悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第三章 少女期 女神編

第三百三十八話 騎士団長(イルト視点)

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 ユミリアには、不甲斐ないところばかり見せて、危険に晒してばかりの僕は、ユミリアの婚約者に相応しくない。そう思う気持ちを拭えたわけではないものの、少なくとも、妙なものへ力を求めることだけは止めようと誓った僕は、クリスタルロードの入り口で、騎士団長とともに待機していた。


「イルト殿下。意思は変わりませぬか?」

「僕は、ここに居る」

「……さようですか」


 ユミリアからの連絡で、このクリスタルロードの最深部に何かが起こっていることは理解できた。そして、もしかしたら、そこで封じられていたモノがここから出てくるかもしれないということも。


「私としては、殿下をここに置いておきたくはないのですがねぇ?」


 このリーリス国で最強とされた騎士団長。アグニス・ドルクは、右目に縦の傷跡を持つ、赤髪の男だ。年は、現在四十を超えたところで、後継者教育に熱心だ。


「師匠。僕は、ユミリアの頼みを断るなんてあり得ませんし、常に、ユミリアの側に居たいのですよ」

「いや、私はですな? 殿下がここで暴れて、この場所が崩壊しないかの方が心配でして……いや、殿下? その当然だという目はやめてもらえませんか? ここ、壊したら、私が怒られるんですよっ!?」


 ユミリアを守るためにと、騎士団長に師事を仰いだのは何年も前のこと。今では、魔法なしの剣術、体術勝負でギリギリ勝てる状態にまでなり、魔法もありとなれば、圧勝できる。


「師匠は、僕の師匠だから、弟子の不始末に頭を下げるのは当然でしょう?」

「待て、それ、絶対違いますからな!? あぁっ、過去の私っ、なぜっ、こんな捻くれた殿下を弟子にしようと思ってしまったんだっ!!」

「ちなみに、もし、弟子にしてもらえなかった場合、師匠の弟子を一人ずつ、着実に、倒して認めてもらう予定でした」

「よくやった! 私!! 未来ある若者を守りきったぞっ!!」


 涙目で、どこか遠くを見ながら自分に言い聞かせている騎士団長の姿に、僕はどうせなら、ユミリアの涙目の方を見たいと考える。


「ご安心を。僕に何かあったり、僕が何かをしても、責任を問われるのは師匠だけです。騎士として、部下を守れるのは嬉しいことでしょう?」

「ぐおぉぉおっ!! なぜっ、なぜっ、私はあの時、騎士団長という役職に就いていたんだっ!!」

「それは当然、強かったからでしょう?」

「ぐうっ! 強さを褒められることは何度もあったが、こんなにも絶望を受けるのは、殿下の言葉だからか……」


 打ちひしがれるアグニス。しかし、そんな姿を晒してもなお、隙などない。


「そもそも、アルテナ家のご令嬢には軽くあしらわれるわ、使用人の三人にも勝てないわ、ペットにも勝てないわ……私が騎士団長など、何かの間違いだったんです」

「ユミリアに手を出したの? ふぅん? 師匠、覚えていてくださいね?」

「ひっ!」


 虚ろな目で、聞き捨てならないことを告げたアグニスに、釘を刺した僕は、そこで、すぐに切り替える。


「ユミリアの読みは、当たったみたいだ」


 その場には、いくつかの気配が、集まりつつあった。
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