丈夫。手がかりは見つけたから」


 ちらっと見た限り、反逆者とやらの侵食は、魔法で行うもので間違いない。そして、その理論が書かれているようだということも分かったため、これさえ解き明かしてしまえば、セイと鋼を助ける手がかりになるはずだった。
 この本がなぜここにあるのかということに関しては、今は考えないことにする。不思議そうにするメリーとローランをよそに、私は、改めて本と向き合った。
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